《発展途上の異世界に、銃を持って行ったら。》3話

『イツキさんと結婚したく思います』

その一言で、會議室の中が一瞬で靜まり返った。

「ふむ……何故そう思ったのか聞いてもいいか?」

「イツキさんは、私の眼を見ても『醜い』とも『不気味』とも言いませんでした……そんな人、今まで會ったことがありません」

……いや、普通に『魔眼』はかっこいいだろ。

「それに先ほど、勇敢にもドラゴンと戦い、見事撃退して見せました……優しさと強さを兼ね備えたお方です」

「うむ……そうだな」

「シャルが言うのなら、反対はしないわ」

「いや待てや」

何で俺の意見を聞かずに話を進めてんだよ。

「どうした?何か不都合でもあったか?」

「不都合しかないですよ、何で俺の意見を聞かないんですか」

「い、イツキさんは、私のことが嫌いですか?」

「いや、嫌いじゃねえけど、俺が言いたいのはそこじゃねえんだよ。何で出會って數時間で結婚って話になるの?早すぎだろ?」

そもそも俺が結婚できる年齢じゃないし。

「そうですか……私は今すぐにでも結婚したいのですが、仕方ありません」

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……はあ、これでどうにか―――

「それでは、日を置いて結婚の話をしましょうか!」

「だから何故そうなる」

早く宿を探したいのに。

「うむ……1週間後だな」

「何がですか?」

「1週間後、『獣國』へ行くときにこの話の続きをしよう……それでいいだろう?」

……1週間後か。

「……了解しました」

「……わかりました、1週間以にイツキさんを納得させる答えを探せばいいのですね!」

そう言って張り切るシャルに苦笑を向け、會議室の扉に手をかける。

「それでは……また1週間後に會いましょう」

「うむ、気を付けてな」

――――――――――――――――――――――――――――――

「さて……どこを探したものか」

城下町のようなところに來たのはいいが、宿がどこにあるのかさっぱりわからない。

というか、文字が読めない。

「……ねえ、あの子」

「どこから來たんだろうな。あんな服裝、見たことないぞ」

「異國の者かしら……」

うっ……さすがに制服は目立つな。

「どっかに服屋でも―――」

「おら、ちょっとこっち來いよ」

「い、嫌!放して!」

何やら騒な聲が聞こえた。

チラッと見ると、路地裏にの子が連れていかれそうになっている。

「……厄介事には関わりたくないな」

周りの住民も同じ気持ちなのか、誰もの子を助けようとしない―――

「―――た、助けて!」

―――何で俺の方を見て、助けを求めるんだよ。

「はあ……しょうがねえなあ」

薄暗い路地裏に、ゆっくりと歩を進める。

「おい」

「……あ?何か用か?」

男3人が、の子を囲むようにして立っていた。

「……その子、離せよ」

「は?何でお前にそんなことを言われなきゃならねえんだよ?」

そりゃそうだわ。

「……嫌がってるだろ?だから離せって言ってんだわかんねえのか三下」

「……今のは喧嘩の意思表示と見ていいんだな?」

ヘラヘラとしていた笑みが消え、男たちが俺を取り囲む。

……勝てる、よな?ヘルアーシャは俺の『能力を底上げ』してくれてるんだし。

「―――くたばれやぁあ!」

1人の男が、俺の顔面に拳を―――

「ぅお、らあ!」

「ぶふっ!」

―――その一撃を避け、男の顎にアッパーをれる。

……いける、いけるぞ!

こんなチンピラのきなら、止まって見える!

「―――しっ!」

「ぁぶっ!」

「だらあ!」

「う、ぐぉぉぉ……!」

2人目の男の頭を蹴り、倒れたところを狙って腹を蹴る。

「な、何だよお前……何者だよ……!」

「俺か?……そうだな、ついさっきドラゴンを撃退した者だ」

「……は?」

噓はついていない。

「……んなこと、あり得るわけねえ……ただ喧嘩が強いだけのガキだろうが!」

まあドラゴンを撃退したって言っても、信じるわけないですよねー。

「信じなくてもいいけど……もう容赦はしねえから」

「あ?何を言って―――」

『魔導銃』を抜き、男の足元の地面に銃弾を放つ。

「―――えっ?」

「……てめえの頭も風だらけにしてやろか?」

「ひっ、わ、悪かった。悪かったから、許してくれえー!」

男は仲間を助けることなく、1人路地裏を走り去って行った。

「……こんなもんか……おい、怪我はないか?」

「え、ええ……おかげさまで助かったわ」

……俺と同い年くらいだろうか、短い薄紫の髪のが特徴的な可の子だ。

「そうか……これからは気を付けろよ?俺が助けに來れるとも限らないしな……それじゃ」

の子にそう言い殘し、路地裏を―――

「ね、ねえ、何かお禮をさせてくれない?」

「お禮……?別に気にしなくても―――」

―――あ、そうだ。

「―――んじゃ、ここら辺に宿ってあるか?」

「宿……?それなら、私の泊まってる宿が近くにあるけど、そこでもいい?」

「ああ、助かる……あ…」

俺は今さらの子の名前がわからないことに気づく。

「えっと……あんた、名前は?」

「ふふ、私は『ランゼ』よ」

「ランゼか……俺は百鬼 樹だ、よろしくな」

「なきりいつき……よろしくね」

「いや、百鬼が名字で樹が名前だ」

俺の言葉を聞いたランゼが、首を傾げる。

……あ、そういやこの世界に名字ってないっぽかったな。

「……それじゃ、イツキって呼んでくれ」

「わかったわ、よろしくねイツキ!」

そう言ってランゼが笑みを向けてくる。

……シャルといいランゼといい、この世界のの子ってレベル高いな!

――――――――――――――――――――――――――――――

「へえ、魔法とかあるんだな」

「ええ……というか、知らないの?知っていて當然の知識よ?」

「そ、そうなのか」

知るわけないじゃん!俺、今日この世界に來たんだよ?!

「……その魔法ってのは、どのぐらい種類があるんだ?」

「そうね……魔法は10種類あるわ」

……多くね?

「『炎魔法』『水魔法』『雷魔法』『風魔法』『土魔法』『闇魔法』『回復魔法』……この7つが『基本魔法』ね」

「『闇魔法』はあるのに『魔法』はないのか?」

「ちゃんとあるわよ……『魔法』『破滅魔法』『古代魔法』、この3つは使えるだけで『能力持ち』と同じくらい珍しいとも言われる『特殊魔法』ね」

スッゲー騒な名前が聞こえたんだけど?『破滅魔法』に『古代魔法』だって?てか『能力持ち』って何?

「10種類か……ランゼは何か魔法が使えるのか?」

「ええ……『破滅魔法』が使えるわ」

「マジかよ」

『破滅魔法』って使える人がいないとも言われてるんじゃ……そんな魔法が使えるなんて、ランゼって案外スゴいのか?

「でも……『破滅魔法』は消費魔力が激しくってね……1日1発が限界なのよ」

「1日1発って」

燃費悪すぎだろ。

「……ん、著いたわよ」

「おっと、意外に近いんだな」

住宅街らしきものが建ち並ぶ中、一際大きな建が建っている。

「―――あら、ランゼちゃんおかえり」

「『ヘルエスタ』さん!ただいま!」

玄関を開けた先に、エプロンを巻いた將さんが座っていた。

「……そっちの人は?」

「この人はイツキ、宿を探してるって聞いたから連れてきたの!」

「なるほどね……私は『ヘルエスタ』、この店の將よ」

「俺はイツキ……よろしくお願いします」

じろじろと俺を眺めるヘルエスタさん。

「……へえ、禮儀正しいし良い男じゃない。ランゼちゃん、なかなか良い男を捕まえたわね」

「そっ、そんなんじゃないわよ!」

顔を真っ赤にしてランゼが反論する、可いな。

「それで、イツキ君は何日泊まる予定なんだい?」

「そうですね……とりあえず1週間泊まりたいんですけど」

「1週間ね……銀貨14枚だよ」

銀貨14枚……高いのか安いのか、まったくわからん。

「それじゃあ聖金貨からお願いします」

「あいよ、じゃあ金貨9枚と銀貨1枚のお返しだね」

計算早いな。

「それじゃあ付いてきてくれるかい?イツキ君の部屋を案するよ」

「あ、わかりました」

宿の階段を上り、部屋の鍵をけ取る。

「この部屋だよ、あとごはんの時間になったら呼びに來るからね」

「え?ごはんまで用意してくれるんですか?」

「そりゃそうだよ?」

ごはん付きで1週間銀貨14枚って……もしかして、かなり安いんじゃないのか?

「それじゃあごゆっくり」

ゆっくりと扉が閉められ、ヘルエスタさんが部屋を後にする。

「……よし、服屋を探そう」

部屋にって即行で外に出た。

――――――――――――――――――――――――――――――

「……何で付いてくるんだ?」

「暇だったからよ」

商店街の様なところをランゼと2人で歩く。

「それに、イツキって字が読めないって言ってたじゃない」

「……まあそうだけど」

「だから付いてきてるの」

……正直、ありがたい。

「あ、ほら、あそこよ!」

「ん……店名は何て言うんだ?」

「『旅人の服屋』よ!イツキは冒険者でしょ?だったら冒険服の専門店に來た方が良いと思って!」

隣を歩くランゼがそんなことを―――

「いや、俺冒険者じゃないぞ?」

「え?で、でも、晝間はあの男たちに―――」

「あれは別に関係ないだろ」

「何だ……あんなに強いからてっきり冒険者だと思ってたのに」

し殘念そうに、ランゼがため息を吐く。

「……何でそんなに殘念そうな顔をするんだよ」

「いや、その……冒険仲間ができて、嬉しいなーって思ってたの」

「……?冒険仲間はいないのか?」

「う、うん……私って『破滅魔法』しか使えないからさ……友達がなくって」

あー、確かに1日1発しか魔法が使えないやつなんて、足手まといにしかならないだろうな。

「……はあ、別に冒険服でもいいけど」

「ほ、ほんと?!一緒に冒険してくれるの?!」

「そこまでは言ってねえ」

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