《発展途上の異世界に、銃を持って行ったら。》14話

「さてさて……そろそろ行きますか」

屋敷の玄関を開け、日差しに目を細める。

「……んで、お前らは付いてくるのか?」

「當たり前でしょ?お留守番なんてしてられないわよ!」

「僕も僕も!」

ため息を吐き、外を歩き始める。

「護衛など、最強の我にピッタリじゃないか!」

そう……今日はいよいよ『獣國』へ向かう。

「……そういや、グローリアスさんの所に行く前に、行きたいところがあるんだけど」

「別に構いませんが……どこです?」

「この前の武店だ」

俺が注文した道は、完してるだろうか?

「それじゃあ、早く行きましょ!」

「ああ、そうだな」

――――――――――――――――――――――――――――――

「らっしゃい……おお、この前の」

「うす……出來た?」

「ああ……なかなか難しかったがな」

そう言って、店主が手渡してきたのは―――

「おおっ、それっぽいな!」

「……苦労したんだぜ?」

―――念願の、レッグホルスターだ。

「すいませんね、難しいのを頼んで……約束通り、代金の金貨2枚」

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「この仕事で金貨2枚も貰えるなら、いくらでもしてやるぜ?」

「いや、さすがに1つでいい」

早速、右足に裝著してみる。

「おお、おお!すげえかっけー!」

「い、イツキ!我にも我にも!」

「しゃあねえな……ほれ」

ウィズにレッグホルスターを手渡し、嬉々として裝著し始める。

「おお……!これは良い!かっこいい!」

「だろ?やっぱこうじゃねえとな!」

元の世界では、銃を持つことすらダメだったからな……こういうのは、異世界ならではだ。

「……でも、これをどうやって使うのだ?」

「ちょい貸してみ」

「うむ」

レッグホルスターを付け、懐から『魔導銃』を取り出す。

「ここに『魔導銃』をれるんだ」

「おお……!」

……なんだ、完璧じゃないか!

「よし……!気合いもったし、グローリアスさんのとこに行くか!」

「イツキって、ほんと単純よね……」

そんなランゼの呟きは、俺の耳にまで屆かなかった。

――――――――――――――――――――――――――――――

「『獣國』を治める者の名前は『獣王 ライガー・エル・ヴォルガノン』……格は溫厚で腰がらかい……彼ならば、同盟を結んでくれるはずだ」

「同盟……って、どういうことです?」

「最近、『ゾディアック』のきが多く見られるからな……萬が一に備え、同盟を結んでおこうと思っているのだ」

揺れる馬車の中、グローリアスさんが書類に目を通しながら続ける。

「『獣王』の住む國は『タイゴン』……もっとも、そこまで大きな國ではないがな」

「そうなんですね……」

……『獣國』に住んでいるのは『獣人』だったな。

「『獣人』……どんな姿してんだろうな」

しだけ期待しながら、『獣國』へと向かった。

――――――――――――――――――――――――――――――

「うむ……著いたぞ」

「結構遠いんですね」

日も傾き、時刻は夕方であることがわかる。

「ふむ……それでは、『獣王』の住む王宮へ行くとしよう」

町の中を馬車で走る。

「うわあ……!スゴいね!」

「そうですね!イツキさんも―――イツキさん?」

「……………」

馬車の外に見える景……思わず見ってしまった。

「―――ケモ耳パラダイスじゃねえか!」

これが夢にまで見た『獣人』!すげえ、ほんとに耳が生えてやがる!

「マジかよやべえな『獣國』!テンション上がってきたぜ!」

「……イツキのテンションが上がる基準が、まったく理解できないんだけど」

やれやれと言わんばかりに、ランゼがため息を吐く。

「何言ってんだ!ケモ耳っ子は男が1度は見たい人種だろうが!」

「何を熱くなってんのよ!」

「これを見て熱くなれずにいられるか!」

「イツキがここまで熱くなるって、珍しいね」

俺を見るストレアがクスクスと笑う。

「聲かけたらダメかな?」

「ダメに決まってるでしょ!」

「で、でもさ……」

「ならば、イツキだけ降りたらどうだ?」

ウィズ、それは酷くないか?

「うむ……そんなに『獣人』を見たいのであれば、『獣王』を見たらどうだ?」

「嫌ですよ、男のケモ耳なんて見て、何が楽しいんですか」

野郎のケモ耳って、誰得?

――――――――――――――――――――――――――――――

「さて……ここからは徒歩で行くぞ」

「あ、わかりました」

グローリアスさんに続いて馬車を降りる。

「あれ……もう王宮の目の前なんですね」

「うむ、さすがに王宮の中を馬車で行くわけにはいかないからな」

そりゃそうだろ、この人は何を言ってるんだ?

「この部屋だ……準備はできているか?」

「……うっす」

一際豪華な扉……グローリアスさんがその扉を開けて―――

「久しぶりだね、『人王 グローリアス・ゼナ・アポワード』……今日は何の用だい?」

―――白く、逆立つ髪のが特徴的な、『獣王』が座っていた。

でも、俺の意識は『獣王』ではなく―――

「……………」

「こら『アクセル』、客人にその態度はないだろう?」

「……チッ」

―――『獣王』の橫に立つ、『獣人』に釘付けになっていた。

「……イツキ?」

「ランゼたちは……何もじないのか?」

「え?別に何も……」

あの『獣人』から放たれる気配……鬼気、殺気、敵意、殺意……不穏な空気を放っていた。

「『獣王 ライガー・エル・ヴォルガノン』……貴國と同盟を結びたく思ってな」

そう言いながら、グローリアスさんが『獣王』へと近づき―――

「―――止まれや『人王』……話はそこで聞くからよぉ」

一跳躍―――瞬く間に『獣人』がグローリアスさんとの距離を詰め、その元に鋭い爪を突き付け―――

「てめえこそくんじゃねえ……頭に風空きたくなかったらな」

―――唯一、アクセルを警戒していた俺だけが、そのきに反応できた。

『魔導銃』を頭に突き付け、アクセルを睨み付ける。

……いや、なに出しゃばってんだよ俺!そんなキャラじゃないだろ?!

「……んだこら……『人族』ごときが、俺に喧嘩売ってんのかぁ?」

「うるせえよ……両手を上げて、グローリアスさんから離れろ」

「アクセル……勝手に行するんじゃない」

「チッ……命拾いしやがったなぁ、人間」

アクセルが『獣王』の隣に立つ。

「……グローリアス、こっちへ來てくれるかい?ここだと、護衛のアクセルがピリピリしててね」

「うむ……わかった」

おいおい……わかったって、グローリアスさん警戒心なさすぎだろ。

「イツキ君……私が『獣王』と話してる間、この國を観してくるといい」

「え、でも……」

「私なら大丈夫だ」

いや、大丈夫って言っても……

「イツキさん、お父様を信じましょう」

「だけどよ……」

「大丈夫です!お父様は一応『大魔導士』ですから!」

「一応、か……シャル」

「あ、す、すいませんお父様!」

……大魔導士ってなんだ?

――――――――――――――――――――――――――――――

「はー……かったりいな」

ベンチに座り、水を飲む。

「早く!早く行こうよ!」

「お前は何でそんなに元気なんだよ」

ストレアって旅行が好きなのかな。

「まあゆっくりしようぜ?的にはグローリアスさんが『獣王』との話が終わるくらいまで」

「もー!それじゃあ『人國』に帰っちゃうでしょ!」

おう、俺は早く帰りてえんだよ。

「……大魔導士ってなんだ?」

「大魔導士……『魔導連盟』に認められた者だけが得ることができる稱號です」

「『魔導連盟』って?」

「各國に1人ずついる、魔法のエキスパートです」

魔法のエキスパート……え?そんなやつらがいるんなら、『ゾディアック』も簡単に倒せるんじゃねえのか?

「なあ、その『魔導連盟』の人たちって強いのか?」

「いえ、『魔力』が多いだけの老人の集まりです」

シャルって口悪いな!さっきも『一応大魔導士ですから!』って言ってたし!

「ねえ早く!」

「あいあい……」

はしゃぐストレアに引っ張られるようになりながら、再び町の中を歩き始める。

「……そういや、ストレアの魔法適って何だ?」

「僕?僕は『土魔法』だよ!」

「『土魔法』……なんか地味だな」

「そんなことないよ!『土魔法』は他の魔法と違って、留まる魔法なんだから!」

留まる……魔法?

「どういう意味なんだ?その、留まる魔法って」

「『炎魔法』や『雷魔法』、その他の魔法は使ったらすぐに消えちゃう……けど、『土魔法』は違うんだ」

「……わけわかんね」

「うーん……シャルは『雷魔法』が使えたよね?」

「はい!」

いや待て、初耳なんだが。

「適當に魔法を使ってもらえるかな?」

「わかりました―――『ライトニング』!」

響く轟音、シャルの手から白雷が、上空に向かって放たれた。

「これが『雷魔法』……今のを、よく覚えておいてね」

「……ああ」

「それじゃ―――『アースウォール』」

突如、地面が盛り上がり、壁となった。

「おお……で?」

「よく見て……崩れないでしょ?」

「そうだけど……それがどうし―――」

そこまで言って、ふと気づく。

普通の魔法は形を留めておくことができない、しかし『土魔法』は形を留めておくことができる。

つまり、簡単な足場や障害など、戦いを有利に進めることもできる……ってことなのか?

「確かにスゴいけど……やっぱり地味だな」

「そ、そんなあ……」

……ストレアの『土魔法』より、シャルの『雷魔法』に驚いたんだが。

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