《発展途上の異世界に、銃を持って行ったら。》25話
「……どうだ?面白くねえだろ?」
一通り話終え、俺はふと気づいた。
……中學校とか高校とか、この世界にないじゃん!やべえ!やらかしたか?!
「……ふ」
「……ふ?」
「ふ、ふぇえ……!」
はっ?……こいつ泣いてんの?!
「ちょ、ちょっとウィズさん?!今の話に泣くとこあったか?!」
「だって、イツキ、ずっと、大変で……!」
いや、ガチ泣きやんけ。
「大変だったんだな……!頑張ったんだな……!スゴいぞイツキ……我だったら絶対に堪えきれない……!」
「……………」
嬉しいけど……なんか恥ずかしいな。
「ったく……泣くなよ」
「だって、イツキ……一人で……!」
月明かりに照らされるウィズが起き上がり、俺の手を握ってくる。
「我は……我は絶対、イツキの味方だぞ!ずっと側そばにいてやるからな!」
「なにそれ告白?」
「……ちっ、違う!あくまで、仲間としてだな……!」
いやさすがにわかってるけど、そこまで否定されるとなんか悲しい。
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「……そういや、ウィズは『ベニアルマ』の孤児院で育ったんだよな?」
「うむ、そうだ」
「その……孤児院には友達とか居なかったのか?」
ウィズは……何というか、あのドラゴンを討伐した日から屋敷うちに住むようになった。
……1つ、ずっと気になっていたのは、孤児院に一言も言わなくてよかったのか、ということだ。
もしかしたら、ウィズがいなくなって、大騒ぎになっている可能も無くはない。
「友人……ふっ、孤高の最強魔法使いを目指す我に、友人など必要ない」
「……友達、いなかったんだな」
「ちっ、違うわ!最強過ぎる我を、孤児院のみんなが許容できなかっただけだ!」
……まあこんな痛い娘が近くにいたら、ちょっと距離置くよな。
「……とりあえず、早く寢ようぜ?明日はグローリアスさんたちを探さねえといけねえからな」
「……うむ、そうだな」
……中學校とか高校とかには気づいてないみたいだな。
――――――――――――――――――――――――――――――
「……どこに行っていたの?」
「ストレアが見當たらなくて……遅くなりそうだったから、ウィズと一緒に宿に泊まって……」
「一緒にぃ……ですかぁ?」
「シャル、落ち著いてくれ頼む」
シャルがすげえ危ない視線を向けてくるんだけど!
「まったく……迷子になるなんて、イツキも子どもだね!」
「おいふざけんなよ?今回は100%パーお前のせいだからな?」
ストレアは、ランゼたちが見つけてくれたらしい。
「しかし……合流できて何よりだ」
「馬車を停めてる所にいるかなー、って思って」
馬車を停めてる場所を覚えててよかった。
「……それでは『竜王』の所へ向かおうか」
グローリアスさんに続き、馬車に乗り込む。
「ねえアクセルちゃん」
「んっだよぉ、そのアクセルちゃんってぇ?」
「え?名前に『ちゃん』を付けてるんだけど……」
「そんなこたぁわかってんだよ!俺が聞きてぇのは何で『ちゃん』を付けたかってことなんだよぉ!」
「えぇ……だってランゼちゃんとかイッチャンとか言ってるのに、アクセルちゃんだけ『ちゃん』付けないのって変でしょ?」
……アクセルとサリスは、いつの間に仲良くなったのだろうか。
昨日俺がいない間に、何かあったのかな?
「なんかアクセルちゃんって呼びづらいから、『アルちゃん』って呼んでいい?」
「どっからどうなってそうなったんだよぉ?!」
『ア』クセ『ル』だろ。
「……この二人、なんかあったのか?」
「アクセルがサリスに用事があるって言って、夜中に二人で外に行ってたけど……」
おい、十中八九それじゃねえか。
「……何があったんだろ」
――――――――――――――――――――――――――――――
「イツキぃ、起きてっかぁ?」
「ん……起きてるけど」
馬車の中が、ずいぶんと靜かになった。
起きてるのは、俺とアクセル、それと書類に目を通しているグローリアスさん、3人だけだ。
「このぉ……サリスぅ、だっけかぁ?」
「……サリスがどうしたのか?」
「……こいつぅ、昨日ちょっと手合わせしたがぁ、相當強つえぇなぁ」
……え?手合わせ?
「あー……ランゼが言ってた、昨日の夜サリスに用事があるって言ってたのって……」
「おぉ、手合わせのことだなぁ」
でも……何で手合わせ?
「異世界から來たって言うからよぉ……どんなもんか気になってなぁ。んでよぉ、こいつの能力ぅ……『ソウルイーター』だったかぁ?」
「ああ、なんか『死神の力を使うことができる』能力とかなんとか言ってたな……」
「その死神の力ってやつぅ、イカれた強さだったぜぇ……こいつの魔法適の『風魔法』と相まって相當な強さだったなぁ」
アクセルがここまで言うって……サリスってそんなに強いのか。
「強つえぇしぃ……めっちゃかっこよかったぜぇ」
「……黒い翼が生えてるのは見たことあるけど」
「あぁ、黒い翼も生えてたなぁ……黒いローブ著てたしぃ、黒い鎌も持ってたなぁ」
「……?」
あれ?そんな姿だっけ?
「……ちょっと見てみたいな」
「『竜國』に著いたときにでもぉ、見させてもらいなぁ」
……正直、かなり興味がある。
――――――――――――――――――――――――――――――
「む……著いたようだな」
「著いたって……『竜國 ドラギオン』にですか?思ったより近いんですね」
「うむ、王宮も近くにあるからな……すぐに著くぞ」
グローリアスさんとライガーさんが馬車を降りていく。
「……行くか」
「わあ……ねえイツキ―――」
「お前は絶対俺の近くにいろ」
ストレアの腕を摑み、強制的に『竜國』の王宮へと向かう。
「……イツキ」
「なんだ?」
「わ……私も、手を繋ぎたいんだけど」
ランゼは何を言ってるのだろうか?
「いや、歩きにくくなるからダメだ」
「そういう問題っかよぉ」
「ねえ、どこにも行かないから大丈夫だよ?」
「お前は黙って付いてこい」
嫌がる素振りを見せはするものの、素直に付いてきてくれる。
……本気でストレアが抵抗したら、それこそ『フィスト』で強制連行するしかないし。
「いいかいアクセル?今から『竜王』と會う、おそらく『竜王』は僕のことが嫌いだから、嫌がらせをしてくるかもしれない」
「んなことあったらぁ、俺がそいつぶっ潰してやらぁ」
「いやダメだよ?何があっても大人しくしててって言いたいんだよ」
「……場合によるなぁ」
ライガーさん……大変そうだなぁ。
喧嘩っ早いアクセルは、確かに何するかわからないし、今のうちに釘を刺しといた方がいいのかもな。
「ライガー、何をしている?もう著いたぞ?」
「ああ、わかったよ……いいねアクセル、絶対だからね?」
「わーったわーったぁ……『獣王』様の頼みだぁ、『竜王』の前じゃぁ暴れねぇよぉ」
……もう著いたのか。
「イツキ君」
「なんです?」
「……王宮の中にったら、ライガーの側を離れないでほしい」
「……なんでです?」
「ライガーとバハムートは本當に仲が悪いのだ……もしかしたらバハムートがライガーに攻撃を仕掛けてくるかもしれない。それを止められるのは、イツキ君しかいないのだ」
いや、出會っていきなり攻撃してくるって、仲が悪いの域じゃねえよ。
「……わかりました」
「すまないな、いつも君を頼ってしまって」
申し訳なさそうにしながら、グローリアスさんが王宮へとっていく。
「……ねえ、僕いつまでイツキに腕を握られてればいいの?」
「……『竜王』に會うまでだ」
グローリアスさんの後に続き、王宮の中にる。
「うわー……スッゴいね」
「うむ……廊下に武を飾るとは、なかなか良いセンスだな」
サリスとウィズの聲が後ろから聞こえる。
王宮の廊下は、一面に武が飾られている。
しかも全ての武に手れが行き屆いている……『竜王』って武マニアなのかな?
「ふむ……この先か」
ああ、そういやグローリアスさんは前に『竜國』へ來たって言ってたな。だから迷うことなく『竜王』のいる場所に行けるのか。
「開けるぞ?準備はいいか?」
グローリアスさんの問いかけに頷く。
ゆっくりと扉を開け、その先に―――
「『竜王』様!今『人王』が『竜國 ドラギオン』に來ています!起きてください!」
「あ……ああ……あとでな」
「あとでではないです!おそらく『竜王』様に用事が―――あ」
―――なんか、見ちゃいけないのを見たような気がする。
「ふむ……相変わらず寢てばかりだな、『竜王 バハムート・ガルド・ドラゴニアス』」
「その聲……『人王』か?」
むくりとソファからを起こし、漆黒の翼を広げながらこちらに歩いてくる。
「なんだ、この前來たのにまた來たのか?」
「うむ、貴殿に頼みたいことがあって―――」
「ちょっと待て」
グローリアスさんの言葉を遮り、『竜王』がある一點を睨む。
「……なんで貴様がここにいるんだ?獣風ふぜいが」
「……………」
「シカトか?なんとか言ったらどうなんだ?」
「これは獨り言だけど……君と話す気はない、話ならグローリアスがしてくれる」
……うっわ、仲悪っ!
「なら貴様は黙って寢ていろ―――『ドラゴトランス』」
不機嫌な『竜王』―――その右腕が、一気に膨張する。
右腕が俺の長と同じくらいまで巨大化し、その表面を黒い鱗が覆う。
爪が鎌のように鋭くなり―――
「―――沈め」
―――その兵とも言える右腕を、ライガーさんに降り下ろしてきた。
「『フィ―――」
「『ビースト―――」
ダメだ、間に合わ―――
「ねえ」
―――その一撃を、何かがけ止めた。
「いきなり攻撃してくるなんて、酷すぎるんじゃない?」
「誰だ貴様……」
「僕はストレア……誇り高き『鬼族』の末裔だよ」
頭に管を浮かべるストレアが、『竜王』の一撃を片手でけ止めていた。
……いやすげえな?!強すぎだろ?!
「『鬼族』……さすがだな、我の一撃を止めるとは」
「単純な力だけなら、『竜族』より『鬼族』の方が強いしね」
「……『ドラゴトランス』解除」
『竜王』が右腕を引き、元の姿に戻す。
「それで……頼みとはなんだ、『人王』?」
ようやく話を聞く気になった『竜王』が、玉座に座った。
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