《発展途上の異世界に、銃を持って行ったら。》32話

「『エクス・ヒール』」

淡いが俺を包み込み―――右肩の痛みが引いて行く。

「ライガーさんありがとう」

「気にしないでくれ。誰だって痛いのは嫌だしね……それに、僕に出來るのは傷を癒すことくらいだから」

ニコリと微笑むライガーさん……でも、どこか寂しそうだ。

「ふん……適材適所、という言葉がある」

「……なに、いきなり」

「貴様の『回復魔法』……あれが無ければ、イツキは死んでた」

……ああ、シルフの初撃を『フィスト』でけきれなかったやつか。

あれは本気で死を覚悟したもんな。

「……だからなに?目の前で傷付いた人がいたら癒す。これは當然の事でしょ?」

「當たり前だ……だが、あの狀況でイツキを癒すことができたのは、貴様だけだ」

不機嫌そうに腕を組むバハムートさんが、素っ気なく言い放つ。

……なんだ、案外仲良いのかな―――

「……僕は誰だろうと癒す、それが僕に與えられた魔法で……僕に課せられた使命だ。例え癒す相手が……君であっても」

Advertisement

「……貴様に『回復魔法』を使われるなど、屈辱的すぎて死にたくなるな」

「ねえ、それは僕に対する挑発と思っていいのかな?」

「わからんのか?どう考えても挑発だろう?」

「……『ビースト―――」

「『ドラゴトラ―――」

「そこまでだ……まったく、隙あらば喧嘩しているな」

―――いや、やっぱり仲悪いわ。

「ねえイツキ!」

「嫌だ1人で行け。もしくはランゼとか連れてけ」

「まだ何も言ってないんだけど?!」

「どうせ観とか言うんだろ?知ってんだよ、いい加減お前の格もわかってきたし」

「くぅぅ……!」

先手を打たれたストレアが悔しそうに拳を握り締める。

「べ、別にいいもん!ランゼかウィズか―――あれ?2人は?」

ストレアの言葉に、辺りを見回す。

……シャル以外誰もいねえ!あいつら逃げやがったな!

「……俺は、絶対付いて行かないからな」

「え、ええぇ……」

一気に大人しくなったストレアが、殘念そうに歩き始める。

ただでさえ疲れてるのに、これ以上面倒はゴメンだ。

「い、イツキさん……」

「ん……なに?」

「……ありがとうございました」

「は?」

ペコリと頭を下げてくるシャル……いや、何事?

「なんかよくわからんけど、どしたの?」

「イツキさんが『森王子』の一撃で吹き飛ばされたとき……本気で、本気の本気で『森王子』の所に行こうかと考えました」

「……わけわからん」

「……あの力を見て、恐怖をじたんです」

俯うつむくシャル……よく見れば、腕が小さく震えていた。

「強すぎる力……あれを見て『これに従わないと殺される』って思って……でも、イツキさんがあの一撃を跳ね返して……それで―――」

「シャル」

震えを止めるように、シャルを抱き寄せる。

……めっちゃ恥ずかしいけど……シャルを落ち著かせるには、これしかないと思った。

「ぁ……え……?」

「……なんも言わなくて言い」

「イツキさん……イヅギ、ざん……!」

……良い香りがする。

それに、細くてらかい……ほんのし、力を込めたら折れてしまいそうなほどに。

「……私、私ぃ……!本當に、不安で……!イツキさんが、死んでしまうかもって……!それでも、イツキさんの事、諦めたくなくて……!でも、『森王子』はシルフと契約して、スゴく強くて……!それ、でもぉ……!」

「わかってる……大丈夫だ、わかってるよ」

シャルの目から涙が溢あふれ、俺の服を濡らす。

「……イツキ君」

「誤解しないでください。々あってこうなったんです」

「イツキさん……!イツキさん、私……!」

「……イツキ君、そういうのは人のいない所で―――」

「いや待ってください!違うんです!」

絶対あらぬ誤解をしてるだろ!

「私たちは先に宿へ行くから、落ち著いたら合流しよう」

「……はい」

グローリアスさんがライガーさん達と一緒にどこかへ歩き行く。

……よく見れば、グローリアスさんの後をストレアがトボトボ付いて行ってら。

―――――――――――――――――――――――――

「……す、すいません……取りしてしまって」

「んや……気にすんな」

どれくらい、シャルを抱き締めてただろうか。

的な時間はわからないが、かなりの時間抱き締めてたと思う。

「……大丈夫か?」

「はい……もう大丈夫です」

グズグズと鼻を鳴らし、満面の笑みを浮かべるシャル。

……大丈夫そうだな。

「……それじゃ、グローリアスさん達の所に行こうか」

「あ……あの……き、今日は、2人で宿に泊まりませんか?」

「……はっ?」

「だ、だから、その……お父様やランゼさん達がいる宿ではなくて……」

「嫌だ」

「……ウィズさんとは一緒に寢たのにぃ、私とは一緒に寢てくれないんですかぁ?」

危ない視線を向けてくるシャル……完全に、いつものシャルに戻ったみたいだな。

とはいえ、シャルのバカ発言に付き合うつもりはない。

「……バカ言ってないで、早く行くぞ」

「じゃあイツキさん……宿の場所、わかるんですか?」

「……………」

……ヤッバ……わからねえ。

「お前……まさかこうなることがわかってた訳じゃないよな?」

「えへへ……さあ、どうでしょうか?」

妖艶に笑い、腕に抱きついてくる。

……こいつにゃ敵わねえな。

「……宿、探すか」

「はい!」

とは言っても……俺は異世界語がわからないから、シャル頼みなんだが。

「……あ、イツキさん!あそこにしましょう!」

「……いや、あそこ……子どもがったらダメな所だろ」

「え?そうですか?」

「お前……わかってて言ってるだろ」

シャルの指差す建……ピンク、中から聴こえる変な聲……明らかに大人な宿だ。

「でも……この付近の宿は、あそこしかありませんよ?」

「……マジ?」

「はい」

……いや、噓だろ。

さすがにあんな大人な宿にるのは……俺の貞がシャルに奪われるイメージしか浮かばない。

「……本當に、あそこ以外の宿は近くにないんだな?」

「はい。それは本當です」

……まあいいや。正直、々疲れてるんだ。

『ギルド戦闘』、バハムートさんと喧嘩、『天秤座』討伐、『森王子』とシルフ……ここ最近、戦う事が多くてキツい。

「……帰ったら1週間はダラダラ過ごしてやる」

「イツキさん?」

「何もない。早く行こうぜ」

「はい!」

駆けて行くシャル……こいつ、寢込みを襲ってきたりしないよな?

「いらっしゃいませ、2名様ですね?」

「……はい」

「わかりました。金貨1枚と銀貨2枚になります」

代金を支払い、案人の後に続く。

……金貨1枚と銀貨2枚……けっこう高いな。

「こちらが部屋になります。どうぞごゆっくり」

「ありがとうございます」

ニコニコと笑うシャルの顔に、なぜか震いしてしまう。

……いやダメだわ。この宿、完全大人の宿だわ。

だって隣の部屋から聞こえたらイケナイような聲が聞こえるんだもん。

「イツキさん?中にらないんですか?」

「ああ……る」

……警戒を解くな。

いつどこでシャルに襲われるかわからない。

もちろん、力では負けないだろうが……この前使っていた『他國者尋問用拘束椅子』とかあるからなぁ、異世界。

「お風呂、どうしますか?」

「ん……先にっていいぞ」

「一緒にらないんですか?」

「バカ言うな。早くってこい」

し頬を膨らませたシャルが、小走りに風呂に向かう。

……室に風呂があるのか。宿って溫泉が基本かと思ってた。

いや……ホテルの部屋に風呂は付いてるし、宿に風呂が付いてるのも普通か。

「はー……あいつら、どこにいるんだろ」

朝起きたら、グローリアスさん達を探さないと。

……これからは、なるべく離れないように行しないといけないな。

それに、俺はまだ17歳なんだ……年の近いアクセルとか、異世界出のサリスと々話したいし……

「……そういや……俺とサリス以外に異世界人っているのか……?」

ヘルアーシャからも聞いてないし、グローリアスさんとかからも聞いたことはない。

でも……ランゼの話だと、今から3年前に『魔王』が現れたとか。

つまり、俺が召喚される前―――3年の間で、異世界人が召喚されている可能も……いや、ヘルアーシャが『勇者』の伝承を伝えたのは2年前だったな……だとしたら、2年の間で異世界人が召喚されている可能がある。

だって『ゾディアック』強いし……この世界のやつらじゃ……正直、太刀打ちできていない。

それを見かねたヘルアーシャが、俺の前に異世界人を召喚した……確率は高いと思う。

「……まあそれがわかった所で……別に意味はないんだけど」

……『ゾディアック』は『魚座』と『天秤座』以外は討ち取られていない。

もし異世界から召喚された人がいるとして……『ゾディアック』が今まで討ち取られていないとなるなら、召喚された人は……あんまり強くない事になる。

「―――イツキさーん!上がりましたー!」

「……ああ」

宿に置いてある服なのか、いつもの服ではないシャルが戻ってきた。

……やっぱりこの宿、そういうじなんだな。

だってシャルの著てる服……なんか、エロいもん。

「……うわ。男用もあんのか」

所に、男用の……エロい服がある。

……年齢確認とかしなくて良かったのか、この店。

「お……けっこう広いな」

一軒屋の風呂より……し大きいくらいの浴槽がある。

ちなみに、俺は風呂にる前にを洗う派だ。

「……これが、石鹸……?シャンプー……?」

相変わらず字が読めねえ……もう適當で良いか。

の容ったを掌に取り出し、を洗おうかと―――

「それはシャンプーですよ?石鹸はこっちです」

「ああ、すまんシャル。ありがと……う?!」

―――バッと振り返り、の子の姿を確認する。

そこにはシャルが……タオルを巻いた狀態で立っていた。

    人が読んでいる<発展途上の異世界に、銃を持って行ったら。>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください