《発展途上の異世界に、銃を持って行ったら。》34話

「はー……疲れた……」

ようやく我が家に帰ってこれた……もう旅とか冒険とかは懲こり懲ごりだ。

「……そうだ……シャル、サリス、確認したいことがあるんだけど、いいか?」

「確認したいこと?」

「はい!もちろんです!」

首を傾げるサリスと、元気に返事をするシャルを連れて自室に向かう。

「イツキさんの部屋……初めてりました」

「あー……確かにそうかもな。今までれた事なかったし」

シャルは何をするかわからないから、部屋にはれなかったんだよ。

「ね、確認したいことって?」

「ん……ああ」

確認したい事というのは―――

「……俺と、サリス以外に異世界人っているのか?」

―――これが聞きたかったのだ。

まあ、異世界人がいるなら大騒ぎになってるだろうから、多分いないだろうけど。

「いえ……聞いたことが無いです」

「そうか……サリスは?ヘルアーシャから何か聞いてないか?」

「ううん。うちはイッチャンの手伝いをしてくれってしか言われてないよ」

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……やっぱりいないのか?

「あ、でも……1つ、『勇者』ではないですけど、噂を聞いたことはあります」

「噂って……なんの?」

「半年前、『騎士國 ファフニール』に攻めてきた『ゾディアック』の『蠍座』を、単獨で瀕死寸前にまで追いやった『英雄』です」

おずおずと話すシャルが、気になることを口にする。

単獨で瀕死寸前にまで……めっちゃ強くないか?

「そいつは―――」

「死んでいます……『蠍座』に殺されたと聞いています」

「……名前はわかるか?」

「はい。私の記憶が正しければ……『ソラ』という名前でした」

「『英雄』……!いいねカッコいい!」

何故か『英雄』に反応するサリスを無視し、その『英雄』について思考を加速させる。

……単獨で『ゾディアック』と渡り合うって事は、相當強い。

ソラって……名前からして、多分―――

「俺と同じ……日本人……?」

―――まさか、日本人……なのか?

その可能は高い。『ゾディアック』と互角に戦える、そして日本人っぽい名前……十中八九、異世界人で日本人だろう。

「『騎士國 ファフニール』……『騎士國』か」

……『騎士國』って、どこ?

「……グローリアスさんに聞いてみるか」

まあ、気が向いたらだけど。

―――――――――――――――――――――――――

「あ、い……う、う……えお」

「正解です!大分読めるようになってきましたね!」

深夜、みんなが寢靜まったであろう時刻。

俺はシャルと異世界語の勉強をしていた。

「ではこれは?」

「しゃ、あ……る、あい、て……シャル、して―――おい」

「……むう」

むくれたシャルが、紙切れに別の文字を書き始める。

いや、何を言わせようとしてんだこいつ。

「でも……今日1日だけでかなり長しましたね」

「……すまん、本當に助かる」

「イツキさんのためなら、私は何だってしますよ!」

……何だって、か。

「……命を捨てるような事は、絶対にしないでくれよ」

「え?いきなりどうしたんですか?」

「あ、いや、何でもない……」

……ダメだ。この前見た夢が、脳裏に焼き付いて離れない。

「……すまんシャル。今日はここまででいいか?」

「……何かあったのですか?」

「んや……ちょっと前に怖い夢を見ただけだ」

「夢……ですか?」

……夢で怖がるとか、小學生かよ俺。

でも……あの夢は、本當にリアルだった。

シャルの顔とか、の臭いとか、腹部を毆られた時の衝撃とか―――

「う、ぶっ……」

「イツキさん?!」

「あ、ああ悪い……思い出したら気持ち悪くなってきた」

「……そんなに酷い夢を見たんですね」

背中をさすってくれる覚に、嘔吐し引く。

……けねえ。こんな小さい子に心配されるとか。

「……あんな事には、絶対にさせない」

背中をさすり続けるシャルに聞こえないように、俺は決意を固めた。

―――――――――――――――――――――――――

翌日の晝下がり……俺は平原に來ていた。

「―――『ビッグバン』ッ!」

平和な平原に、突如発音が轟く。

「うっはー……相変わらずスゴい威力だな」

「ふふん、そうでしょそうでしょ!もっと褒めて良いわよ」

「いや……お前がスゴいんじゃなくて『破滅魔法』がスゴいんだけど」

「……『破滅魔法』が褒められるのも嬉しいから、もっと褒めて良いわ」

んだよこいつ。自分の使える魔法を褒められて嬉しいってどういうこと?

「……今日も『破滅魔法』を無駄にした、と」

「無駄って何よ無駄って!イツキに『何かあったらいけないから、『破滅魔法』は使うな』って言われてたから、今まで撃つのを我慢してたのに!」

ランゼの『破滅魔法』は強力だ……それこそ、『ゾディアック』をぶっ飛ばすほどに。

でも……ランゼは気分で『破滅魔法』を撃つから、肝心な時に役に立たないって事がある。『乙座』の時とか。

「……1日1発しか使えないんだから、もっと大切にしろよな」

「大切にしてるわよ」

「じゃあお前、もし今『ゾディアック』が攻めてきたらどうするんだよ?『破滅魔法』使った後のお前は、ただの一般人なんだぞ?」

「ま、まあそうだけど……」

……しは自分の強さがわかっただろうか。

「……なあランゼ」

「ん、なに?」

「『騎士國』って、ここから遠いのか?」

「『騎士國 ファフニール』に行きたいんだったら……7時間くらい掛かるわね」

……7時間か……そんなに遠くはないな。

「『ゲムゾレア』へは9時間……『セシル』にも9時間くらいだし」

「……『ゲムゾレア』と『セシル』って?」

「『騎士國』の王……『騎士王』が治めている國の名前よ」

「って事は……『騎士王』は國を3つ治めているってことか」

地面のクレーターを眺めながら、『騎士國』に行く計畫を立てる。

……できる事なら、俺1人で行きたい。

他の奴等が付いてきても、足手まとい……と言うか、ストレアは確実に邪魔だ。

「……バレないように、こっそり行くか」

「聞こえてるわよ」

「……盜み聞きすんなよ」

背後に立つランゼ……こいつ、油斷も隙もあったもんじゃねえな。

「……ま、私は連れて行きなさいよね」

「いや何でだよ。足手まといは必要ねえぞ?」

「何言ってるのよ……私なら、どんな危険が迫ったって仕留める事ができるのよ?まあ1日1発が限界だけど」

いやいや、1日1発しか魔法が使えないやつなんて、足手まといにも程があるぞ。

つっても……聞かれたならしょうがねえか。

「……みんなで行くか」

「ええ!そうしましょ!」

笑うランゼを連れ、家に帰ることにした。

―――――――――――――――――――――――――

深夜、1人で異世界語の勉強をしてると―――部屋のドアがノックされた。

「……イツキ、起きてるか?」

「ウィズか?どうしたんだ?」

い寢巻き……ではなく、いつもの服を著たウィズが、枕を持って室ってくる。

「……その、だな……何て言うか……」

言い出しづらそうに、枕を強く抱き締める。

……まさかと思うが、こいつ―――

「寢れないのか?」

「…………うむ」

「怖い夢でも見たか?」

「……………………うむ」

―――マジかよこいつ。

いのは見た目だけにしとけよ。中までいのかよこの中二病が。

「なんで俺の部屋に來たんだよお前……サリスとかの所に行けよ」

「……イツキ以外はもう眠っていてな……眠たくなるまででいいから、一緒にいてもいいだろうか……?」

「……ん、別にいいぞ」

「すまない……」

ベッドに向かって歩くウィズが、機の上を見て首を傾げる。

「それ……文字か?」

「ああ、そうだけど……なんか問題があったか?」

「いや、その……イツキは文字がわからないのか?」

ウィズの言葉に、思わず返答が詰まる。

……そうだ、そうだよ。この歳で文字の勉強って、普通の人からしたらおかしい。

よっぽど小さい頃に學をけていないか、あるいは……最近まで別の文字を使っていた、か。

「何て言うか……その……そう、俺は昔から戦闘の訓練しかやってなくてさ」

「……なるほど。イツキが強いのはそれが原因なのか」

ベッドに腰掛け、合點がいったように頷くウィズ。

「……んし……俺はそろそろ寢ようかと思うけど、お前どうするんだ?」

「う、む……廊下が暗くて怖いのだが……」

いや……1人で寢るどころか廊下が怖いって。

「じゃ、ベッドで寢てろ。俺機に頭置いて寢るから」

「……別に一緒に寢ていいのではないか?」

「あのさ……シャルと言いお前と言い、あんまり年頃の男をうなよ?俺は本気で惚れたとしかそういう事しないって決めてるから襲わないけど……俺が獣けだものだったら間違いなく襲ってるぞ?」

こそ頭の痛い子だが、見た目だけで言えば……ウィズはかなりのだ。

この前ウィズと一緒に寢た時……マジで張したし。

「ふふっ……本気で惚れたとしかしない、か……本気で惚れたにも、手を出せそうにないのにな」

「おいこら、それはどういう意味だ?」

「なんだ、わからんのか?ヘタレだと言ってるんだ」

「お前……!今ここでお前の事襲ってやろうか?!」

「……そんな度もないのに、か?」

俺の心を見かしたような笑みを浮かべ、ウィズが布団に潛り込む。

「……早くるが良い……今の我は、人の溫もりがしくてたまらないのだ」

「なんでお前が上から言うんだよ……!」

ひょこりと顔を出すウィズ……いや、この狀況をシャルに見られたら、ナイフ持って追い掛けられそうなんだが。

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