《発展途上の異世界に、銃を持って行ったら。》48話

◇side イツキ・ウィズ・フォルテ

「おい」

「ん?なーに?」

「『山羊座』はどこにいる」

剣を構える『雙子座』……攻撃を警戒しつつ、気になっていた事を問いかけた。

「さぁ?奇襲するって言ってたけど、詳しくはよくわからないや」

「奇襲……奇襲か」

あの黒い霧の正……おそらく『山羊座』だろう。

相手を別の場所に転移させる『能力』か……なかなか厄介だな。

「ウィズ……『水鱗王』は任せた。一緒に逃げててくれ」

「うむ……その代わり、『雙子座』は任せるぞ?」

……ったく、反則だろ。

そんな信頼に満ちた視線で見られたら……無理なんて言えねぇじゃん。

「ああ……任せろ」

「うむ……おい『水鱗王』、逃げるぞ」

「え、えぇ、わかりましたわ」

……さて、と。

「……簡単に見逃すんだな?」

「まぁね……ここに來たのは僕だけじゃないし」

「僕だけじゃないって……『山羊座』の事か?」

「違うよ?僕と兄さんとカプリコーンと―――アリエルの4人で來たんだ」

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兄さんに……アリエル……?!

「……兄さんってのは、兄弟か?」

「うーん……能力で作られた兄弟、の方が正しいかな」

「作られた兄弟……?」

「ま、そんなことはどうでもいいよね」

剣の先を俺に向け、『雙子座』が口元を歪める。

「はぁ……めんどくせぇなぁ」

「ほら行くよ―――!」

距離を詰め、剣を振り上げる―――

「―――『クイック』ッ!」

「な……え?」

「……俺があいつらを逃がした理由、わかってるか?」

一瞬で『雙子座』の背後に回り込み―――その頭を摑んだ。

「……ここが危険だからじゃないの?」

「よくわかってんじゃん―――俺が本気出すと、ここら辺ぶっ壊れまくるからな」

「隨分……自分を過大評価するんだね?」

「過大評価かどうか……そのに教えてやるよ」

振り向き、俺の首目掛けて剣を振る。

を反らしてそれを避け―――

「『フィスト』ッ!」

『雙子座』の部を毆り―――拳がを貫通した。

それと同時、辺りに凄まじい風圧が巻き起こる……おそらく、俺の拳圧だろう。

「かっ……ぇ?」

「……こんなもんか」

口からを吐く『雙子座』が、不思議そうに俺を見る。

「今……何が……」

「毆っただけだ」

「あ、そう……」

フラリと揺れ……溜まりに倒れ込んだ。

……案外、大したことないな。

「ふ、ふふ……まぁいいや……これで兄さんは……元の力に戻るからね……」

「……何を言っている?」

「赤髪の獣人……銀髪の騎士……眼帯を付けた……紫の髪……みんな、兄さんに殺られるさ……」

ブツブツと呟く『雙子座』……その中に気になる言葉があった。

眼帯を付けた……まさか、シャル?

「おい、お前の兄さんってのはどこにいる?」

「さぁ……?せいぜい、頑張るんだね」

「おい!……ああクソッ!」

ぐったりとしてかなくなる『雙子座』……死んでいるのは明らかだ。

……ヤバイ……ヤバイヤバイヤバイ!

シャルが、シャルが……死ぬ……?

「……そんなの、絶対に許さない……!」

脳裏に焼き付いた夢……あんな悲劇は、起こさせない。

「―――『クイック』ッ!」

―――――――――――――――――――――――――

◇side ウィズ・フォルテ

「……ここまで來れば、安全だろう……!」

「そう、ですわね……」

避難する住民と共に、かなり遠くへ來た。

……イツキは、無事だろうか……?

負けるとは思わないが……それでも、心配になる。

「あの……お伺いしたい事があるのですが、よろしいでしょうか?」

「なんだ?」

「あなたは……先ほどの男の彼ですか?」

「……まぁ……そんなじだ」

『水鱗王』の質問に、顔が熱くなるのをじる。

「……彼は……ワタクシを飼ってくれるでしょうか?」

「飼ってくれるとか言うでない。せめて一緒に暮らすと言え」

「しかし―――」

「おーい!ウィズー!」

誰かに呼ばれた……振り向いた先に、1人の男が走ってくる様子が見えた。

「イツキ……?何で……?」

「なんでって……なにがだよ?」

「イツキはさっき……『雙子座』と……」

「……ああ、その事か。瞬殺だったっての」

ニコリと笑い、近づいてくる。

我はそんなイツキに手を向け―――

「『ヘルフレイム』ッ!」

「うおっ?!お前、何すんだよ?!」

「黙れ……貴様、誰だ?」

獄炎を避けるイツキ……本のように見えるが、1つ、明らかに違う所がある。

「誰だって……イツキに決まってんだろ?冗談にしては笑えねぇぞ?」

「ならば問おうか……刀はどこに置いてきたんだ?」

「は……?刀……?」

「『ヘルフレイム』ッ!」

即答できなかった時點で、本ではない。

迫る獄炎が、目の前の偽を焼き盡くさんと―――

「はぁ……なーんでみんな、簡単に見破るかなー……『レーヴァテイン』」

「んなっ―――?!」

真っ赤な炎が、獄炎を呑み込んだ。

炎は……偽イツキの手から出ている。

「……正を現したな」

「はー……ほんと落ち込むんだよ?自慢の変を見破られるのってさ」

暴に頭を掻き―――偽の眼に狂気が宿る。

「……あなたは、何者ですの?」

「私は『ゾディアック』、『牡牛座』のアリエルさ」

「『牡牛座』ですって……?!」

こいつが『牡牛座』……イツキが言っていた、姿を変えられる能力を持つ『ゾディアック』か……

「えっと……そっちが『水鱗王』だね。あなただけは確実に殺すように言われてるから―――殺すね。『レーヴァテイン』」

「チッ―――『ヘルフレイム』ッ!」

全てを焼き盡くす獄炎と、燃え盛る真っ赤な炎がぶつかり合い―――獄炎が一瞬で呑み込まれた。

呑み込むだけでは終わらない……勢いを殺すことなく、炎が迫り―――

「『ウォーターベール』っ!」

獄炎を呑み込んだ紅蓮の炎……それを、水の幕が防ごうとして……できなかった。

水幕を蒸発させ、勢いは止まらない。

「―――避けてくださいまし!」

「はっ―――」

我の真橫―――先ほどまで『水鱗王』がいた所が焼き飛んだ。

「何をしているのですか?!ボーっとしている暇はありませんわよ!」

「……我の……『獄炎魔法』が……」

「うーん?私の恐ろしさがようやくわかったかな?」

……『獄炎魔法』は、『闇魔法』と『炎魔法』が合わさった魔法。

加えて、我の魔力は人より多い……今まで、魔法の威力で負けたことがなかった……のに。

最強と、最強だと信じて疑った事のない魔法が……一瞬で呑まれた。

「さてさて……ほら、降參するなら今のだよ?」

「ちょ、ちょっと!しっかりしてくださいまし!」

「……………」

……わからない。

この気持ちがわからない。

目の前の『ゾディアック』を見て……震えが、止まらない。

まさか……この我われが、恐怖をじていると……?

そんなはずは、ない……そんなは―――

「―――ッ!」

ダメだ……見れない。

『牡牛座』の眼が……怖くて見れない。

初めてだ……恐怖をじるなんて、初めての事だ。

いや……初めてでは、ない……?

この覚は……前にも、どこかで―――

「『レーヴァテイン』」

「『アクアストーム』っ!」

……ああ、思い出した。

この覚は……い時に味わった。

4歳……心が付くか付かないか、そのくらいの頃。

我は―――親に、捨てられた。

あの時の覚と……今の覚は、何となくだが、似ている。

孤獨に怯えているか……目の前の敵に怯えているかの違いだろう。

「『ネオ・アクアストーム』っ!」

「あはは、スゴいスゴーい」

「この……!」

……助けて、しい。

イツキ……イツキ、イツキ、イツキ、イツキ、イツキ、イツキイツキイツキイツキイツキイツキイツキ―――

『ウィズ……『水鱗王』は任せた』

ふと、脳裏に言葉がよぎった。

……無理だ……イツキ、我には無理だ……

我は弱い。弱いくせに……強く在ろうとした。

の程を知らない子ども……我は、ただの子どもだ。

―――そんなの、イツキだって子どもだろう。

「ふ、ふふ……ふっはっはっはっはー!」

我とイツキでは、強さの次元が違う。

―――だから何だ。同じ人間だろう。

我とイツキでは、魔法の適も違う。

―――だから何だ。我は魔法適が2つある……それは、イツキにも無い才能だろう。

我とイツキでは、筋の量が違う。

―――だから何だ。イツキはい頃から戦闘の訓練をしていたと言っていた。その分、我は魔法の練習をしていただろう……最強と信じて、練習し続けた『獄炎魔法』を。

「急に笑い出して……どしたの?恐怖でおかしくなっちゃった?」

「いやなに……恐怖が薄れてきた」

最強と信じて疑わなかった『獄炎魔法』は、簡単に呑み込まれてしまったではないか。

―――そんなの、力が足りなかったのだろう。

ならば……どうすればいい?

決まっている―――もっと頑張れ。もっと集中しろ。もっと魔力を込めろ。もっと……もっともっともっと!

「自問自答とはスゴいな……このわずかな間で、いつもの調子を取り戻せるなんてな」

「……なんか、ムカツクね」

「ならば來い……それを上から、叩き潰してやろう」

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