《発展途上の異世界に、銃を持って行ったら。》55話

「……で?何故ここに來た?」

「やだなぁ、そんな怖い顔すんなよ。が寄ってこねぇぞ?」

「いらん世話だ」

眼を閉じ、『お前と話す気はない』と意思表示する男。

『人國』を出た俺は……その足で『騎士國』に來た。

もちろん、ちゃんとした目的があって、だ。

「それに……俺には婚約者がいる。貴様なんぞに心配されずとも、行き遅れる事は無い」

「マジかよ」

どや顔で俺を見下ろす『騎士王』が、玉座から立ち上がる。

「それで……何をしに來た?個人的な意見だが、俺はお前が好きではない」

「はっ、俺だって野郎から好かれたって嬉しかねぇよバーカ」

「……とっとと用件を言え。俺は忙しいんだ」

「まったく忙しそうには見えねぇけど」

平日の晝間、玉座でウトウトしているやつが忙しい?寢言は寢て言え。

「用件……つっても、大した事じゃないんだ」

「……言ってみろ」

「んじゃ聞くけど……『人國』と『騎士國』ってどんな関係になるんだ?」

腕を組み、『騎士王』に問いかける。

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……前々から、疑問に思っていた事だ。

グローリアスさんはんな國と同盟を結んでいるが……『騎士國』と『森國』、あと『妖國』と同盟を結んだ、とは聞いていない。

『水鱗國』は……まあフォルテは屋敷うちにいるし、同盟と同じレベルの信頼関係はあるだろう。

「どんな関係と言われても……他國としか思っていない」

「……実の兄が治める國なのに、か?」

「ああ……事実、同盟を結んでいるわけではないからな」

「同盟……結んでないのか」

……それなら―――

「……なあ『騎士王』……いや、『騎士王 エクスカリド・ゼナ・アポワード』、折りって頼みがある」

「……なんだ?」

「『人國』と……同盟を結んでくれないか」

突然の提案に、『騎士王』が目を見開くが―――

「ダメだ」

「なっ、なんでだよ」

「メリットがないからだ」

冷たい『魔眼』が、俺を見下ろす。

「その提案を呑んで……俺たちにメリットがあるか?」

「それ、は……」

「逆に、お前たちにメリットは?なんで同盟を結びたい?グローリアスに頼まれたか?」

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「……違う」

なんで同盟を結びたいか、だと?

そんなの、決まっている―――!

「シャルの……いや、俺のためだ」

「貴様のためだと……?」

「ああ。俺の好きな人が、『森國』の男に取られた……俺は、それが許せない。あいつは俺のだ。誰にも譲らない」

「……意味がわからん」

言いたい事がまとまらない。

いや、もういい……思ってる事、全部言ってやる!

「『騎士國』と同盟を結びたいのは……俺が見栄を張れるようにするためだ」

「見栄……だと?」

「『森國』と対立した時……弱な『人國』だけじゃ、太刀打ちできない。でも『騎士國』の後ろ盾があれば……あいつからシャルを奪い返した後、ビクビクしなくていい」

「シャル……?シャルロットに、何かあったのか?」

「ああ……だから、力を貸してほしい」

膝を付き、地面に手を付け―――

「なっ……お前……?!」

「頼む……同盟を、結んでくれ……!あんたたちの力を、貸してくれ……!」

頭を地面にり付け、懇願する。

「……はあ、もういい。頭を上げろ」

「……………」

「仕方がない……同盟は結んでやる」

「ほ、ほんとか―――」

「ただし、條件がある」

俺の顔に指を突きつけ―――『騎士王』がらかく笑った。

「事が済んだら……ここに顔を出せ。そして、何があったのかを聞かせろ」

「……それって……」

「貴様が頭を下げるほどだ……何か大変な事が起きていると認識していいだろう。そして、貴様の顔を見るからに……時間は、あまり殘されていない」

驚異の察力を発揮しながら、『騎士王』が続ける。

「グローリアスが……兄貴がするシャルロット……無事に連れて帰れ。これも同盟を結ぶ條件に加える」

「『騎士王』……」

「『騎士王』なんて呼ぶな……俺はエクスカリドだ」

「……エクスカリドさん。本當に、ありがとう」

―――――――――――――――――――――――――

「いやー……エクスカリドさんって、意外にいい人だったんだな」

「勝手に『騎士國』に行っておいて、最初に言う言葉がそれ?!」

肩を摑むマーリンが、力任せに前後へ振る。

「しゃーねぇだろ……俺の作戦の通りに進めんなら、『騎士國』の名・前・は必要なんだし」

「名前が……必要?」

首を傾げるマーリンを置いて、自室に戻る。

……今回の俺は、本気だ。

シャルを助けるためなら、頭を下げるなんて安いもの。

それに……俺の怒りは、全て『森王子』に向いている。

あのクソエルフの暮らす國……一切の躊躇ちゅうちょはしない。全全霊、全力を以もって潰す。

「さてさて……作戦を振り返るか」

白紙のノートに、インクを付けたペンを走らせる。

……大の作戦は決まっている。

結婚式となると、警備はいつもより強化される……いくら『フィスト』や『クイック』、『魔導銃』を使っても……多勢に無勢。いつかは殺られてしまう。

「だから……まずは……」

その1、警備兵の注意を逸らす。

これは比較的簡単だ……この前ヘルアーシャに教えてもらった『陸式 火炎放フレイムスロー』で『森國』の辺りを囲っている木々を燃やすもよし、『玖式 対裝甲車両破壊弾ロケットランチャー』で國の端っこを吹き飛ばすもよし。

今回はマジで躊躇しねぇ……何人か死んでも、気にするつもりは、まったく無い。

「次にするのは……」

その2、奇襲を掛ける。

あのクソエルフは、まさか俺が『森國』に乗り込んで來るとは思わないだろう……だから、その油斷を使って一気に切り崩す。

正面からだと対応されるかもしれないから……念のため、橫から侵しよう。

り口が無かったら、最悪『フィスト』で作ればいいし。理的に。

「さて……最後だ」

その3、シャルを取り返した後だ。

『クイック』で逃げても良いが……それだと、その後がめんどくさい。

『森王子』はシャルの事をしつこく狙ってくるだろう。

だから、ここで『騎士國』の力を―――今まで同盟を結んできた國の力を借りる。

『俺たち『人國』と対立するってことは、『森族』と『妖族』を除く5國と対立する、って事になるからな』

まあこんなじで脅せばいいだろう。

「……できる、かな……?」

なんかちょっと心配になってきた。

……いや、大丈夫!今回は本気だ!失敗なんて―――

「なんで私たちに一言も相談しないのかしらね」

「さあな……イツキにとって、我々は力不足なのではないか?」

部屋の外から、そんな聲が聞こえた。

振り向いた先―――扉を開け放ち、その先に6人のが立っていた。

「お前ら……」

「1人で行くとか言わないわよね?」

「うむ……我にもできる事があれば、言ってくれ」

ランゼとウィズが、俺の隣に立つ。

「……ダメだ。今回は本気で危ないからな」

「そんなの関係ないよ!シャルは僕たちの友達なんだよ!助け合って支え合うのが友達でしょ?!」

「そうそう!うちだってシャルちゃんと友達なんだから!あの『森王子』の顔、ぶん毆ってやるんだから!」

ストレアとサリスが、鼻息を荒くしながら部屋にってくる。

「……お前らもか?」

「もちろんですわ♪魔法を使うことにしか長けていない森の猿共……あいつらをご主人様が滅殺されるのでしたら、是非ともこの眼で見たいですわ♪」

「自分は……自分も、シャルを助けたい。だってシャルの隣が似合うのは……あなたなんだから」

フォルテとマーリンが、部屋の外に出たまま答える。

「……でも―――」

「ごちゃごちゃ言わない!」

俺の顔を摑み、ランゼが強引に橫へ向ける。

至近距離で俺を見つめるランゼに、不覚にもドキッとしてしまった。

「イツキに協力するって人が、こんなにいるのよ!だったら『ありがとう』って言って力を借りるのが普通でしょ?!」

「でも……シャルは、俺が―――」

「シャルを助けるのはイツキ!そんなの當たり前!だったら!シャルへの道を作るのは、私たちの仕事でしょ!」

機に置かれた作戦を見て、ランゼが指示を出し始める。

「その1は……私とウィズの仕事ね。私が國の端を破壊。ウィズが『森國』の周りに生えてる木々を燃やす。これで『森國』の警備の注意を逸らす、いいわね」

「うむ……任せろ」

再び作戦に目を通し、続ける。

「ストレアとサリスは、イツキと一緒にシャルを助けに行って。正確に言うなら……シャルを助けるイツキを、助けてあげて」

「うん!任せておいて!」

「シャルちゃんへの道、作ってみせるよ」

そして……フォルテとマーリンを見て、言った。

「フォルテはウィズが木々を燃やしすぎた時のための、消火手段……だから、ウィズと一緒に行して」

「はい♪」

「マーリンは……私と一緒ね。私は『破滅魔法』を使った後、使いにならないから……寄ってきた警備兵の迎撃は任せるわ」

「何それ?!」

全員に役割を與えたランゼが、『バンッ!』と紙を機に叩きつけた。

「シャルを助けたいのは、イツキだけじゃない……私たちだって、1日2日の付き合いじゃないんだから。それだけはわかっててね」

「……ああ、すまん……それと、ありがと」

照れたような俺の謝の言葉に―――ランゼは満面の笑みを浮かべた。

この日はこの後、何をするわけでもなく床に就いた。

―――シャルの結婚式まで、殘り5日。

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