《発展途上の異世界に、銃を持って行ったら。》64話

……言った。

ずっと隠してきた事を、全員の前で言った。

……なんて返事が返されるか、怖い。

俺の言葉が理解できてなくて、首を傾げているストレアが怖い。

目の前で口をパクパクさせてるマーリンが怖い。

驚きに目を見開くフォルテの反応が怖い。

「……ふーん……やっぱり」

「…………………………え……?」

腕を組むランゼ……今、なんて言った?

「や、やっぱりって……シャル、サリス……?」

思わずシャルとサリスを見るが『違う言ってない』と首を振っている。

……じゃあ、なんで……?

「ふん……我とランゼが気づいていないとでも思っていたのか?」

「……気づいてたのか?」

「……最初に違和を覚えたのは、『サルクルザ』に泊まった時だ……あの時言っていた中學校やら高校やら、『アンバーラ』に帰ってから調べたが、そんなものは存在しない」

「私は初めて會った時ね。出地も教えてくれない、自分の魔法適も知らない……そんな人、普通はいないわ」

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……そういうので気づいたのか?

「まあ當時はあんまり気にしてなかったけど……サリスが來た時、サリスも魔法適がわからないって言ってたじゃない?だから『あれ?イツキも……?』って思ってたの」

「我も同じじだ……いくらき時に戦闘訓練しかしていないとはいえ、文字を知らないのはおかしい」

「たまたまウィズに『イツキってなんか怪しいよねー、自分の魔法適も知らないし、一般常識も知らないし』って話したら、ウィズも『イツキは怪しい』って」

「……ランゼとそういう報を話し合ってたら、『あれ?じゃあイツキって?』となったのだ」

……こいつら、変な所でカンが良いよな。

「……なんだよ……バレてたのか」

「ん、まあ『そうかなー?』ってじだったけどね」

「―――えええええええええっ?!イツキって『勇者』だったの?!」

時間差で驚くマーリンが、俺の襟元を摑む。

「え?!だってイツキは……え?!『勇者』って……『勇者』?!」

「お前さっきから何言ってんの?」

「ご、ご主人様が『勇者』……うへ、うへへ……♪」

わけのわからない事を言うマーリン、なんか妄想して喜ぶフォルテ、今もまだ頭の理解ができていないストレア。

「……?……『勇者』?」

「ああ、一応俺が『勇者』だ」

「…………?……うん?」

……ストレアって、思ったより理解が遅いな?

「『勇者』って……誰が?」

「俺が」

「イツキが?」

「ああ」

「伝承の?」

「そうだ」

ここまで言っても、ストレアの頭には『?』が舞している。

「……まあいきなり『俺が『勇者』です』っつっても信じられないかもだけど……信じられないなら信じなくてもいい……聞きたい事とかあるか?」

「なら、ずっと聞きたかった事があるんだが……いいか?」

「んあ?」

「……そ……そのカッコいい右腕はどうしたんだ?」

瞳をキラキラさせるウィズが、俺の右腕の指さす。

……やっぱり食い付いたか。

「……『魔力可式上腕義手』……まあ新しい右腕だと思ってくれればいい」

「無理でしょ?!本當の右腕はどうしたの?!」

「……焼き飛んだ。はい、この話終わり」

「焼き飛んだ?!何それどういう―――」

「悪いなランゼ……あんま思い出したくねえんだ」

……あの時の覚。

生きる事を諦め、約束を忘れて死をれた、無責任な思い。

エルフをズタズタに引き裂き、『霊魔法』で何もかもを殺して、滅ぼしてやろうと思った、人殺しの

右腕を犠牲にした時にじた想像を絶する痛み……もう二度と思い出したくない。

あれは恥だ。

約束を守れない無責任、理を放棄した殺人心、弱さ故ゆえに知った痛み……どれも、恥に値あたいする。

「そ、そう……そんなに辛かったのね」

「……まあ」

「な、なあ!らせてくれないか?!」

「ああ……ほれ」

右腕から取り外し、ウィズに渡す。

「……んじゃ風呂ってくるから……ストレア、飯作っといてくれね?腹減っててさ」

「……?……あ、うん!わかった!」

―――――――――――――――――――――――――

「…………………………はぁ~……」

ヤッベェ風呂めっちゃ気持ちいい。

……何日ぶりだ?……まあ、もうどうでもいいか……

「あ……服買わないと……」

……ま、いつかでいいか。

「……々あっ―――」

「よいしょー!」

「………………おう?」

『ガラッ』と扉が開けられ―――タオルを巻いた、サリスが現れた。

「……お前……何しに來たの?」

「え?うちもお風呂りに來たんだけど?」

「今、俺がいるよね?」

「広いから大丈夫だよ!」

……まあ確かに。

ここの風呂場は、屋敷なことあって広い。

人が4人いても足をばせるくらいに―――いや違う。そんな事はどうでもいい。

「……俺が上がるまで待てなかったのか?」

「んー……待てたけど、イッチャン左腕だけじゃ行しずらいかなーって」

「気遣いどうも……でも大丈夫だから」

立ち上がり、近くに置いてあったタオルで隠しながら風呂場を出る。

「あっ!イッチャン、背中流してよー!」

「……ああ?なんで俺が―――」

「恩人の背中を流してあげよっかなーとか思わないのー?」

……こいつは……

「……はぁ……わかったわかった。んじゃ座れ」

「わーい!」

風呂椅子に座り、嬉しそうに背中を向けてくる。

「おら、洗うぞ」

「うん!」

ボディタオルを泡立て、サリスの背中を洗い始める。

……無心……無心になれ……

そうだ……これはけっしてイヤらしい事じゃない。恩人へのささやかな恩返しだ。

「……ダメだよね……こうやって理由作らないと……うちは……イッチャンに……」

「……サリス?」

「あ、ううん!なんでもなーい!」

……今の悲しそうな顔は……?

「うし……終わったぞ」

「ん!ありがと!」

……気にしても仕方ないか。

―――――――――――――――――――――――――

―――深夜。みんなが寢靜まった時間。

俺も寢ていたのだが……ふと、の渇きを覚え、目が覚めた。

「……ねむ……『ルック』……」

久しぶりのベッドだからか、いつもより深く眠ってたような気がする。

屋敷の中は暗いので、一応『ルック』を発して階段を下り―――

「………………ん……?」

ふと、1階に月明かりが差し込んでいる事に気づいた。

……おかしい……屋敷の窓には、全てカーテンが付いている。

寢る前には全て閉めて、れないようにしているはずなのに―――

「…………どこだ……?」

1階を見回し―――玄関が開いている事に気づく。

……え、なに……泥棒?

「……………」

覚悟を決め、とりあえず玄関に向かう。

義手を取りに行くか迷ったが―――まあ、正直人間相手なら『フィスト』だけで充分だ。

……とは言え、冷や汗が止まらない。

深呼吸して―――ドアノブを摑み、勢いよく開いた―――

「……ん?」

「………………なんだよストレアかよ……焦らせんなよな」

玄関を開けた先―――月明かりを浴びるストレアが立っていた。

「こんな夜中に何やってんだ?」

「……それはボクの臺詞セリフだよ。君こそ何をしてるの?」

……?……なんだ……なんか、會話に違和が……?

「……ストレア……なのか?」

「うん。ボクだよ……急にどうしたの?」

ギラギラと、夜の中庭にストレアの『紅眼』だけが明るく輝いている。

……ストレアの眼って……紅だったか……?

「……いや……ストレアじゃねぇな……誰だお前」

拳を握りしめ、ストレアの姿をした何かと向かい合う。

の瞳を細め、偽者の口が『ニヤー』と裂けた。

「……まあわかっちゃうよねぇ……さすがは勇者、ってじかな?」

「……誰だ」

「ストレアの中に住む『鬼』かな。ま、人によっては……ボクの事を『鬼神』って呼ぶよ」

フラフラと、を揺らしながらストレア―――否、『鬼神』が近づいてくる。

「止まれくな……ストレアはどこだ?」

「んー……今は寢ちゃってるよ。だから代でボクが出てきたんだけどね」

「……どういう事だ?」

再び、ストレアの口が笑いの形に裂けた。

……なんだこいつ……不気味すぎるだろ。

「最近、ストレアは頑張り過ぎてるからねー……しずつだけど、意識がボクと混ざり始めてるんだよ」

「……意味がわからん」

「簡単に言うなら、ストレアの意識をボクが支配し始めてるって事さ」

「お前―――!」

「ま、噓だけど」

舌を出す『鬼神』が、からかうように笑う。

……どうしよう。グーで毆りたい。

「でも、意識が混ざり始めてるのは事実さ。このまま行けば―――ストレアの意識はボクに呑まれてしまうね」

「……何が言いたいんだよ」

「君たちと楽しそうにお喋りしているストレアは―――あと1ヶ月で、ボクに変わる」

さっきまで笑っていた『鬼神』が、急に真顔になる。

「……それって……」

「ボクの……『鬼神』の力を使いすぎてる。ボクの力は、普通の『鬼族』なんかじゃ許容できないんだよね……もちろん、ストレアもさ」

「……………」

「一応、ストレアはこの事を知ってる……ボクという存在がストレアの中に存在する事も、このまま『種族能力』を使い続ければ意識を呑み込まれる事も」

……いやー……何でこんな話に?

俺、さっき屋敷に帰ってきたばっかりだよ?次から次に、厄介事多くない?

「……君に、お願いがある」

「……大わかるけど……なに?」

「ストレアに、ボクの力を……『鬼神』の力を使わせないようにしてほしい」

『鬼神』が頭を下げる。

「その……意識を呑まれないようにする方法は―――」

「ないね……ボクの力を使わないようにする以外の方法はない……」

―――ストレアが……消える?

「……ストレアの事を、守ってあげてほしい」

「……なあ、聞きたい事があるんけどさ」

「ん?」

「お前……ストレアが消えたら困るのか?意識を支配できるんなら、お前的には……困ることはないだろ?」

「はははっ……まあ、そう思うのが普通だよね」

腕を組み、うんうんと頷く。

「……ストレアは、優しいんだ」

「……んで?」

「ボクは意識を呑み込む『鬼神』。誰もボクを好ましくは思わない……でも、この子だけは違った」

ストレアのに手を當て、『鬼神』が続ける。

「『僕が寢てる間なら、好きにしていいよ!』……って、そんな風に言われたのは、初めてだったんだ……だから、この子だけは守ってあげたい」

「…………………………はぁ…………わかったわかった。ストレアに『種族能力』を使わせないようにすりゃいいんだろ?」

「うん―――おっと、ストレアが起きそうだから、ボクはそろそろ部屋に戻るよ」

「なあ」

「んー?」

「……この話は……ストレアには聞こえてんのか?」

「聞こえてないよ?」

……なんで俺ばっかり、こんな面倒事に巻き込まれなくちゃいけないんだ。

「……ストレアは、孤獨を嫌ってる」

「ああ?」

「もしも……もしも意識が『鬼ボ神ク』に支配されたら……思い出させてあげてほしい。彼が、1人じゃないことを。君たちという、家族がいるってことを」

そんな意味深な事を呟き……『鬼神』が、屋敷へと消えた。

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