《死神と呼ばれた殺し屋は異世界に》第36話 王都行きの馬車
「朝か」
目が覚めたときには朝日はすでに昇っていた。昨日は、助けてくれたお禮ということで返金と無料で泊めてもらった。
あと、お金の価値や相場を教えてもらった。どうやらこの世界の1ギルは日本円に換算して10円ということが分かった。確かにそれで考えたら1泊20000円だよな。
ホテルってあまり泊まったことはないんだが高いよな、やっぱり。というか、叡知ウィズダムは元の世界の単位を知ってたし相場も知ってたんじゃないか?
『いえ、単位は知っているのですが、殘念ながらお金の相場は知りませんでした。あなたの元の世界のお金の単位は多かったもので』
ああ、確かにな。円、ドル、ユーロ、両替の必要があったからめんどくさかったな。
さて、そろそろ行くとするか。今日から王都に向かうからな。し速いかもしれないが、時間が余ったら観すればいいだけだし。
そう思いながら、俺は著替える。今日は部屋が分かれているから、著替え終わったら起こしに行かないとな。
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俺はそう思いながら著替え終わり、外へと出て、アルジェントの部屋の前に立つ。
コンコンッ
「起きてるか?アルジェント」
「ちょっと待ってください」
俺は壁に寄りかかり、待つことにした。すると、茶いドアが開き、アルジェントが出てきた。
「さて、行くか」
「はい」
俺達は手続きを済ませ、外へと出た。
◆◇◆
馬車に乗る場合、基本切符を買わないといけない。馬車は乗ることができる人數がないため、切符には乗る馬車も書かれている。
ギルドの場合、ギルド専用の馬車があり、クエスト注書が切符の役割を果たしている。
で、王都への切符の料金は1人銀貨2枚と銅貨5枚となっている。俺は銀貨5枚を払い、二人分の切符を買う。
切符にはE-4とE-5と書かれていた。馬車にはアルファベットが書かれていてそのアルファベットが書いてある馬車に乗る。
とはいえ、この世界にはアルファベットはあっても、英語なんてものはない。アルファベットは召喚された勇者が伝えてきたらしいが、この世界ではただの記號として使われている。
數字は乗る場所が決まっている。馬車には6つの椅子が置いてある。橫の壁に対して垂直に3つ置いてある。壁は2つあるから2×3で6つ。
番號は進行方向の右側の椅子から1,2,3……というふうについてある。つまりE-4とE-5はEの馬車の進行方向左側の椅子の前から1番目と2番目ということだ。
馬車に乗り込むとそこには3人の男が既に乗り込んでいた。俺達は席に座る。
「えっと初めまして」
いきなり、真ん中の男が話しかけてきた。
「初めまして俺は夜神 祐、隣はアルジェント・クレアーレ、二人とも冒険者だ」
「初めまして」
「あ、冒険者なんだ。僕も冒険者なんだ。名前はシンプ・レックス、隣は僕の仲間で二人から見て右がレティサンス、左がキャーロだ。」
シンプは短い茶髪にしさの殘る顔をしている男だ。剣を持っているからおそらく剣士だろう。
レティサンスは青いマフラーのようなもので口元を隠した真っ赤な髪を茶いリボンで束ねただ。
キャーロは金髪のショートヘアーでにこにこしているだ。茶いローブを著ている。3人とも、俺と同じくらいの長だ。
「よ、よろしく」
「よろしくね!ねぇ、二人とも貴族なの?」
「いや、違うけどどうして?」
「姓を持ってる人って珍しいと思って、大貴族くらいだから」
そうなのか?
『基本、姓を名乗るのは貴族です。貴族は一族の名を背負うため、姓を名乗ります』
なるほどな。ん?じゃあシンプは貴族なのか?
「じゃあシンプは貴族なのか?」
「うん。でも冒険者を目指しているんだ。」
「なんで?」
「……僕の一族が治めていた村は、あるとき魔の大群に襲われたんだ。僕はそのなかで迷子になって、魔と対峙したんだ。そのとき、冒険者が助けてくれた。だから、冒険者に憧れたんだ」
醫者に命を救われた人が醫者を目指すのと同じ心象か。……もしかして、俺もそれでこの仕事を目指したのか?いや、俺は守るためにこの仕事についたんだ。この目的は忘れてはいけない。
目的を忘れたら、自分が何者か分からなくなってしまうからな。
「……でも、20歳になるまでと親に言われている。親は冒険者なんて野蠻な職業と思っている」
「確かに、生臭い職業だよな」
「そう、でも冒険者になることを認めてもらいたい。だから冒険者決闘大會で優勝して、認めてもらうんだ」
「優勝しても認められないかもしれないぞ」
「……だったら縁を切ってでも冒険者になるよ、僕は歳は離れているが弟がいる。弟のほうが分かりがいいし、領主になるなら弟のほうが向いている」
すごい覚悟だな。そこまでして冒険者になりたいのか。まぁ俺が意見を挾む必要はないしな。応援するか。
「頑張れよ」
「ああ、ところで冒険者なら二人も參加するのかい?」
「そりゃ今、王都に行く理由なんてそのくらいじゃね?」
「そうか、じゃあ途中で戦うかもしれないのか」
「まぁな」
「そのときは手加減なしだな」
「ああ」
そして、俺達は握手した。不意に窓から外を見ると、草原の向こうに大きい影が見えた。
「なんだ?あれ」
視力は良い方だがこの距離だとさすがに見えない。まぁ、いざとなったら倒すか。そもそもここから森の奧に戻る可能もあるしな。
そう思いながら、俺は寢ることにした。
◆◇◆
目が覚めたとき、皆も眠っていたようだ。不意に窓の外を見ると、その影がはっきり見えてきた。
茶い皮にを包んだ熊。しかし、長が4~5mくらいある。俺は馬を引く者に聞くことにした。
「あの~」
「なんですかい?」
「4~5mくらいある熊が見えたんですが」
「んな熊、マグナベアーでしょ、こんな所に居やしませんよ。何かと見間違えたんじゃないですか?」
「マグナベアー?何ランク相當の魔ですか?」
「マグナベアーは、Cランクでしょうかね~、まぁ魔避けのお香も焚いてますし、大抵の魔なら寄ってきませんよ」
「そうですか」
心に微かな不安を抱きながら、椅子に腰掛けた。また窓の外を見ると、やっぱりいた。というか、こっちに來てね?なんか土煙をあげながら近づいてるような、いや近づいてるな。
「お、お客さん、あれ、マグナベアーですかい?」
「そうですね」
「す、し引き返しましょう!」
「いや、引き返しても追いかけてくるでしょうし、止めてください」
「どうする気ですかい?」
「倒します」
「無茶ですよあんた!」
そんな者の言葉を聞かずに俺は迷わず飛び出ていた。
「形狀フォルム・短剣ダガー・創造クリエイト」
右手に短剣を造り出す。
「加速時間Ⅱアクセルタイムダブル」
時間を2倍速にし、圧倒的な速度で距離をめる。そして、短剣で腹を斬った。
ガァァァァァァッ!
うるさい咆哮を耳に浴びながら、今度は後ろに回り背中を何回も斬る。さらに突き刺し、力を込めさらに深く刺す。
ゴガァァァァッ!
そして、下へと切り裂く。すると、マグナベアーは振り向いた。爪で切り裂こうとしたが短剣でけ止め逆に砕いた。
そのあと、今度は腕を斬り落とした。そして、蹴りをくらわせて、マグナベアーのバランスを崩させる。そして、そこからジャンプし、首に向かって刺す。
そこから橫に切り裂いていく。そして、斷末魔をあげながら、マグナベアーは死んでいった。
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