《死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜》第1話〜異世界〜

「だい………ぶ?」

「だいじょ…ぶ?」

「だいじょうぶ?」

顔の近くでする聲がだんだん鮮明になり、司は目を覚ます。

「花音?」

「よかった!」

花音が満面の笑みで抱き著いてくる。なぜ花音が抱きついてくるのか理解できないが、とりあえず司は抱きしめることにした。

「あれ?」

意識がしっかりした司が周りを見渡す。クラスメイトはいるが、そこは教室ではない。どこか別の場所ようだ。とても広く、どこかで見たような記憶もない。

おかしいな。さっきまで教室にいたはずなのに。もしかして拐か? といろいろな思考がめぐる。

「花音。ここどこだ?」

「分からない」

「ようやく皆さんお目覚めのようですね」

聲のする方を向くと、階段の上から誰かが下りてくる。顔を見ると中年の男のようだ。王冠や綺麗な裝飾品など、見に付けているものから位が高い人なのは明白だった。

「召喚に応えていただきありがとうございます。私はこの國の王、ヘルメスと申します」

「召喚? 國の王? 何のことだ! これは拐だぞ!」

いじめグループのリーダー、森山がヘルメスに食ってかかっている。

本當に元気な奴だ。司はそう思わずにはいられなかった。

「ゆっくりと説明しますので落ちついてください」

食ってかかる森山に対して、ヘルメスは流石といったところだろう。しっかりと落ち著いて対応している。

「まず、皆さんがこの世界に來た理由は魔王を討伐してもらうためです」

「「「魔王!」」」

クラスメイト一同、驚愕の聲をあげるが、ヘルメスは全くじていない。その景から、冗談か何かで騙そうとしているわけではないことがうかがえる。

「そう魔王です。我々の世界に厄災をもたらし、破滅を呼ぶ者です」

「そんなの無理だよ。家に帰して」

クラスメイトの子が泣きながらヘルメスにお願いする。それは當たり前だろう。先生もいない、親もいない狀況で殺し合いをしろというのだから。

「それは大丈夫です!」

ヘルメスは自信満々な顔でさらに話し始めた。

「おそらく召喚した皆さんは、そのままで魔王に勝てないでしょう。それでも、ステータスはだいぶ元の世界より上がっていると思います。さらに神のご加護があります。この建にある祭壇に祈ることで、特殊な力が手にります。祈ることで力を授かれるのは召喚された皆さんだけなのです。その後訓練などを積み、我々の魔王討伐に參加していただきます。私たちの世界を救うと思って、力をお貸しください」

「いつ帰れるんですか?」

「魔王を倒せれば元の世界に帰れます。必ず!」

「じゃあ、みんなでやろうぜ! 魔王討伐!」

「そうだね。帰りたいし」

森山が仕切り、クラスメイトをまとめていく。森山の元気の良さは周りにも伝染していく。こういう時の行力は流石だと司は心の中で思うのだった。

「王様?」

森山がクラスをまとめ終わり、ヘルメスに話しかける。

「王様はやめてください。ヘルメスと呼んでもらっていいですよ」

「呼び捨てはあれなんで、ヘルメスさん。魔法ってあるんですか?」

「もちろん魔法はあります。魔王が使役する魔は、普通の打撃では殆ど効果がありません。なので魔法の訓練もしっかり行っていきます」

「マジか! やったな!」

「魔法ってあるんだ。楽しみだ!」

「ほんとにファンタジーの世界だね」

ヘルメスの魔法があるという言葉にクラスの雰囲気がさらに上がる。やはり、魔法を使うのは地球の人間にとって夢だったということだろう。

クラスが魔王討伐に燃える中、司は冷靜に狀況を整理していた。いじめをけている司の格上、人の言葉を簡単に信じたりはしない。本當に地球に帰れるのか? 噓でないのか? 司は頭の隅にいれて行するように心がけるのだった。

「それでは祭壇に行きましょう」

「あとでステータスプレートもお渡ししますので、しっかり確認してくださいね」

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