《死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜》第6話〜変化〜

司がなぜ逃げ遅れたか、その理由は簡単だった。こけたのだ。いや、正確にはこかされた。

「どうせ死なねえんだからせめて盾になれよ」

森山の非な言葉と同時に、足をかけられたのだ。

鬼の形相で迫るゴブリンロード。司に、為すすべはなかった。目の前に迫る恐怖に目をつぶり、自分に言い聞かせ続ける。大丈夫。痛みには慣れた。僕は死なない! 大丈夫! 司にできるのはそれだけだった。足音がどんどん近づいてくる。

「よくも仲間を! 死ね!」

ゴブリンロードのびともに、ゴブリンより発達した剛腕が司に向かって振るわれる。

バキッ

骨が折れたような、異様な音が森の中に木霊する。あれ? 毆られたのは司ではなかった。司の頭に嫌な予が浮かぶ。急いで目を開けると、その予が的中していた。

「花音! 何してるんだ!」

「守るって言ったでしょ?」

司とゴブリンロードに間に、腕が折れ曲がった花音が立っていた。司は、また守られた。守られたくないのはみじめな自分が嫌だから。だが、最も大きい理由は、花音を危険にさらさないためだ。守ろうとすれば危険が及ぶかもしれない。だから守ってほしくなかった。なのに……

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「なんでこんなことするんだよ! どうせ俺が傷つくのが嫌って言うんだろ。それは俺も同じなんだよ! なんでわかってくれないんだよ! 花音が傷つくのは俺が嫌なんだよ! それぐらいなら、俺が犠牲になればいいんだよ!」」

「ありがとう。でも、そんなの嬉しくないよ」

花音は小さな聲で、司の意見を否定した。どうしてこんなことになるんだ! 司が頭を悩ませている時間はなかった。

「そこまでだ。別れの挨拶はいらないぞ。どうせ死んだ後に二人で會えるからな」

ゴブリンロードが攻撃を始める。片腕で剣を握り、ゴブリンロードと対等な戦闘を繰り広げる花音。しかし、片腕ではステータスの全てを生かしきれない。時間稼ぎが一杯といったところだ。だが、それだけで十分だった。花音は一人ではない。

「待たせました。後は任せてください。もう大丈夫です」

ゴブリンを殲滅し終えた騎士団が戦闘に參加し始める。騎士団が來たことで、花音はいったん戦闘から離した。その間も、司は遠くから見るだけだった。それしかできない。守りたい人を守ることさえできない。

「俺の部下たちをよくも! 死ねー!」

ゴブリンロードがさらに激昂する。だが、騎士団の優勢は揺るがない。テンポよく騎士団の攻撃が刺さり、ゴブリンロードは疲弊していく。

「これで終わりです!」

アンナの攻撃でゴブリンロードのきが止まる。司はゴブリンロードが死んだと思い、花音に近づいた。その一瞬を、ゴブリンロードは見逃さなかった。最後の力を振り絞り司に接近する。

「死ね!」

全力で振るわれた拳が、司の目前に迫る。その瞬間、拳の間に何かが割ってった。まただ。また花音が怪我をする。なんでだよ!

「大丈夫だから。絶対防!」

ゴブリンロードの拳を、花音が能力で無効化する。しの間で回復魔法を使い、花音は完全に治っていた。ステータス通りの力を発揮する花音に、ゴブリンロードが勝てるわけがない。

「ライトニング!」

花音が取得した中級魔法を放つ。中級魔法は下級魔法と比べにならない威力がある。ゴブリンロードと言っても所詮はゴブリン。跡形もなく消滅する。

「やったね!」

花音が司に笑顔を向ける。だが、司は全く嬉しくなかった。自分を守るために、花音が犠牲になるなどありえない。

実戦訓練は、ゴブリンロードの出現という形で幕を閉じた。

司は部屋のベットに潛り込み、考え続ける。

どうして花音が傷つくんだ。あのゴブリンのせいか。いや違う。俺が弱いのがいけないんだ。だから守られる。だから傷つく。俺が強くなればいいんだ。守ってもらわなくていいぐらい、もっと強く。もっともっともっと強く。魔王を殺せるぐらい最強に。花音を守れるように。……花音が傷つく要因を、すべて排除する!

その日、司の中の何かが変化した。

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