《死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜》第11話〜異形①〜

アンナと花音が現れたことで、森山達は二人の後ろに移を始める。恐怖で足がかなくなっていた者もいたが、地面を這ってまで必死に移をしていた。異形となった司の目の前にいる井上は、恐怖の表を浮かべることしかできていなかった。

「何があったんですか? あの化けはいったい」

森山達に対してアンナが狀況説明を求めるが誰も答えない。正確には答えることができない。自分たちがやっていたこともあるが、恐怖で口がうごかない。ただただ、恐怖に震えることしかできなくなっていた。

途中から來たアンナは、黒い化けが何なのか全くわからなかった。それはそうだ。今の司は両目ともまっ黒く変化し、人間なのかさえ怪しい姿になっていた。だが、花音は違った。一目見た瞬間には疑問を持ち、それはすぐに確信に変わった。

「あれは司です。間違いありません」

「本気で言ってるの? あれが藤井君とは思えないけど」

「本気で言ってます! 私ならわかります!」

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「そう。わかったからって、どうにかできるものではないと思うけどね」

異形となった司は魔法によって二人の方を向いていたが、すぐに目の前の井上に視點を戻す。

「殺す!」

司が黒い爪で再びを貫こうとする。

カキンッ

一瞬で距離を詰めたアンナの振るった剣によって爪がはじかれる。

「どうしてそんな姿になったかはわかりませんが、人殺しにはさせませんよ」

その後も、アンナは剣で司の攻撃をはじいていく。それはアンナを狙ったものではなく、すべてアンナの後ろいる井上を狙ったものだった。だが長くは続かない。素早い連撃に加えて異常なくらいの威力に、しずつアンナが疲弊していく。

花音は見守ることしかできなかった。相手が強いということもある。だが、やはり一番の理由は司であること。姿が変わろうと司であることに変わりはない。花音が剣を向けられるはずがなかった。

「このままでも埒が明かない。アインを呼んできて! 早く」

「分かりました」

アンナの指示で花音が走って訓練場を出ていく。と同時に司の攻撃がさらに激しさを増す。攻撃の合間をぬってアンナが剣で司を斬りつける。すると、いったん司のきが止まった。次の瞬間

「殺す」

司の姿がアンナの視界から消える。消えた先はアンナの背後、一瞬で上がった速度にアンナは反応が遅れる。

「まずい!」

バキッ

アンナのが一気に吹き飛び、もとれず壁に激突する。司の蹴りは井上に向けられたものではなく、アンナを狙ったものだったのだ。アンナのが壁から離れた瞬間、司はすでに目の前にいた。二度目の蹴りがアンナに直撃する。

カハッ

アンナが吐する。司はさらに一回転して三度目の蹴りを放つ。だが、それは壁をえぐっただけだった。

「ひどい傷だな」

司の視線の先にはアンナを抱えた一人の姿があった。アイン騎士団の団長アイン、その人だった。アインはゆっくりアンナをおろし、花音に回復の指示を行う。

「よくもアンナをやってくれたな。もとは人間だったかもしれないが容赦はなしだ! お前を生かしている方がこの國に不利益になる」

司はかずに、ただアインを見つめるだけだった。

「こちらからいかせてもらう!」

「ライトニング!」

アインが中級魔法を放つ。それは花音と同じものだが、威力も発時間もアインの方が遙かに上だった。年季の差ももちろんあるが、アインが天才と呼ばれていることを語っていた。もし、花音とアインが戦えば、現狀はアインに分があるだろう。

巨大な雷が司に向かって放たれる。雷があたる直前に司が片腕を前に出す。魔法が終わると、そこには片腕のなくなった司が立っていた。アインはし驚きの表を浮かべる。

「中級魔法を片腕だけで防ぐのか。驚いたな。あれで終わると思ってたんだが、し認識が甘かったな。だが、ここからだ」

「ライトニング!」

魔法の連続発は通常以上に魔力を消費する。それが中級魔法ともなれば消費が激しいのは言うまでもない。だがアインにはそれができる。それだけの鍛錬を積んできたということの証明だ。

直撃の直前に、再び司は片腕を出して魔法を防ぐ。両腕のなくなった司の姿を見て、花音は涙を流していた。

「これで両腕だな。あとは頭か? 足か?」

「ライトニ………なんだ?」

アインが魔法を発しようとしたとき、黒いオーラが司のを飲み込む。數秒後、オーラが禿げる。そこには両腕の再生した司の姿があった。

「マジか。それは反則だろ。こっちも後先考えてはいけないな」

アインの人生史上最高レベルの敵。アインはさらに気を引き締めて剣を抜く。

「お前は必ずここで殺す!」

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