《死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜》第38話〜勇者〜

開戦から數分で、四十人いたクラスメイトは三十人まで減っていた。

魔王軍対四十人ならば、まだうなずけるだろう。だが、違う。相手はただ一人。魔王たった一人なのだ。配下と思われる者は、全員塀の上で見學をしている。

四十対一という圧倒的優勢の立場でありながら、それが覆っていく。また一人、また一人と命が散っていく。

何度も何度も訓練で力を磨いてきた。自分たちに敗北はありえない!

その自信がクラスメイトから剝がれ落ち始める。

「無理だ。強すぎる」

司をいじめていたグループの森山が、負けの言葉を口にする。言葉と同時に、半數ものクラスメイトが戦場から城へと走って逃げていく。

その言葉はこの狀況で最も口にしてはいけない言葉だった。クラスメイト全員がそんなことは分かっている。だが、希があると信じて、恐怖を押し殺して戦場に立ってるのだ。一人の弱音が、クラスメイトを完全な敗北へう。

セイヤの背後に三人の騎士が現れる。

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「逃げだしたのはどうする?」

「任せる。殺せ!」

「了解!」

逃げだした者の前に、瞬時に三人の騎士が立ちふさがった。

「逃がさないよ」

「こいつは魔王じゃない! この人數ならやれるぞ! 俺達は勇者だ!」

「どの口が勇者だよ。笑わせるなよ!」

「勇者ってのは相手に背中向けるなんてことは絶対しないんだよ!」

「恥を知れ!」

「「極炎ごくえん」」

三人の騎士が一斉に放った炎系の魔法によって、逃げだした者達は灰へと姿を変える。

「勇者ってのは、ああいう奴のことを言うんだよ」

三人の眼差しの先には、魔王であるセイヤがたっていた。

「あっちは片付いたな。後はお前らだけか。降參するか?」

「私は諦めない! 最後の最後まで戦いぬく!」

「強いな。なぜそんなに殺したがる? 魔だから、魔王だから決め込んで命を奪って」

「私には、やるべきことがある! 大切な人を、司を見つけるためにも、あんたんかに負けてられないのよ! そのために、厳しい訓練も必死でやってきた。その果がこれなんて納得できるわけがない! 私は勇者! 必ず勝つ!」

「君は本當に勇者なのかもしれないな。その瞳からは、溢れんばかりの力をじるよ。そんな君になら、僕のことが理解できるかもしれないのに、殘念だよ。ここからは、僕も勇者として全力で相手をしよう。かかってこい、勇者!」

二人が剣を構えて、正面に向き合う。

「死ね!」

全力といったとおり、セイヤは本気で剣を振るう。その剣に花音は反応する出來ていない。死ぬ! 周りで見ている全員がそう思ったが、実際は違った。

「どういうことだ?」

首めがけて振るわれた剣は勢いよくはじかれる。全く予想をしていなかった展開に、セイヤも一瞬、ほんの一瞬だが反応が遅れる。それを見逃す花音ではなかった。

「倒す!」

「そうか。神からの加護か!」

セイヤが言い終わる瞬間、花音の剣は確実にセイヤの心臓を貫いた、はずだった。いや、正確には心臓を通過したというのが正解だろう。も何もです、ただただを剣が通り抜けている。

「殘念。神からの加護を持つのが自分だけだと思うなよ!」

數秒間で何十発もの攻撃が花音を襲うが、またっくダメージは喰らわない。だが、能力にも限界はある。花音の能力が消えたと同時に、セイヤは攻撃を放っていた。

カハッ

吹き飛び、壁に當たって吐する。その目の前には、すでにセイヤの姿があった。

司ごめんね。 先に行くから、いつか會いに來てね。

心の中で花音はつぶやく。花音を走馬燈がめぐる。だが、その予想は覆された。

花音とセイヤとの間に、それは現れた。純白の仮面から除くのは真紅の瞳がただ二つ。

「何者だ?」

「俺は守護者ガーディアンだ。」

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