《死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜》第50話〜焦り〜

二人の狀況を見るからに、冷靜な判斷力が失われている。ただただ、目の前にある恐怖に怯えることしかできていない。この狀況で説得なんてできるわけがない。

そう判斷した司は、二人に向かって巨大な殺気を放つ。

それと同時に二人の意識が刈り取られる。

「ひとまず落ち著かせます。同じ部屋に寢かせておいてください」

「分かりました」

ひとまずはおさまったが、本的な解決には何もなっていない。

二人きりで魔に囲まれているという狀況のせいもあるだろう。あの二人だからかもしれない。だが、魔というものが敵であると教えられた彼らが攻撃をするのは必然だ。

口では語っていた皆を説得するという言葉。その言葉の難しさを改めて目の當たりにする。

セイヤさんが諦めたのも頷けるかもしれない。だが、諦めはしない。二度と同じことを繰り返さないためにも。

一人で考える必要はない。セイヤさんもそう言っていた。分からない。判斷ができないのなら、誰かに助けてもらえばいい。そう、俺には仲間がたくさんいる。

「さて、どうしたもんかの~」

「やはり、最初に手にした知識はそう簡単には塗り替えられないでしょう」

「それが常識である者には全てが非常識に見えてしまからな」

會議室で會議が行われていた。もちろん、話し合いの容はどう人間を説得するのか。

「一人に対して話すのは効果が薄いでしょう。クラスメイト全員を一カ所に集めて説明したほうが、安心できて話がはいりやすいようにじます」

「そうですね。一人では恐怖が勝るでしょう」

「だが、全員が同時に目覚める保証はないぞ。もしかしたら何か月も先になるかもしれない」

「二人起きたから殘りは九人か。なかなか難しくなるな」

「起きた二人をずっと放置するわけにもいかないだろうしな」

「まあ、部屋に籠ってもらうしかないでしょうね。二人は俺の話が通用する相手ではないですから。恐怖で教え込んでも意味はないですし」

會議の結果、全員が目覚めてから一つの部屋に集めて大きな説明が行われることになった。司をいじめていた三人を除き、目覚めた者は司と一対一で話を行うことになった。あの景を目にした人たちに、魔に合わせるのは早すぎる。

次の日に三人。次の日に四人。次の日に一人が目覚めた。

これは予想よりも早く説明にかかれる。

そう思う魔達をよそに、司には焦りが生じていた。起きた人たちに話を信じてもらえないことではない。何人かがトラウマで神に異常をきたしていることでもない。

もっとも単純なこと。

花音が目覚めない。

その事実が司を押しつぶそうとしていた。いつかは目覚める。そう自分に言い聞かせても、わずかな恐怖が司をむしばんでいく。

一日たち、二日たち、三日がたった。だが、花音は目覚めない。

起きた人たちのケアももちろん大事だ。説明を行って誤解を解くことも重要だ。だが、司にとって一番大事なことはそこでない。それらのことは、一番大事な人がいるのが大前提であるから。

「なぜでしょうか?」

「もしかしたら、モンブラン君が死んだと思ってるからじゃないか? だから、生きる活力がなく目覚めていない」

「確かに、蘇るのを知らなかったらそう思うのが普通だろうな」

「だとしたら、相當長くなるかもしれんな」

「そうですか」

「まあ、死んだわけではないです。いつか必ず目を覚ましますよ」

「そうですね。信じて待ちます。いつまでも。その為にも、目覚めた世界がよきものになるように頑張りましょう」

「「はい!」」

司は勢いよく希を語った。

明るい表の裏には、激しい怒りと焦りが隠されていた。

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