《死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜》第91話〜家族〜

「そちらが抵抗しなくても俺は殺すぞ」

ファリウスの拳を司は回避する。

「これは俺の意思だ。神なんかに俺は支配されない」

「分かった。俺もお前の力がしい。殺してやる」

二人は城を突き破って國の外へ移する。

「鬼神化」

司は神にも近い姿へと変化する。

「近くで見れば見るほど憎たらしい。死ね」

ファリウスは連打を放つ。反応することができないほどの速度ではなかったが、司は拳にあたり腹に風があく。

「気持ち悪い」

ファリウスは連打の最中にほんのしの時間を巻き戻していた。何度も小刻みに。覚が崩れるのは當然である。

「死ね」

ファリウスは攻撃の手を緩めない。

時間を巻き戻せるということは、未來に起こる全ての可能を試せるということ。攻撃があたりそうになれば時間が巻き戻り、躱せる未來になるまで無限にやり直される。後出しが可能なファリウスに司は手も足も出ない。

だが、司も負けることはない。何度も何度も再生を繰り返し挑戦を試みる。

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どれだけの時間がたったのか。司のは問題ないが全てを記憶している頭は限界だった。慣れていない異様な覚が重なり、徐々にきが鈍っていく。ファリウスはそれを見逃さない。

「これで終わりだ」

ファリウスは司の首を摑む。首には魔法陣が形されていく。

「やはりこれを使うしかない。これは転移魔法の改良版だ。これが発すればお前は次元の狹間を永遠に彷徨うことになる。俺の勝ちだ」

司は自分の首を切り落とそうとするが時間を巻き戻される。

「諦めろ。俺がこの首を摑んだ時點でお前の負けは確定している」

司は何度も何度も自分の首を切り落とそうとする。

「俺は諦めない。どれだけ時間がかかろうがお前を殺す。花音のためにも。今まで犠牲になった命の為にも、諦めるという選択は絶対にない」

「それは俺も同じことだ。神の意思は俺が打ち砕く」

そこからは我慢比べだった。どちらが先に諦めるのか。何時間も同じことが繰り返される。付近には國中の人達が集まっていた。だが、干渉は行えない。何も言わず、全員が王の勝利を祈っていた。

數日がたち朝日が登り始めた頃、戦況は一気にいた。

司は自分の首とファリウスの手を切り飛ばす。瞬時の再生と同時に距離を取る。司はファリウスが諦めたのかと思っていたが、様子からそうではないと分かった。

「何故だ? 何故俺の力が。またか。またお前か。お前が俺から奪うのか」

ファリウスは天に向かってび続けている。

その隙を見逃すほど司に優しさはない。一瞬でファリウスの心臓を槍で貫き地面に突き刺す。以前の司なら同して攻撃を控えたかもしれない。だが、今の司の頭にあるのは一つだけ。元の世界に戻るための力だ。

「まだだ。まだ俺は諦めん」

「死ね」

槍を摑み立ち上がろうとするファリウス。司はもう一つ槍を作り出し腹に突き刺す。だが、それでもなおファリウスは立ち上がろうとする。司が更に槍を作り出したところで、ファリウスのきが止まる。

「ああ、これは幻覚か」

半開きのファリウスの目には家族の姿が見えていた。

もういいんですよ。私達のせいであなたには辛い思いさせましたね。

「そんなことはない。俺は俺の意思で」

私達の前まで強がってどうするんですか。あなたは命を奪うような人ではありません。昔のあなたに戻っていいんです。

「ああ。そうか、そうだったな。俺のみは世界を作ることでもない。彼を殺すことでもない。ただ、お前達と一緒に暮らしたかった」

ファリウスの目から涙が溢れだす。

「もういいのか?」

もう終わにりましょう。

周囲で見ていた人達にはファリウスの家族は見えていない。だが、聞こえてくる言葉だけで十分分かる。彼には迎えが來ている。の再會をしている。

さあ、行きましょう。

「ああ。俺はお前達をし・・・」

ファリウスは最後まで言葉をいい終わらない。いや、言い終われなかった。言い終わる前に、三本目の槍がファリウスの頭を貫いた。

ハッハッハッハッハッハ

司が狂ったように笑い始める。

「これで俺は、俺達は元の世界に帰れる。俺のやって來たことは間違いなんかじゃなかった」

その行為。その景。近くにいた全員が理解できた。

王は今まで々な苦悩を乗り越えてきた。大切な一人の為に、自分の気持ちを殺して歩んできた。時には殘な行為もした。だが、王はそんな行為を笑っていられるほど狂ってはいなかった。

今、目の前に立っている者は我等の王ではない。王の皮を被った何かだ。

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