《天下界の無信仰者(イレギュラー)》

「ある……、るじ……」

「うーん」

寮のベッドで橫になる中、瞼越しにじる。溫かい空気と小鳥のさえずりをじるが、そこに混じって別の聲が聞こえてきた。

「主、起きてください!」

「あともうし~……」

今いい気持ちなんだ、このままにしてくれよ……。

「主、遅刻します!」

「遅刻!?」

が、次の一聲で跳び起きた。を勢いよく起こし布団を蹴り飛ばす。すぐ隣を見れば、先に起きていたミルフィアがいた。

「しまった、寢過ごしたのか。もう間に合わねえか?」

「いえ、急げば今からでも」

「分かった」

未だに眠気が殘る意識をたたき起こす。洗面臺で歯を磨きれた寢癖を直す。それが終わると急いで學生服に著替えた。俺が著替えている最中、ミルフィアは學生カバンを持ち玄関前で背を向けて待っていてくれた。

「悪い、それじゃあ行くぞ」

「待って下さい主、ネクタイが曲がっています」

「お、おお」

用意が終わり、すぐにでも出て行こうとするがミルフィアに止められた。慌てて作ったネクタイを注意されミルフィアが結び直してくれる。ミルフィアの顔がの前にあり、距離がグッと近くなった。

「わ、悪りい」

ミルフィアの手がネクタイを結んでいる。すぐ近くに頭があり、覗き込んでみれば真剣な表だ。

「……ん」

やばい、なんかドキドキする。

俺はミルフィアの顔を覗き込む。澄んだ空の瞳は元に注がれており、小さなから吐かれる息が微かに當たる。

やっぱり可いよな。

「どうかしましたか、主?」

ゲッ!

「あ、その」

ミルフィアが見上げてくる。なんとか誤魔化そうと咄嗟とっさに出てきたのは、

「そういえば、もうすぐ俺たちが出會った日だったよな。覚えてるか?」

「はい、明日です。初めて會った時の主は、たしか泣いていましたね」

「うるせえよ」

ミルフィアが小さく笑う。俺は口先を尖らせるが、そんな様子を見ているとまあいいかと思えてくる。

一瞬誕生會のことを話そうかとも思ったがそれは止めておいた。きっとミルフィアは否定する。奴隷にそんなものは不要だと。だから俺はに留め、言い掛けた口を噤つぐんだ。

そうこうしているにミルフィアは作業を終え、ネクタイをキュッと締めてくれた。

「ありがとな」

「いえ、當然の務めです。その、主」

「ん?」

ミルフィアが何かを言い掛ける。俺はなんだろうかと見つめ返すが、見上げる瞳は不安そうに揺れていた。そのまま言い掛けた口は閉じてしまい、瞳は諦めたように細められてしまう。

「いえ、なんでもありません。それでは行ってらっしゃいませ。私は消えていますが、何かあれば呼んでください」

ミルフィアが小さくお辭儀をする。見送る姿勢はこれからも共にいるはずなのに、一緒にはいられないことを告げていた。

ミルフィアの誕生會のことを知られるわけにはいかない。それ以前に、ミルフィアは學校の生徒じゃないんだ。そのため學校にはいられず、いつも消えていなければならない。その間、ミルフィアはずっと一人だ。

ごめん。なにがごめんなのか分からないけれど、俺はの中で謝った。

こうも自分に良くしてくれる彼が友達もできず一人でいる。こんな同ミルフィアはんでいないだろうが、それでも俺は思ってしまう。

ミルフィアにも、友達ができればいいのに。そして、誰よりも笑ってしいんだ。

ミルフィアの誕生會、それでミルフィアに友達ができないだろうか。それなら今よりも笑顔が増えるだろうし、俺以外に接點を持てば奴隷なんて生き方も止めるかもしれない。

そう思うと俄然やる気が出た。今日この日に集めないといけないんだ。

誕生會の參加者を。

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