《天下界の無信仰者(イレギュラー)》犯人
途端に言葉が零れる。出てきた新たな人に、加豪かごうは呆気に取られた。その人は、
「ヨハネ先生?」
「これはこれは。巻き込んでしまいましたか」
そこから出てきたのは、頭を下げ申し訳ない笑顔を浮かべるヨハネだった。何故ここにいるのか恵瑠えるが質問する。
「え、どうしてヨハネ先生がここにいるんですか? あ、もしかして!」
尋ねていて気が付いたのか、恵瑠えるは途端に得意気になり腕を組んだ。
「ふふん、ボク分かっちゃいましたよ~。名探偵栗見くりみ恵瑠えるの推理はズバリ!」
「ヨハネ先生も犯人を追って來たんですか?」
「加豪かごうさん!?」
しかし先に答えを言われ「う~」と俯く。
「はい。お三方の會話は聞こえていました。私も出ようかと思ったのですがタイミングを逃してしまいまして」
ははは、と苦笑する。しかしすぐにいつもの笑顔に切り替わった。らかい表だが気配から真剣な様子が分かる。
「こうなっては仕方がありません。生徒を巻き込むのは不本意ですが、このまま全員で探しましょう。警戒してください、ここには宮司みやじさんを狙う犯人がいるはずです」
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ヨハネからの言葉に恵瑠えるは顔にやる気をれる。加豪かごうは辺りを見渡し、天和てんほはヨハネをじっと見つめていた。
「とりあえず扉は閉めておきましょう。逃げられては厄介ですので」
ヨハネは三人の間を通り扉へと歩いていく。らかな聲は溫かく、いつもの笑顔は張を軽くしてくれる。
だが、ヨハネが通り過ぎた後で加豪かごうがハッとを震わし、急いで背後に振り返った。
「待って! 扉は――」
ガチャリ。扉が閉められ、ヨハネによって鍵がかけられる。鍵の取っ手を回すが、ヨハネはつまんだ取っ手をへし折った。
「しまった、閉じ込められた!?」
「え? え!? どういうことですか!?」
「…………」
加豪かごうが焦りをわにする。恵瑠えるは理解が及んでいないようで驚きながら二人を互に見遣っている。天和てんほだけが平靜へいせいを貫いているが、ヨハネを見る目に棘を生やしていた。
加豪かごうが前に出る。ヨハネを見る瞳は親な教師を見る目つきではなく、警戒と不安の眼差しだった。
「ヨハネ先生、質問があります」
「はい、なんでしょう」
不安を気丈にも隠して加豪かごうは問う。対してヨハネは余裕と溫厚おんこうな態度で返事をした。そこに揺は見られず笑顔にはもない。
しかし、だからこそその笑顔が恐ろしいと、加豪かごうは睨みつけ、ヨハネに核心かくしんを突き付けた。
「何故、神かみあを殺そうとしたんですか?」
加豪かごうの問いに恵瑠えるが聲を上げる。驚いた顔を向けてくるが加豪かごうは無視して話を進めた。
「普段からヨハネ先生のことは見ています。今のあなたは左に重心がしずれている。それに上手く隠していますが、左腰にわずかな膨らみがあります。おそらく警棒の類を攜帯しているのでしょう。私たちは犯人を追ってここまで來ました。私が言えたことではないですが、それでもヨハネ先生がここにいるというのはやはり不自然です。犯人の手掛かりである赤の腕章も犯人にしては軽率けいそつ過ぎます。むしろ導の可能が考えられる。あのまま私たちが気づかなければ神(かみあ)を叩き、気絶させた後別の場所で殺害に及ぶ予定だった。そんなところですか?」
「はい、その通りです」
返事によどみはない。潔いさぎよいと表現するのも抵抗があるほど、ヨハネはあっさりと認めてしまった。
「いやー、參りましたね。加豪かごうさんと、おそらく天和てんほさんもですか。どうやらバレてしまったようですね。生徒の優秀さを喜ぶべきか、教師としての信用のなさを嘆くべきか迷います。ちなみに天和てんほさんの拠を伺っても?」
「なんとなく。目が噓を言っていたから」
「ははは……、完敗かんぱいですね」
ヨハネは笑顔を崩すことなく頭を掻いている。腰のらかさはいつもの彼で、何度も殺害に及び、さらにその事実がバレてしまった男とは思えない。
「どうしてですか、ヨハネ先生……?」
反対に恵瑠えるは怯えと言葉では表せないほどの疑問を顔に出していた。小さなに両手を重ねている。恵瑠えるだけでなく、皆が知るヨハネとはまったく違う行、その容に恐怖をありありと滲ませていた。
「栗見くりみさん。心優しいあなたには酷でしょうが、事実です。それは認めます」
ヨハネは姿勢を正し、教壇に立っているように背筋をばした。和にゅうわな笑顔で生徒の質問に応じる姿は教師として堂にった佇まいだ。それだけに、続く言葉は凄慘せいさんだった。
「ですが、この場で理由を話す必要はありません。それに、知られた以上は……。この先は言わなくても分かりますね?」
「本気ですかヨハネ先生!?」
すかさず加豪かごうが聲を荒げる。理由が分からない兇行きょうこうに戸い、疑問が口から飛び出した。正気を疑うなという方が無理な話。それだけヨハネの行は理解の範疇を超えている。
「ふ、ふふ」
「?」
聞こえてきた笑い聲に加豪かごうと恵瑠えるのが強張った。加豪かごうの必死な質問に、答えたのは毒のような笑い聲だった。
「本気? 本気かですと? この私に? 生徒を殺そうとし、今も三人の教え子を手にかけようとしていて? 冗談ではない」
そう言うと、仮面のようにヨハネから笑顔がなくなった。表れた素顔は能面のうめんのようだが、一點、いつもは細められている彼の両目が開かれた。そこから覗く蛇のような眼が、真っ直ぐな狂気を孕はらんでいた。
「本気ですよ、私はね」
「まさか、……狂信化きょうしんかしてる?」
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