《天下界の無信仰者(イレギュラー)》ミカエル

明るく、しかしどこか嫌味な口調が部屋に広がった。

瞬間、

「げ」

恵瑠えるは落ち込み、

ラファエルは額に手を當て、

ガブリエルは目を閉じた。

いったいなんだ?

俺は振り返りってきた人を見る。

ってきたのは金髪の二十代半ば頃の男だった。それに形だ。一目見ただけでそう思わせる。黃金の髪は輝き背は高い。

 白のロングコートが様になっている。モデルでも違和がないほどだ。

男は愉快そうな表で、笑顔のままテーブルの奧へと歩いていく。

「今日は記念すべき日だ。私たちがこうして一堂に會すなどそうそうあるものじゃない。だろう? まあ、殘念なことに私は會いたいと思ったことは一度もないがね」

ん? なんか今へんなこと言わなかったか?

なんだか見た目に反して引っ掛かる言いだ。最後の一言いるか?

男はテーブルの一番奧の席に座った。足を組み人を馬鹿にしたような笑みを浮かべていた。

「お久しぶり諸君、忙しい中わざわざ來るほどには暇な君たちと再會できて、嬉しいよ?」

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なんだこいつぅうう!

見た目はきれいだが中最悪じゃねえか!

俺はこの男が誰だか分かった。恵瑠えるたちの反応を見て分かる。

この男が神長ミカエルだ。間違いない。こんなん一発で嫌われるわ!

「なあ恵瑠える、まさかと思うが」

「はい」

隣の恵瑠えるに念のため聞いてみるが、見るからに嫌そうな顔をしていた。

「彼が神長ミカエル。全省庁のトップ、ここにいる誰よりも偉い人です」

やっぱりか。てかマジか!?

まだ會って十秒も経っていないのに恵瑠えるはげっそりだ、三日も下痢みたいな顔してる。

「まったく、相変わらずねあなたは」

再會早々嫌味を言ってくるミカエルにラファエルは顔をしかめながら反撃する。

「いや~、君は相変わらずきれいだねぇラファエル。その黒い髪と腹を見ると君だとすぐに分かるよ」

「ふっふっふ、言ってくれるわね……!」

ラファエルは悔しそうに眉を曲げている。

「止めろミカエル、いたずらに場をすな」

「これは申し訳ないガブリエル。私は正直だからさ、真実に傷ついてしまったのなら謝るよ、殘念だったねえ?」

「くだらん」

ガブリエルは席をミカエルに背を向ける形で整えた。

「止めてくださいよミカエル、二人とも嫌がっているじゃないですか!」

「ああ、君か」

すると恵瑠えるが注意したことによりミカエルが恵瑠えるを見てきた。その目が冷たく見下ろしている。

「殘念だけど今は神長ミカエルなんだよ。ただの學生でしかない君とは地位が違うんだ、馴れ馴れしいぞ。それかそんなことすら君には分からないのかな。まったく殘念殘念」

「フンだ! そんなのボクには関係ないもんね! どうだ、まいったか!」

「ああ、降參降參。君の殘念合にはお手上げだよ、ハッハッハッハッ!」

うぜえ。見てるだけでうざいぞこいつ!

「君は相変わらず殘念だねえ。それに部外者も一緒とは。これは殘念な君の殘念な判斷かい?」

するとミカエルが俺たちに視線を向けてきた。その目に構えてしまう。

「ボクの友達です。助けてくれたんです」

「ほお」

恵瑠えるがはっきりと、俺たちを庇うようにそう言ってくれた。それでミカエルも聲をらす。

「なるほど、殘念なことに巻き込まれたと。しかし本人も殘念だろうが私だって殘念だ。なにが悲しくてどこの馬の骨とも知れない者たちと同じ場所にいなければならないんだ」

こ、い、つ!

「おい、さっきから黙って聞いてればなに言いたい放題言ってんだお前」

「主、落ち著いてくださいッ」

「神駄目よ」

「うるせえ、なんで初対面でこんなこと言われなきゃならないんだ!」

俺を宥めてくるミルフィアと加豪かごうを無視してミカエルにぶ。そりゃこいつは慈連立じあいれんりつの神長という立場だろうさ。だからってなんでもかんでも許されるってわけじゃねえぞ!

「おやおや仲間割れかい? 殘念殘念」

「誰のせいだ!」

お前のせいだろうが! 偉い役職だからっていい加減にしろよ!

「お前が神長だろうが恵瑠えるが學生だろうが同じ人間だろうが。てか、お前慈連立じあいれんりつなのになんだその言い方は!? お前ほんとに神長!?」

「おいおい、なんだ今の一言? お前ほんとに神長、だって? さっきからそう言っているのに理解できないとか、殘念殘念」

「理解できるわ! その上で言ったんだよ!」

「理解できてるのに質問してくるとか殘念な頭だねえ」

「んだとゴラァアアアア!」

「落ち著いてください主!」

「駄目よ神抑えて! 毆ったら國際問題よ!」

「知るか、放せ! こいつを毆らせろぉおおお!」

毆りに行こうとする俺をミルフィアと加豪かごうが後ろから抱きつき止めてきた。

「まったく、理解できているならまずは尊敬してもらおうか。でも殘念な君には無理だったかな?」

「くそおおおおおお!」

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