《天下界の無信仰者(イレギュラー)》寢室
俺は風呂から帰るなり愚癡をこぼしていた。
「はあ~、んだよクソー」
割り振られた自分の部屋へとる。ベッドやら機が置かれた一人用の部屋でまるでホテルのようだ。
 こうした部屋がたくさんあるのか一人一室用意されている。俺は風呂で溫まったをベッドに倒し仰向けになった。
「俺は間違いなく青春を無駄にしている。大人になってからの見ても仕方がないんだよ。思春期に見るからこそ意味があるんじゃねえのかよ」
せめて聲くらい聞かせてくれよ。ワクワクがモンモンとしてる。なんかモンモンとしてるぅう!
「はあ……、寢よう。ふて寢だふて寢、このまま起きていてもいいことないんだし。夢見ないかな~、現実では葉わなかった夢見ないかな~」
俺は電気を消して橫になる。
すると扉をノックする音が響いた。ん? 誰だろうか。起き上がり扉を開けてやる。
と、そこにいたのはミルフィアだった。支給品の寢間著姿をしている。
「ミルフィア?」
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「すみません、すでにおやすみでしたか?」
「いいや、気にすんな。れよ、今電気付けるからさ」
「いいえ、このままで。今日は月のがきれいです」
そう言いながらミルフィアは窓際に寄っていくとカーテンを開いた。ミルフィアの言う通り今日は月がきれいだ。満月のが部屋に差し込む。
 月はベッドにまで屆き、そこに座る俺とミルフィアを照らした。
「どうしたんだよ急に」
「いえ、その」
ベッドの縁に座り隣を見ればミルフィアが「失禮します」と言って座っている。暗がりの部屋に差し込む月のが彼を淡く照らしていた。
ミルフィアはきれいだ。それが今では幻想的に見える。
ただ、ミルフィアの表は心配そうだった。
「主、恵瑠えるの護衛ごえいの件なのですが」
「それか」
ミルフィアの言い出したことにそういうことかと納得した。こいつが心配する気持ちは分かる。
「このこと自に私も反対するつもりはありません。ただ、敵はいつ、どこから攻めてくるか分かりません。また敵が教皇の正規軍であるならとても危険です」
「大丈夫だって。またヘリが飛んできてもミルフィアなら落とせるんだろ?」
なら敵なしだ。ミルフィアなら戦車だって素手で壊せるんじゃないか?
俺は楽観するが、それでもミルフィアの表は優れなかった。
「あれはまだ人の手で作られたものですからいいのですが、教皇軍には聖騎士と呼ばれる強力な信仰者がいます。もし彼らまでけばただは済みません」
「聖騎士っていうのはそんなに強いのか?」
ミルフィアより強い信仰者ってなかなか想像出來ないけどな。
「教皇に次ぐ実力者と言っていいでしょう。私でも勝てるかどうか」
「うーん」
ミルフィアがそこまでいうなら相當強いんだろう。そもそも三大勢力の一つ慈連立じあいれんりつの実力者っていうだけで強いに決まってる。
そんな相手と戦うかもしれないんだ。怪我じゃ済まないかもしれない。
「でも、やらなくちゃならない」
危険は承知だ、それでも俺は言い切った。
「相手が誰かとか、強い弱いなんて関係ない。恵瑠えるは俺を友達だと言ってくれた、無信仰者の俺をけれてくれた。救ってくれたんだ」
前までは無信仰というだけで誰からも嫌われていた俺を。一人っきりのあの場所から恵瑠えるは救ってくれたんだ。
「なら、俺は諦めない。絶対にあいつを助けてやる」
俺は力強くそう言った。
「そもそもだ、その教皇っていうのはどんなやつなんだ? 派閥はばつだかなんだか知らねえけどさ、それで無関係な恵瑠えるを襲うとか許さねえぞ」
「はい。まだ確定したわけではないみたいですが、しかし、おそらくそうでしょう。ただ、仮にそうだとしてもどうして教皇が恵瑠えるを狙うのか、それが分かりません」
ミルフィアは表を暗くした。まるで思い詰めているかのようなその顔は他人事には思えなかった。
「ミルフィアは知ってるのか、教皇のこと」
もしかしたらミルフィアも知っているのかと思い、俺は聞いてみた。
「エノク」
「エノク?」
ミルフィアは視線を下げたまま重苦しくそう言った。
「はい。教皇エノク。それが慈連立じあいれんりつの信仰者、その頂點に立つ人です。ゴルゴダ共和國で誰よりも信心深く、優しく、尊敬されている人です」
ミルフィアの聲は小さく表は寂しそうだ。なぜそんな顔をするのか俺には分からない。
「だけど、そいつが恵瑠えるを狙ってるんだろ? なら悪者じゃねえか」
「はい、そうなのですが…………」
俺の言葉にもミルフィアは浮かない顔をしている。
「恵瑠えるも言っていましたが」
その時、ミルフィアの目がさらに下がった。まるで昔を振り返っているように、意識がこことは別の場所にいった気がする。
それでミルフィアは呟いたんだ。
「なぜ、エノク。どうしてあなたが……」
あなた?
「ミルフィア、今……」
「え?」
ミルフィアが急いで振り返る。俺は詳しく聞こうかと思ったが、止めておいた。なんか掘り葉掘り聞くのが申し訳なくて。
 ミルフィアにもいろいろあるだろうし、話さないことを無理に聞こうとは思わなかった。
「どうして教皇が恵瑠えるを狙うのか、悩んでるみたいだな」
  話を変えてみる。
「はい……」
俺の質問に短く答える。その表はやっぱり寂しそうで、俺はどうすればいいのか考えてみた。
「なら直接聞いてみたらどうだ?」
「え?」
ミルフィアは驚いたように顔を上げ俺を見てきた。
「だろ?」
「それは、まあ、そうなのですが」
ミルフィアは戸っているが俺は頷いた。
「よし! ならその教皇のいるとこに直接乗り込むか。ぶん毆って恵瑠えるを襲う理由吐かせりゃいいだろ」
「いけません主! そもそもまだ教皇がしたという証拠はありませんし」
「まずは証拠か……」
うーん、俺は顎に手を當てて考えてみる。確かに教皇が犯人だと確定したわけではないし、いきなり毆り込むのは問題か。
「ならこうするか、それで教皇の尾を摑んでやるぜ!」
「と、言いますと?」
俺は立ち上がる。ミルフィアは座ったまま俺を見上げており、そんなミルフィアに俺は振り向いた。
「俺にいい作戦がある」
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