《天下界の無信仰者(イレギュラー)》決意
「分かったか年。その娘はあまりにも危険だ、二千年前の悲劇をまた起こすわけにはいかん」
ペトロが一歩前に出た。著込んだ鎧が金屬音を立てる。
「その娘を渡せ。でなくば、実力で排除する」
まるで刃のような鋭い聲でペトロは言ってきた。
恵瑠えるの正、それが天羽てんはだというのは知っていた。大昔に人々を襲ったのも知っていた。
「…………」
俺は無言のまま恵瑠えるを見つめる。
するとペトロの背後にいる騎士の一人が前に出てきた。青年くらいのまだ若いやつだ。
「おいガキ、さっさとそいつを渡せって言ってんだよ。さもないと痛い目みるぜ」
騎士というにはガラの悪い奴だった。暴な口調で歩いてくる。
「下がっていろ」
「でもですよ隊長、このまま長引くのはまずいじゃないですか。また誰かに妨害されるかもしれませんよ。ねえ?」
そいつはペトロの注意を無視するとずかずかと進み俺たちの目の前にまで來た。俺よりもし背が高く、見下ろしてくると嫌そうな顔で言ってきた。
Advertisement
「そもそもだ、なんでこんなやつ庇うんだ? こんなやついない方がマシだろうが」
「んだと?」
俺は睨むが男は止まらなかった。
「だってそうだろうが。當時の史料しりょうじゃそいつのせいで五つの街が灰にされたんだぞ? そんな化けが今でも生きてる。いいか? こいつは人間の敵なんだよ!」
男は怒鳴ると俺から恵瑠えるに視線を変える。その態度と言葉に恵瑠えるは震えていた。
「ボ、ボクはただ……」
恵瑠えるは明らかに怖がっている。なのに男は止まらない。
「そいつのせいで周りが危険に曬される。邪魔なんだよ鬱陶しい」
「ボクは……」
恵瑠えるは目を瞑りスカートを両手で握っていた。表は辛そうで、今にも泣きそうだった。
「そうだろうが。なにが違う? 自分でも分かってるはずだ、自分はいない方がいいって」
それでも、男は続ける。
「消えろよ。お前の居場所なんてどこにもないんだよ!」
男がぶ。
それは恵瑠えるを非難ひなんする言葉だった。
それは恵瑠えるを苦しめる言葉だった。
恵瑠えるはついに泣き出した。
「う、うう」
辛そうに、泣いていた。
恵瑠えるは昔許されないことをしてしまった。だけど今ではそれを悔いていて、人間と仲良くしたいと本當に思っていたのに。
だけど、お前なんか邪魔だと言われて。
お前の居場所なんかないと言われて。
目の前にいるのは自分を非難する慈連立じあいれんりつの敵だけ。
味方はいない。
「おい」
だけど、ここにいる。
俺がいる。
「お前、今なんて言った?」
「なに?」
たとえ慈連立じあいれんりつに味方がいなくても。
俺が、こいつの味方になってやる!
俺は男を見上げていた。そして、気づく前から話していた。
「居場所がないだと?」
靜かだけど、では怒りが渦巻いていた。
恵瑠えるの苦しみが俺には痛いほど分かる。
誰からも非難ひなんされ、誰からも嫌われて。
誰も助けてくれない。
そんな辛さを俺も知っているから!
「てめえがこいつのなにを知ってるッ」
俺は、男を睨み上げた。
怒りが発した。
俺の友達を、傷つけたからだ!
「いいか!? こいつはな、俺に居場所をくれただ! 人を傷つけるお前なんかと違って誰もが見て見ぬフリするようなやつだって助けられる最高の信仰者だ! 昔のことだって一番反省してる。誰とも仲良くなりたいって思ってる!」
「神君……」
「こいつに居場所がないって言うならな」
俺はぶ。そんな俺を恵瑠えるが見上げていた。
俺は言い切る。心の底から湧き上がる思いがぶ。
「俺がいつだってこいつの居場所になってやる!」
いつも一人で居場所がなかった俺と、こいつは友達になってくれたから。
救われたんだ。
どんなに謝しても足りないくらいに。
なら、今度は俺が助けてみせる。
「なに? お前自分がなにを言ってるのか分かってんのか? そんな小娘一人守るために、ここにいる全員と戦うつもりか? いいや、お前は、慈連立じあいれんりつすべてを敵に回すことになるんだぞ!」
男が怒鳴ってくる。俺の言葉がどれだけ愚かか言ってくる。
こちらに味方はおらず敵は複數。おまけに聖騎士までいる。多勢に無勢どころじゃない。それに、ここでなんとか切り抜けても終わりじゃない。
天下界の三大勢力、慈連立じあいれんりつを敵にすることになる。勝てる勝てないの話じゃない。規模が違い過ぎる。ただの學生一人がどうこうなる勝負じゃない。
だけど。
「ああ、いいぜ」
「なんだって?」
俺は言った。
【書籍化】世界で唯一の魔法使いは、宮廷錬金術師として幸せになります ※本當の力は秘密です!
魔法がなくなったと思われている世界で、唯一、力を受け継いでいるスウィントン魔法伯家の令嬢・フィオナ。一年前、友人だったはずの男爵令嬢に嵌められて婚約破棄されたことをきっかけに引きこもっていたけれど、ひょんなことから王宮に勤めに出されることに。 そこでフィオナに興味を持ったのは王太子・レイナルドだった。「あれ、きみが使えるのって錬金術じゃなくて魔法…?」「い、いいいえ錬金術です!」「その聲、聞いたことがある気がするんだけど」「き、きききき気のせいです(聲も変えなきゃ……!)」 秘めた力を知られたくない令嬢と、彼女に興味津々な王太子殿下の、研究とお仕事と戀のお話。
8 127【書籍化決定】婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。
アメリアには、婚約者がいた。 彼は、侯爵家の次男で、貴重な「土魔法」の遣い手だった。 婚約者とは良好な関係を築けていたと思っていたのに、一歳年上の彼が王立魔法學園に入學してから、連絡が途絶える。 不安に思うが、來年には自分も入學する。そのときに話し合えばいい。 そう思っていたのに、一年遅れて入學したアメリアを待っていたのは、周囲からの冷たい視線。 婚約者も理由をつけて、アメリアと會おうとしない。 孤立し、不安に思うアメリアに手を差し伸べてくれたのは、第四王子のサルジュだった。 【書籍化決定しました!】 アルファポリスで連載していた短編「婚約者が浮気相手と駆け落ちしたそうです。戻りたいようですが、今更無理ですよ?」(現在非公開)を長編用に改稿しました。 ※タイトル変更しました。カクヨム、アルファポリスにも掲載中。
8 50え、社內システム全てワンオペしている私を解雇ですか?【書籍化・コミカライズ】
とあるコスプレSEの物語。 @2020-11-29 ヒューマンドラマ四半期1位 @2020-12-23 ヒューマンドラマ年間1位 @2021-05-07 書籍1巻発売 @2021-05-13 Kin◯leライトノベル1位 @2021-07-24 ピッ○マ、ノベル、ドラマ1位 @2022-03-28 海外デビュー @2022-08-05 書籍2巻発売(予定) @編集者の聲「明日がちょっとだけ笑顔になれるお話です」 ※カクヨムにも投稿しています ※書籍化&コミカライズ。ワンオペ解雇で検索! ※2巻出ます。とても大幅に改稿されます。 ※書籍にする際ほぼ書き直した話數のサブタイトルに【WEB版】と付けました。
8 124【書籍化&コミカライズ】私が大聖女ですが、本當に追い出しても後悔しませんか? 姉に全てを奪われたので第二の人生は隣國の王子と幸せになります(原題『追放された聖女は、捨てられた森で訳アリ美青年を拾う~』
☆2022/11/4 スターツ出版様 ベリーズファンタジーより発売予定です☆ 改題「私が大聖女ですが、本當に追い出しても後悔しませんか? 姉に全てを奪われたので第二の人生は隣國の王子と幸せになります」 ☆2022/6/12 白泉社マンガpark様にてコミカライズです☆ 原題「聖女は、捨てられた森で訳アリ美青年を拾う~今の生活が楽しいので、迎えに來られても帰りたくありません!~」でコミカライズ中です。 リアは九歳のとき、十二歳になる姉プリシラについて神殿に行く。そこで、姉妹ともども聖女と認定されてしまう。 この國ではひと家庭で二人以上聖女認定された場合、一人を差し出さなければならない。両親は聡明で美しく魔法を使えるプリシラを手放すのが嫌で、迷わず妹のリアを差し出した。 神殿に召し上げられたリアは聖女候補として厳しい修行を積み、六年後晴れて聖女となる。神殿の聖女の中でも、最も強い神聖力をもつリアは、神託により王太子の婚約者となった。 リアは金髪で美しく優しい王太子に淡い戀心を抱く。しかし、順風満帆に見えた將來に陰りが生じはじめた。 アリエデ王國の最北にある黒の森で魔物が大量発生したのだ。リアはこの國の聖女として討伐隊に參加しなければならない。王都と愛しい王太子に別れを告げ討伐隊とともに旅立った。 そして二年にわたる戦いののち、魔物の封印をなしとげ、王都に凱旋するはずだった。 だが王都に帰ったリアを待ち受けていたのは同僚聖女と戦友のうらぎり。 王太子との婚約もいつの間にか破棄されていて、新たに姉のプリシラが護國聖女の名を冠し、王太子の婚約者におさまっていた。 魔物討伐を長引かせた責をおわされ、役立たずの聖女として國を追放されたリアは、西側の隣國との緩衝地帯である惑い森へ捨てられる。そこにたくさんの魔物が巣食っていて……。 森をさまよううちに彼女は、魔獣に襲われた瀕死の金髪美青年を拾う。 ≪全51話予約投稿済み! 毎日18時ごろ更新予定≫ 流行りの追放聖女テンプレのつもり。聖女は無自覚でざまぁ(予定)します。題そのものがあらすじです。足の不自由な人が出てきます。タグ注意、地雷のある方はお逃げください。 誤字脫字報告ありがとうございます!!
8 95こんなの望んでない!
仲違いしている谷中香織と中谷翔。香織は極度の腐女子でその中でも聲優syoの出ている作品が大好きだった。そのsyoは皆さんご察しの通り中谷であり中谷はこれを死んでもバレたくないのである。
8 133天使と悪魔と死神と。
杏樹(あんじゅ)は小さな頃から孤児院で育った。孤児院の日々はつまらない。どうにか抜け出したいと思っていたある日、孤児院のブザーがなって……
8 125