《天下界の無信仰者(イレギュラー)》戦闘
「てめえら三大勢力の慈連立じあいれんりつだがなんだか知らねえよ」
敵は慈連立じあいれんりつの教皇派。
でもそんなの関係ねえ。
覚悟ならすでにある。
こいつを救うって、決めたんだ!
「俺は絶対に諦めねえ」
その時だった。
恵瑠えるを守ると決めて、戦い抜くと決意した。
その思いと覚悟が――黃金となって燃え上がる。
俺の左腕には學校の規則で腕章が付けられている。そこには黃のダイヤが描かれている。
それが、黃金に燃え上がった。
「まさか!?」
それで気づいたのか男が驚いた。
「その制服と腕章は神律しんりつ學園。それに黃のダイヤってことは……」
男は震撼している。この場に起こる異常に。
周りも驚愕している。その中で俺は靜かに連中を睨む。
「てめえは俺のダチを馬鹿にした。俺はそいつを許さねえ」
目の前で拳を握る。それで、俺の全から黃金のオーラが発せられた。
「貴様、無信仰者イレギュラー!?」
男は下がる。鞘から剣を抜き俺に向けてきた。
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「正気か貴様!? お前が相手にしようとしているのは慈連立じあいれんりつだぞ? お前は國一つ丸ごと相手にするつもりか!?」
「何度も言わせんな、こいつを守るって言ってんだよ! 慈連立じあいれんりつが敵でも、俺がこいつの味方になってやる!」
焦ったように男は言う。だが、何度聞かれようが俺の答えは変わらない。
「こいよ信仰者、神様に泣き付く用意はいいか?」
相手が誰かなんて関係ない。もともと世界すべてが敵だったんだ。
敵しかいない世界。
そんな中で俺を救ってくれたやつのためなら、俺は世界だって敵にしてやる。
俺は友達を絶対に見捨てない。
見せてやるぜ!
俺の、全力を。
「至高の信仰。それは神と出會うことである」
俺は詠唱を開始する。途端この場に異変が現れた。
それは神と奇跡の現。
立ち上がる黃金の火柱。
「信じることはない。ただじよ、神はここにいる」
漂うのは金の風。
「神は聖者と愚者の區別なく、し汝らを率いらん」
この場を覆う、黃金の空間。
「原初の創造が汝を導く。謳え、黃金の威を!」
完する、第四の力――
「王金調律おうごんちょうりつ!」
俺のびに呼応こおうして、周囲の黃金の粒子が発した。
その後に殘るのは、黃金に包まれた俺だった。
天下界には三大勢力と呼ばれる三つの神理しんりがある。慈連立じあいれんりつ。琢磨追求たくまついきゅう。無我無心むがむしん。この世界の住人は誰しもがいずれかの神理しんりを信仰している。
だけど、一つの例外イレギュラーが存在した。
それが、第四の神理しんり、王金調律おうごんちょうりつ。その輝きは俺を際限なく強化していく。強度が、度が、速度が、無限に上がっていく。
「王金調律おうごんちょうりつ……。これが、第四の神理しんり……」
俺を覆う黃金のオーラに気圧されているのか男の表が引きつっている。
「ハ、ハハ。第四の神理しんり? だからどうした、ただ珍しいってだけじゃねえか。調子に乗ってんじゃねえぞガキ!」
そう言うと男は剣を振り上げ突撃してきた。そのまま俺に剣を振り下ろす。
だが、その剣が俺に屆くことはなかった。
「なに!?」
男が驚く。
男が俺に攻撃しようと黃金のオーラにれた瞬間、オーラが男の腕と剣を覆ったのだ。そのままきを封じている。
王金調律おうごんちょうりつの教えは自分がされて嬉しいことは相手にもする、自分がされて嫌なことは相手にもするな。それは強化と妨害の二つの能力となっていた。
今は妨害の能力が、男の攻撃を止めていたのだ。
その隙に俺は男を毆り飛ばす。強化された拳によって男は地面に倒れた。
「クソ! どういうことだ、二重屬の神理しんりなんて聞いてねえぞ」
男はすぐさま起き上がる。
「おい、奴は一人だ。いくぞ!」
男は仲間に聲をかけ、今まで見ているだけだった騎士たちも剣を抜き突撃してきた。地上を走り、もしくは地面を蹴って上空から剣を振り下ろしてくる。
その數、十二。
だけど。
「てめえらじゃ」
俺は腕を橫に一閃する。黃金のオーラを湛たたえた右腕が大気をうねらせる。その力は極大きょくだいの神化しんか、理すら捻じ曲げる神の業だ。
「相手にならねえよ!」
この一撃で、世界が震えた。
「があああああああ!」「ぐああああ!」「うわああああ!」
腕を振るった風圧は十二の騎士を吹き飛ばした。地上から來た者は弾かれ建の壁に衝突し、上空から來た騎士はさらに上空まで吹き飛ばされた後地面に落下した。突撃してきた連中は全員地面に倒れていた。
「ば、かな……」
さきほどの男が立ち上がろうとしていたが力盡きたのかガクンと倒れる。
一撃。強化された攻撃で騎士は全員地に伏せている。
ここで立っているのは俺と俺の背後に控えている恵瑠える。
そして、一人だけ突撃しなかったペトロだけだった。
「なるほど、強い。ただの蠻勇ばんゆうではなさそうだ」
ペトロが初めて剣を抜く。ゆっくりと鞘から剣を抜き、戦意を充満させた姿勢で俺を見據えていた。
「こうなっては仕方がない。これ以上長引かせるわけにもいかん」
そのままペトロは構えた。さっきまでの連中とは格が違う。見ただけで分かる。この男が放つ威圧はさっきの騎士たちを束にしても及ばない。
こいつは強い、それをでじる。
「一撃だ。それで駄目なら勢を整えよう」
瞬間、この場の空気が変わった。なんだ? 瞬時にして一帯は神聖な空気に包まれた。空気だけ教會か聖堂に移したみたいだ。
ペトロからも今まで以上の闘志をじる。その強大なオーラに奴の足場が震えている。これは、まさか?
「こい、神託しんたくぶつ」
直後、ペトロの背後でが集まった。大きい。聖なる神気は人の形をしていき、集いし神威はが弾けると共に姿を現した。
零れた羽が、宙に散らばった。
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