《天下界の無信仰者(イレギュラー)》真実を見せる

それはそれで気になるが、エリヤは他に気になっていることを聞いた。

「それは、二柱戦爭か?」

ラグエルは神ができてすぐの頃と言った。それで正義と正義のぶつかり合いといったら二柱戦爭しかない。慈連立と琢磨追求が爭った至上最大の戦爭。実際に見た訳じゃないが書によれば壯絶な戦いが繰り広げられたとか。そんな爭いに巻き込まれたら心に消えない傷を負っても不思議じゃない。

しかし、二柱戦爭の開始は二千年前、終戦間際でも千五百年前の話だ。にわかには信じられない。

だというのに、ラグエルの答えはエリヤの疑問をさらに飛び越えてきた。

「いや、それよりも前。天界紛爭だ」

「は? 天界紛爭?」

一瞬、エリヤには理解できなかった。天界紛爭は二千年以上も前の戦いだ。それも文獻に殘るだけで的証拠は殘っていない。そのため現代ではおとぎ話のような扱いだってけることもある。それくらい風化した話なのだ。

なぜそんな昔の話をする? まさか天界紛爭が実在し、今回の件と関わっているとか? ファニー。二千年以上前のことだ。あり得ない。

なのだが、ラグエルの突飛な話は止まらなかった。

「遠回しな言い方になったが、お前には真実を教えよう。ウリエル、彼は天羽だ」

「はあ? 天羽?」

今度こそ、今回ばかりはさすがにエリヤも驚いた。というか、信じられなかった。椅子から立ち上がりラグエルに近づく。

「あの二千年前に現れたっていう? おいおい、そんなのいるわけないだろ」

「そして私もだ」

「ワオ!」

ビックリ!

「お前は俺に教えに來たのか笑わせに來たのかどっちなんだ」

「本當だ」

「俺は今この瞬間神の偉大さを知ったね。お前みたいな堅にも笑いのセンスを與えるとは恐れったぜ」

「ふぅ」

これは冗談だ。誰が道で出會ったが天羽でおまけに顔見知りまで天羽だと思うのか。

エリヤははいはいとラグエルの下手なジョークを笑うがラグエルはやれやれと困苦こんくの面もちだった。

「言ったところで信じないだろうことは分かっていた」

どうやら冗談だと認める気はないらしい。

そこで気になったので聞いてみた。

「もし信じてたら?」

「それはそれで軽率だと指摘しただろう」

「ムカつくが尤もだな」

理不盡だ。

だが、それだけラグエルも自分の言っていることが現実離れしている自覚があるのだろう。エリヤの態度を叱ることはなかったが、表は真剣に言ってきた。

「だが分かってしい。これは重大なことだ」

「重大なことってお前なあ」

が、なんど言われても信じられない。

「昔から知ってる仕事のつれが、私は大昔にいた伝説的な存在なんですって深刻な顔して言ってきたんだぞ? これ以上に重要なことがあるなら教えてしいわ」

「なら教えよう」

「なに?」

自分でも分かるほど素っ頓狂な聲が出る。エリヤは慌ててラグエルの顔を見る。

「真実を見せる」

「真実?」

なんのこっちゃ。エリヤはまったく話についていけていない。

瞬間、雰囲気が変わった。

「!」

別段、なにかが変わったというわけではない。教會は依然と靜寂を保ち、すきま風は穏やかで、った空気にやや冷えた溫度にも変化はない。

だが、ある。明らかに変わった。

エリヤの前に立つ、ラグエルの存在がすさまじく上がっていた。目を閉じていてもじられるほどに、明らかにそこになにかいると、斷言できるほどの存在の固まり。

直後、エリヤは息を飲んだ。

ラグエルの背中から、純白の羽が広がったのだ。二つの翼が教會に広がった。羽の一つ一つが沢を持ち、羽そのものが輝いている。それは羽ではあるが、質的な自然界にあるものとはまったく別のものだった。むしろ霊的なものが形作ったもの。でなければこれほどの存在は出ない。

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