《天下界の無信仰者(イレギュラー)》ありがとう、エリヤ
「……お前の言うとおり、お前を利用しようとしていただけだったな」
ラグエルは自分を卑怯な男というが本當は誠実で実直な男だ。そんな男が生涯でおそらく初めて自分の真っ直ぐさに迷っている。
そして、自分の非禮を認めた。
「すまなかった。お前しか、頼れる相手がいなかったんだ、エリヤ。……すまなかった」
諦めきれないが、けれるしかない。他人に責任を負わせるなんて卑劣な行為をできるほどラグエルもわがままにはなれない。
エリヤに謝ると彼の橫を通り過ぎていく。教會の扉へと向かって歩き出していった。
「待てよ」
その背中をエリヤの聲が呼び止めた。
「そんな顔すんな」
「なに」
ラグエルが振り返る。エリヤは腕を組んでいたが、その表は言い過ぎた、と困っているような、渋い顔つきだった。
「意地の悪いこと言って悪かったな。お前の格は知ってるって」
エリヤの謝罪が聞こえる。エリヤは腕を解くと一回肩をすくめた。
「こんな背信行為、法律が服著たようなお前がよく言ったよ。それだけ、お前もあいつのことが心配だったんだろ?」
「…………」
エリヤからの言葉をラグエルは黙ってけ止める。それはそうだ。ラグエルにとってもウリエルとは特別な天羽だ。だが、その気持ちは褒められるものではない。天羽の裏切りでもあるし、それだけでなく他人をも巻き込む。自分はなにもせず人任せという醜悪ぶりだ。
それはエリヤに指摘されるまでもなくラグエルだって分かっていた。自分のしていることが醜いことだと。それが分かっていたからあそこまで口にするのが躊躇われた。
なのになぜ言ったのか。これがそこらの者ならラグエルも決して口にしなかった。
すなわち、エリヤだったから相談したのだ。
他の誰が駄目だとしても。
この男、エリヤなら。
彼なら、もしかしたら助けてくれるのではないか。
強く、大きく。なにより。自分の信念に誰よりも真っ直ぐな男。
この、エリヤという優しい騎士なら。
だからラグエルは言っていた。
そして、エリヤも言うのだ。
「教えてくれてありがとな、ラグエル」
彼の思いに、答えるように。
「お前…………」
エリヤはラグエルの肩をぽんぽんと叩くと扉へと歩き出していった。彼の大きな背中が遠ざかっていく。
「行くのか?」
まさか。そんな思いがラグエルのに広がっていく。
まさか、助けに行くのか? こんな勝手な願いを聞きれて、危険しかないというのに、一人で行くのか?
自分で頼んでおいて、にわかには信じられない。
「お前なあ、俺を誰だと思ってる」
ラグエルは困するが、エリヤからかけられた言葉は、そんな不安をかき消した。
「教皇軍聖騎士隊、十三位、最強のエリヤ様だぜ?」
振り返ってラグエルを見る橫顔。そこに映るのは自信に満ちたいつものエリヤだった。人を助けるためにいつも無茶をする不良騎士。
そんな普段と同じエリヤに、ラグエルも張っていた肩を下ろした。
「元、だろ」
「言うんじゃねえよ」
かろうじて言えた冗談にエリヤもくだけた調子で答える。
「エリヤ」
「ん?」
気づけばラグエルは彼の名前を呼んでいた。言わずにはいられない。
「謝を言わせてくれ。私は」
これほど勝手な願いを聞きれてくれるのはエリヤしかいないだろう。心の底から謝している。いくら言っても言い足りない。
「いらねえよ」
だが。その言葉は斷られてしまった。
なぜ? と思ったが、その答えはすぐに分かった。
エリヤが振り返りラグエルを見る。
その顔は、笑っていた。
「謝されたくて人を救ったことなんて、一度もねえよ」
(…………)
その笑顔に、その言葉に、なにも言えなかった。
損得もない。打算もない。
ただ明るく。ただ大きく。すべてを包み込むようなその溫かさ。落とした小銭を拾ってあげるくらいの気軽さで。
この男はいつだって、どんな人助けだってしてきたのだ。
「じゃあな」
そう言ってエリヤは出て行った。本當にラグエルからお禮の言葉をもらうことなく、自分がすべき道へと歩んでいった。その背中が消えてからもラグエルはその場に立ち続け、彼の姿を思い描いていた。
「ありがとう、エリヤ」
當然その言葉は彼には屆かない。けれど言わずにはいられなかったから。
彼の聲は靜寂な空気に溶けていく。人から忘れられた教會のように誰の耳にも殘らない。
しかしラグエルだけはその思いを噛みしめていた。
決して消さない。忘れない。
エリヤという男がいたことを。
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