《天下界の無信仰者(イレギュラー)》あとは、お前が許すかどうかだ
だがそれもしばらくすると治まり再び真剣な顔でウリエルを見つめてきた。
「ウリエル、だから生きろ。許されないなんて、言い訳すんな。自分の気持ちを偽って、勝手に死ぬんじゃねえよ。恨むぞ、一生許さねえからな」
懇願するような、同時に恫喝するような、そんな複雑な瞳だった。
「エリヤ、でも」
「お前は、生きてもいい。許されてるんだよ……!」
エリヤの手がびる。ウリエルも手をばせば、それは屆く距離にあった。
「あとは、お前が許すかどうかだ」
「私が?」
差し出される手をじっと見つめる。大きな手。その手が自分を待っている。
「もう、いい加減許してやれ」
優しい聲に促され、ウリエルのにあった思いが溶けていく。
許すかどうかは、自分次第。
終わりのない、終わりの見えない、長い旅路。その終點が、この手の上に乗っている。
その手を取るのは、他でもない自分自だ。躊躇いはあった。完全に罪の意識がなくなるなんてことはない。
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けれど、彼はエリヤの手を取った。
自分を許すと言ってくれた、この手を。
「行くぜ。急ぐからな」
「待て」
すぐにでも手を引こうとするエリヤを制し、ウリエルはクリームのカーテンを力づくで外した。それを頭からフードのようにして被る。
その後はエリヤが來た道を戻るだけだった。エリヤはこの場所を知しているのかその手際は見事でありウリエルは心していた。に隠れたと思ったら直後見張りが歩いていった時なんか驚きにエリヤの顔を見上げたほどだ。よくここまでできる。そもそも本來なら侵することすら難しいはずだが、エリヤはウリエルの手を引いて無事敷地の外まで連れ出していた。
「ふぅー」
「はぁはぁ」
そこでウリエルはまだ追手が來ていないことを確認してから聞いてみた。
「司法庁は昔から行く機會があってな、そのたびに逃げ出したり隠れてたりしたら自然と建の構造とか見張りの配置を覚えたんだよ」
その後サリエルとの追いかけっこは楽しかったなと笑っていた。
(ムチャクチャな男だな……)
留置所や刑務所とウリエルがいた建は離れているはずだが、かなり広範囲に及んで逃げ回っていたようだ。というか、あのサリエル相手に追われることを覚悟で出をする神経もすごい。ここまでくると稱賛したくなる。
そんなことを思いつつ、同時にウリエルの頬は緩んでいた。
こんな無茶なことをする男だからこそ、自分はこの手を取ったんだなと。
*
教皇宮殿の中庭の一角でエノクは剣を振っていた。ちょうど建に挾まれたこじんまりとした場所であり滅多に人が寄りつかない場所だ。そこでエノクは一人練習に勵んだ。
一人になりたい時、エノクはよくここに來る。特に心がれている時はじっとしているよりもをかす方がすっきりする。そのためエノクは朝からここで剣を振りもう四時間になるころだった。それでも目つきは真剣さを保ち疲れのは見えない。
剣を振る。単純な行の反復に神経を集中させていく。ふと気を許せば沸いてくる思いを叩き切る。
自分がエリヤと戦った後、ラグエル委員長と話したことが脳裏に過ぎる。エリヤがなぜ強いのかその理由が分かっていないと言われた。なにより、自分はエリヤに負かされた。自分はエリヤほど強くない。
今まで兄に追いつくために頑張ってきたのに。その兄はいい加減だし。その兄にすら追いつけない。
くそ。そう思いながら強めに剣を振った。直後またも心がれていると気づき調子を整える。
自分はけっきょく、なにをしたいのか。なにがしたいのか。この迷いのような、苛立たしさの原因はなんなのか。
それは――。
エノクは一心不に剣を振りかぶっては下ろしていく。その際、鼻先に水滴が當たった。
目線だけを上げれば空模様は曇り小さな雨を降らしていた。が、これくらいなら無視してできるとエノクは練習を続行した。最初は小雨だったそれは次第に勢いを増していき服にシミを作り髪を濡らしていく。下ろした前髪からたまった水滴が落ちていく。雨はすっかり土砂降りの様相となっており叩きつけるような音が地上から響いていた。
「…………」
(ち)
さすがにこの中でするのは無理だ。
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