《天下界の無信仰者(イレギュラー)》兄さん? 戻ったんですかー?
時刻は夕暮れになっており空は茜に染まっている。その赤も夜の暗がりに飲まれようとしていた。
二人は家に著き扉の前に立つ。ウリエルはあのままでは歩けないので大人の姿に戻っていた。
ここで子供の姿に合う服を用意する。それに今から出かけるにしても時間が遅い。まずはここで泊まっていけばいいというのがエリヤの考えだった。
これまで何度も説得されてきたウリエルは納得はしているがやはり抵抗があるようで、こうして扉の前に來て心が揺れている。
「エリヤ。やはり私は」
「心配すんな、大丈夫だよ」
もし追っ手がここにくればなんの関係もないエリヤの家族にまで迷がかかる。いや、迷なんてレベルじゃない。犯罪にされてもおかしくない。
そんなウリエルの心配を強引に押さえ込んでエリヤは扉を開けた。
「兄さん? 戻ったんですかー?」
扉が開く音が聞こえたのかリビングからシルフィアの聲が聞こえてくる。廊下の角からひょっこりと顔を出しエリヤを確認する。どうやら調理の途中らしく離れたくないらしい。
エリヤはおうと聲で応じると背後に振り返る。ウリエルは玄関前から一歩もいていない。そんな彼にるよう手招きし、ようやくウリエルは玄関口に立った。
「あれ、お客さんですか?」
シルフィアは一端消えると水の流れる音がする。その後エプロンで手を拭きながらここにやってきた。
「あの、兄さん。こちらの方は?」
「…………」
シルフィアが聞いてくるがエリヤもウリエルも答えられない。この人は逃亡者で今も追われているんだ、なんて言えるはずがなかった。
答えが返ってこないことにシルフィアが小首を傾げている。
「悪いシルフィア、こいつ一日ここでかくまってくれ」
「だがエリヤ」
「いいからお前は黙ってろ!」
「??」
雰囲気が張りつめている。ただ事ではないことをシルフィアもじ始めていた。
「お前の気持ちは嬉しい。でもこれは私の問題だ。もしなにかあれば」
「でも必要なことだろ」
ウリエルから言われるがエリヤも曲げる気はなかった。彼を無事に出させるならこの方がいい。
「いったい何事だ」
玄関口が騒がしいことに二階からエノクが下りてきた。さきほど戻ったばかりでまだ聖騎士隊の制服姿のままだ。
「兄さん? その人は?」
「…………」
「…………」
そこにエリヤと布で全を隠しているを見つけ聞くが、シルフィアの時と同様答えられない。
説明はできない。それがエリヤには心苦しいが分かってもらうしかない。
「頼む! 一日でいいんだ! こいつをここに置かせてくれ! お願いだ!」
「…………」
「…………」
エリヤは大きく頭を下げ二人にお願いした。そのことにシルフィアとエノクが互いの顔を見合わせる。
その後エノクは改めて二人を見た。
エリヤが頭を下げるほどの重大な事態、その焦りからも迫しているのが分かる。それに傍らの。
「…………」
エノクの目は冷靜に狀況を分析していたが、その靜かな目は端からみれば冷たい印象を與えてしまったかもしれない。
「え、ええっと」
すぐ隣でシルフィアがどうしたものかと顔を忙しなくかしている。
「シルフィア」
「は、はい!」
エノクから聲をかけられシルフィアの背筋がビクっと跳ねる。
「お客さんをリビングに案してくれ、それとお茶の用意を」
「分かりました! あの、えっと。ではこちらへどうぞ」
「え、……ええ」
ウリエルはエリヤの顔をちらりと見てからシルフィアの後を追っていった。玄関口にはエリヤとエノクの二人だけになる。
「…………」
「…………」
「悪いな」
なにが悪いのかよくわからないが、とりあえずなにか言わなければならないと思い、出てきたのがその言葉だった。
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