《天下界の無信仰者(イレギュラー)》お前たちには、迷かけねえよ
趣味、とはよく言ったものだ。普通、こういう場合信仰という。ここは慈連立が國教のゴルゴダ共和國だからだ。ここでエノクが趣味だと言ったのは遠回しに信仰者としては認めていないということか。
けれど、慈連立にしては破天荒なこの男でもその優しさは本だ。信仰からではない、がそうなっている。
「責めはしないさ」
それを知っている。まるで全員を照らす太のように、この人が優しいことを。
それを、思い出したのだ。
エリヤにしか救えない人がいる。きっと、彼もそのうちの一人なのだ。
「彼の捜索、なんでも一人の神によるものらしい」
「神?」
「ミカエル神。最近頭角を現してきた神で神長殿にも信頼されている」
エノクもその名前を聞いたのは最近になってからだった。なんでも軍事費の拡大もその神の進言らしく、さらに防衛設計にも攜わっているとか。
「ミカエル。そういえばあいつも言ってたな」
エリヤも思い出す。ウリエルと初めて會った時、彼はミカエルの追っ手か、と聞いてきた。
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「どうするんだ、兄さん。さきほどのラグエル委員長の通信、おそらく兄さんへの警告だろう。すぐにでも追っ手がここに來るぞ」
エノクの察力はおそろしいくらいに鋭い。説明する手間がなくなったのは助かるが見繕うこともできなくなってしまった。
正直に話すしかない。もともと相手を言いくるめるのは苦手だ。
それでどう話すのがいいかと考えて、エリヤは自分の気持ちに聞いてみた。
「今まで」
「…………?」
エリヤが話し出したことでエノクも彼に振り返る。
「俺は、お前たちに迷ばかりかけてきた」
「自覚はあったんだな」
「そこまで馬鹿じゃねえよ。たださ、俺は自分らしくいたかったんだ。用な生き方なんて無理だ。自分のしたいことしてよ、自分のやりたいことして、そして、自分が正しいと思ったことは絶対に曲げたくない」
「…………」
それはエノクの知っているエリヤの人像そのものだった。この人の自由な生き方がこの言葉に表れている。
「昔から賢い選択っていうので見切られる人がいることが我慢ならなかったんだよ。そんなのどこが賢いんだよってな。だから俺は、俺だけは捨てられた人を救うんだって決めていたんだ。それが愚かだとしても、救われなかった人を救うんだって」
「…………」
「それが、俺なんだ」
彼の告白のような、宣誓のような言葉をエノクはなにも言わず聞いていく。
彼の言葉を聞いてやはりなと思う。エリヤはエリヤだ。めちゃくちゃな人だけど底にあるのは優しさなんだ。信仰も規則にも縛られない。その自由な優しさがあるからこそ彼は彼にしか救えない人を救ってきた。
エノクもその一人。彼に救われて、彼に憧れた。
命の恩人。偉大なる兄の姿は憧れた時と変わらない。
この人に追いつきたい。いつかお前を弟にしてよかったと言わせたい。隣に立って、エリヤの弟だとを張りたい。
そう思った時のまま。それを最近まで忘れていたからか、彼の言葉が今では嬉しく思えた。
「でも、これ以上は巻き込めない」
「え」
不意に聲が出る。隣を見るとエリヤは星を見上げていた。その顔はどこか諦めたような、けれたような顔をしていた。
「俺みたいなのはさ、一人でちょうどいいんだよ。俺はやっぱり馬鹿だからよ、なにやってもダメだし、お前等にも迷かけてきた。お前等だけじゃない。いろんなやつに迷かけた。何度も同じ失敗してさ。心底自分が學習しない間抜けなんだって思い知らされたよ。まったく」
エリヤは照れ隠しか苦笑しているが、エノクにはまったく笑えなかった。
エリヤは笑うのを止め話し出す。
「だから、俺はここを出て行く。一人になる。それで、自分の責任は自分でとる」
それはエリヤなりの負い目だったんだろう。周りに迷をかけてきたことは本人も自覚していた。実際彼の素行には問題が多く書いてきた始末書の數だって歴代ぶっちぎりで一位だ。今後この記録が塗り替えられることはまずないだろう。
エリヤは自分の行いを曲げるつもりはない。そして、もう家族に迷をかけるつもりもない。
「お前たちには、迷かけねえよ」
それが、エリヤの答えだった。
自分のやりたいように生きて、迷をかけない生き方をするならこれしかない。ここから出ていき一人になる。それなら可能だ。
これがケジメ。エリヤなりに考えた、唯一の答えだった。
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