《天下界の無信仰者(イレギュラー)》超えてみせる、あの時憧れた兄の背中を!
完璧では彼に追いつけない。ならその先へ。目標は高く険しいならさらにその先へ。
超えてみせる、あの時憧れた兄の背中を!
エノクは剣を構え走った。全神経をこの一戦に集中させエリヤに迫る。
迎え撃つエリヤの橫薙ぎの一閃。大木すら割るその一振り。けるものなら砕かれ、避けても風に吹き飛ばされる暴威。
それを前にしてエノクは飛んだ。を回転させながら水平に、まるで棒の高飛びだ。けれど距離が間に合わない。ぎりぎり當たる。
その瞬間、エノクのがふわりと浮き上がった。
エノクは、風に乗った。
(風圧を利用しただと?)
エリヤに今度こそ衝撃が走った。
まるで木の葉が風に舞うように。エリヤの力を利用した。こんなのは剣ではない。
エノクの戦い方は、剣の領域を超え始めていた。
回転していたエノクのはエリヤの風をつかまえ風車のように勢いを増す。エノクの鋭い眼はエリヤを見つめたままであり、剣を突き刺した。
「ッく!」
Advertisement
慌ててエリヤは背中を反らした。エノクの切っ先がエリヤの頬を掠める。そのままエリヤはエノクから距離を取った。
エリヤ、はじめての後退だった。
攻撃を躱されたエノクは華麗に著地する。躱された落膽はない。戦意は健在でありエノクを睨み続ける。一切れのない剣先がエリヤを捕らえていた。
「ったく、騎士は廃業して曲蕓師にでもなるのかよ」
「それなら兄さんは解業だな」
予想外の反撃にエリヤも軽口が出る。しかしその目は笑っていなかった。
攻撃こそ最大の防。それを地でいくエリヤの防に裂け目が見えたのだ。エリヤは驚きを覚えエノクは勝機とともに走り出す。
超える、絶対に!
エリヤから再び剣が振り下ろされる。表から余裕は吹き飛んでいた。握る手も両手に変わり破壊を叩きつける。攻撃力、速度、ともに三倍にもなる一撃だ。
が、それすらエノクは見切っていた。さらにその先、発生する風も予測済み。
エノクは橫に飛ぶと風を剣でけた。縦に構えたそれをナナメにかす。そうすることで橫に吹き飛ばされながらも前に押し出されていた。剣を使って風に流れを作る。その風流に乗りエノクはエリヤの背後にまで回っていた。
「!?」
その技巧、まさに神業。神化では手にらないもの、努力、技、それがこの脅威を退けた。
「ちぃ!」
目で追っていたエリヤがすかさず片手をエノクにばしてくる。無造作に突き出される手は無防備だ。逆につかみ取ればその隙に脇を切れる。
瞬時にそこまで考えて否定した。摑んでは駄目だ、引き込まれる。勢を崩されそこを狙われる。
エノクは後ろに退いた。すぐさま剣を突きの構えにして突撃する。エリヤの手の間合いの外、そこからの刺突ならばいける。
どうだ?  エリヤの剣では防も反撃も間に合わない。勝負を決めるチャンス。
勝利を予させる一撃は、しかしエリヤには當たらなかった。エリヤはすんでのところで橫に回避していた。エノクは心で舌打ちする。攻撃は外れエリヤのを橫切っていく。
瞬間エノクのが押さえつけられた。
(な!)
エリヤの手がエノクの腰を摑んでいる。そのまま背後に回られた。エリヤがエノクを後ろから抱きしめている形だ。
摑まった。だがエノクに不安はない。
二人は著している。この狀態では剣は振るえない。地形を破壊していくエリヤの戦法は使えず自ら最大の武を手放した。
焦ったか。エノクは冷靜に考えた。この狀況なら剣を振れないのだからできることといえば首筋に刃を當てるくらいだ。エノクはすぐさま右手で首をガードし反対にエリヤの首筋に自分の刃を當ててやろうと左手をかす。目では見えないがエリヤの格は把握している。背後にいようと正確に當てられる。
勝てる。エリヤはすでに片手で自分の腰を摑んでいる。ガードはできない。この勝負、自分の勝ちだ。
そう思ったところで、さらに腰を摑まれたのに気づく。
(なに?)
目で見るよりも覚で分かる。今、自分は両腕で腰を摑まれている。
あり得ない。剣を持っているのだから両手で摑めるはずがない。そう考えが過る中、エノクの視界の隅にそれは映った。
エノクの大剣が放り捨てられたように床に転がっている。
【書籍発売中】貓と週末とハーブティー
【スターツ出版様より書籍版発売中です! 書籍版はタイトル変更し、『週末カフェで貓とハーブティーを』になります。なにとぞよろしくお願い致します!】 上司に回し蹴りをきめたいお疲れ女子の早苗は、ある仕事帰りの夜に倒れた貓を拾う。屆けた先は草だらけの謎の洋館で、出てきたのはすごい貓背の気だるげなイケメン青年。 彼に「お禮がしたいので今週末、またこの家に來てください」と誘われたが――――実はその洋館は、土日だけ開くハーブティー専門の『週末カフェ』だったのです。 ツリ目強気な仕事出來る系女子と、タレ目ゆるだる貓系男子(二面性あり)が、野良貓のミントやたまに來るお客様と過ごす、のんびり週末ハーブティーライフ。 ※ハーブの豆知識がところどころ出てきます。 ※ハーブを使ったデザートの紹介や、簡単なハーブティーブレンドメモもおまけであります。 まったり日常系なので、お気軽に楽しんでもらえると幸いです。
8 75【書籍化】萬能スキルの劣等聖女 〜器用すぎるので貧乏にはなりませんでした
※第3回集英社WEB小説大賞にて、銀賞を獲得しました。書籍化します。 剣も魔法も一流だけど飛び抜けて優秀な面がない聖女ソアラは、「器用貧乏」だと罵られ、「才能なしの劣等聖女」だと勇者のパーティーを追い出される。 その後、ソアラはフリーの冒険者業に転身し、パーティーの助っ人として大活躍。 そう、ソアラは厳しい修行の結果、複數スキルを同時に使うという技術《アンサンブル》を人間で唯一マスターしており、その強さは超有能スキル持ちを遙かに凌駕していたのだ。 一方、勇者のパーティーはソアラを失って何度も壊滅寸前に追い込まれていく。 ※アルファポリス様にも投稿しています
8 105【書籍化】初戀の人との晴れの日に令嬢は裏切りを知る〜拗らせ公爵は愛を乞う〜
一人目の婚約者から婚約破棄され、もう結婚はできないであろうと思っていた所に幼い頃から憧れていた王國騎士団団長であるレオン=レグルス公爵に求婚されたティツィアーノ(ティツィ)=サルヴィリオ。 しかし、レオン=レグルス公爵との結婚式當日、彼に戀人がいる事を聞いてしまう。 更に、この結婚自體が、「お前のような戦で剣を振り回すような野猿と結婚などしたくない。」と、その他諸々の暴言と言いがかりをつけ、婚約破棄を言い渡して來た元婚約者のアントニオ皇子の工作による物だった事を知る。 この結婚に愛がないことを知ったティツィアーノはある行動に出た。 國境を守るサルヴィリオ辺境伯の娘として、幼い頃からダンスや刺繍などではなく剣を持って育った、令嬢らしからぬ令嬢と、戀をしたことのないハイスペック公爵の勘違いが勘違いを呼び、誤解とすれ違いで空回りする両片思いのドタバタラブコメディです。 ※ティツィアーノと、レオン視點で物語が進んでいきます。 ※ざまぁはおまけ程度ですので、ご了承ください。 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ 8/7、8/8 日間ランキング(異世界戀愛)にて5位と表紙入りすることが出來ました。 読んでいただいた皆様に本當に感謝です。 ✳︎✳︎✳︎ 『書籍化』が決まりました。 ひとえに読んでくださった皆様、応援してくださった皆様のおかげです! ありがとうございます! 詳しい情報はまた後日お伝えできるようになったら掲載致します!! 本當にありがとうございました…
8 190終わった世界の復讐者 ―僕はゾンビを操ってクラスメイト達に復讐する―
いじめのせいで不登校になっていた少年、夜月 帳(よるづき とばり)は、自分が引きこもっている間にパンデミックが起こり、世界中がゾンビで溢れかえっていることを知る。その中でトバリは、ゾンビと化した幼なじみの少女、剎那(せつな)に噛まれ、一度意識を失ってしまう。しかし目が覚めると、トバリはゾンビを操ることができるようになっていた。ゾンビになった剎那を好き放題にしたトバリは、決意する。この力を使って、自分を虐げていたクラスメイトたちを、ゾンビの餌にすることを。終わってしまった世界を舞臺に、トバリの復讐劇が今始まる! ※この作品は『小説家になろう』様でも掲載しています。
8 154神様の使い助けたら異世界に転生させてもらった❕
両親はおらず、親戚の家に居候中の蛇喰 葉瑠(じゃばみ はる)は、高2の始業式のウキウキした気分で登校していた。 その時、交差點に珍しい白い髪の女の子がたっているのに気付き、進んでくるトラックから助けようと庇って死んでしまう。 しかし、庇った女の子が実は神様の使いで、異世界に転生をさせてもらえることになった! そこは剣と魔法の世界、神の加護とチートでどんな困難にも立ち向かう! 処女作ですので誤字脫字や分かりにくかったり、すると思います。 亀でのろまで月に5話ぐらいしかあげれません。 いままで読んでくださっている読者様!有り難う御座います。 これからもゆっくりですがあげていきますのでよろしくお願いします! 表紙のイラストはキャラフト様より拝借させていただきました。
8 133御曹司の召使はかく語りき
施設暮らしだった、あたしこと“みなぎ”は、ひょんなことから御曹司の召使『ナギ』となった。そんな私の朝一番の仕事は、主である星城透哉様を起こすところから始まる。――大企業の御曹司×ローテンション召使の疑似家族な毎日。(ほのぼのとした日常がメイン。基本的に一話完結です。ご都合主義)
8 162