《天下界の無信仰者(イレギュラー)》神託、招來!

しかし兵士たちの志気は高い。燃える使命に突きかされてエリヤに突進していく。

もはやなりふり構っていられない。接近戦に持ち込むなら銃撃はできない。よって全員がエリヤに殺到していた。

正面通りの中央にエリヤは立つ。そこへ四方八方から兵士が突進してくる。その數はさらに増えていき三百、四百を越えていた。

それを、たった一人で迎撃していく。

「オラ! オラ! オラよぉ!」

「うわあああ!」

「あああああ!」

一振りで小隊が飛んでいく。すさまじい景だ。紙吹雪を撒くように人が宙を舞っていく。その様は竜巻に舞う木の葉そのものだった。

エリヤが剣を振るう。その隙へ兵士の一人が背後から飛びついた。エリヤの背中を両腕でがっしり摑む。

だがエリヤは片手で悠々と引き剝がし男を放り投げた。

「うああああ!」

男のは街路樹の向こう側まで飛んでいき姿を消していった。

人のを遠投しなお戦っていく。圧倒的なパワーがあればあらゆる問題を解決してくれる。

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彼らはもう銃を捨て摑みかかるだけになっていた。しでもきを鈍らせることができればこの數なら圧殺できる。そこに重點を置いた。

剣を振って前面の敵を吹き飛ばす。すぐに後ろを振り返りさらに剣を振る。だが、さきほど吹き飛ばしたはずの後方から長距離を跳躍してきた兵士が抱きついてきた。背中に衝撃が加わる。

「ちぃ!」

ここにいるのは全員信仰者。その能力を使い近場はもちろん離れた場所からでも飛びかかってくる。

エリヤは剣を振るいながらも片手でしがみつく兵士たちを引き剝がし投げ捨てていった。だが対処が間に合わない。そうこうしているうちに大剣を握る右腕に一人、両足に三人、腰に一人、背中にも一人、正面には二人、すでに八人につかまれきが取れなくなっていた。

「そのまま拘束しろ、押しつぶせ!」

そこからさらに殺到する。砂糖に群がるアリのようにエリヤの全を覆い盡くしていく。崩れた組のピラミッドみたいだった。下敷きにされているエリヤはもう見ることができない。そこへさらにフタをするように上に何層も人が重なっていく。

山ができていた。人を積み重ねてできた山がそこにはあった。

「終わりだ! 諦めろエリヤ!」

外側からばれる。人數による重圧。こうなっては傷つかないという問題ではない。

エリヤを拘束するすべての者が全の筋をつかいぎしぎしに拘束している。緩みはしない、全力だ。

「それはどうかな」

その限界が、一気に弾けた。

まるで噴火が起こったように拘束していた兵士たちが飛び散っていく。中央に立つエリヤは剣を両手で握り、一回転した。

三百六十度、全周囲へと吹き荒れる突風が大隊を押しどかした。

「くそ、化けが……」

地面に伏しながら悔しげに兵士の一人がつぶやいた。

これほどの力、オラクルだというクラスを抜きにしても異常だ。群を抜いて突出している。

彼らもゴルゴダ共和國軍にを置く優秀な信仰者たちではあるが、プリーストでは足止めにもならない。

エリヤと拮抗しようと思えば、さらに上のクラスがいる。

「十字隊が來たぞ!」

サン・ジアイ大聖堂の方角から聲が挙がった。見れば倒れた數百という兵士たちが彼らのために道を開けていく。

それは白の軍服だった。夜中でも目立つその出で立ちは戦場には不似合いだ。しかし彼らは隠れる必要なんてない。

全員がスパーダ以上で構された鋭、総教會庁でいう聖騎士、それが彼らだった。

十數人の十字隊が距離を置いてエリヤと対峙する。十字隊の鋭と元聖騎士隊最強の男。

最初から手加減はない。

「神託、招來!」

全員が一斉に口にした。神が像をなし、人數と同じだけの神託、羽を持つ者たちを召喚していた。

宙に十數の神託が浮かぶ。その手には剣を、もしくは槍や弓などで武裝している。

十字隊の信者も様々だ。神託を支援しようと銃を構える者、共に戦うため剣を持つ者。しかし一人の例外なくその目は鋭い眼を放っていた。

「いくぞ!」

男のかけ聲に先行して神託が襲いかかる。空を駆け抜け、剣を、槍をエリヤに近づける。

両者がぶつかる、その直前だった。

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