エリヤに接近していた三の神託が頭上からきた巨大な拳に押しつぶされた。まるで巨大な落石に巻き込まれたように三つの神託が拳の下敷きになっている。

「よう、寂しかったか？」

その正へエリヤは気さくに聲をかけた。

サンダルフォン。エリヤの神託だ。メタトロンが巨大な彫刻ならサンダルフォンは巨人だった。黒髪の青年であり格は筋骨隆々、ゆとりのある白から出した両腕は筋で盛り上がっていた。背中には二枚の巨大な羽がありサンダルフォンの全長と同じくらいだった。

サンダルフォンは拳を地面から放し立ち上がる。その背は百メートルにも達しサン・ジアイ大聖堂を見下ろしている。反対に地上にいる者は全員が彼を見上げた。その顔は右も左も唖然としており開いた口が閉まらない。

この時點で、勝負は決していた。

勝てない。勝てるわけがない。馬鹿馬鹿しいにもほどがある。こんな巨大な神託があるのか？　直に目にしていても信じられず唖然となる。

サンダルフォンが両翼を広げる。彼の羽は一枚一枚がを放ち夜の暗がりを天のように照らし出す。

そのが新たな敵を浮き彫りにした。

「ずいぶんと派手だな」

地鳴りを響かせて正面通りに現れたのは戦車の一団だった。列をしいくつもの戦車がやってくる。神理時代とはいえ戦車が並ぶ様は壯観だ。信仰者といえどプリースト程度では正面裝甲は破れないしその一撃はプリーストを軽く上回る。

それぞれの砲がサンダルフォンに向けられる。プリーストの神化が戦車にも及び、その砲弾は神の神となる。その攻撃が一斉に発された。衝撃に五十トンを超える車両が前後に震え轟音が空気を振るわす。

すべての砲弾はサンダルフォンの巨に著弾。

しかし、それをけてもサンダルフォンはびくともしなかった。

そびえ立つのは神からの贈り。その最上級。理が神理に敵うわけもなく、その偉容は無傷のまま立ち続けていた。

「サンダルフォン、戦車は壊すな。あれは高いぞ！」

サンダルフォンの手が戦車にびる。砲から発される弾頭が壁のように迫る手のひらを直撃するがまるで歯が立たない。

サンダルフォンは戦車を摑むとそっとひっくり返した。

「お前はあんまり派手にくなよ、目の前にある建はおもちゃじゃねえんだからな」

サンダルフォンの前にはサン・ジアイ大聖堂がある。立派な建だがサンダルフォンからすればパノラマでしかない。だからといって闇雲に壊すわけもなくサンダルフォンの顔が不満げになる。サンダルフォンは慎重にきながら周囲を飛ぶ他の神託と戦車の相手をしていた。

その足下では、

「オラぁああ！」

エリヤの左手が十字隊員の頭を地面に押しつけもう一人が振り下ろした剣を大剣でけ止めていた。それを軽々と押し返し地面に押しつけていた隊員を投げつける。ぶつけられた勢いのまま二人は吹き飛んでいった。

そこへエリヤの死角からが飛び出してきた。握った剣をばしエリヤを襲う。

「もらった！」

剣先は見事エリヤの元に命中した。剣はそのままエリヤのに力を加え、限界に耐えられず刀からへし折れた。

「そんな！？」

驚愕に目が見開く。あり得ない。

そんな彼の元を握り、エリヤは空き缶でも捨てるように背後へと放り投げた。

「きゃあああ！」

「ったく、俺をいたかったらもっと気のある服著て來るんだな」

エリヤはそのまま悠然とした姿勢で歩みを進める。そのには服の切れ目はあれどには一切の傷がついていなかった。

「馬鹿な」

十字隊の一人がつぶやく。

耐云々という話ではない。プリーストならともかくスパーダなら耐を無効にできるはず。それが通用しないなら単純な強度で負けている。

神化が、圧倒的に違っていた。

「出直してこい、神庁の弱者が。聖騎士隊を舐めるんじゃねえよ」

大剣を肩に擔ぎエリヤは正面に並ぶ十字隊に言った。

「それはこっちの臺詞だ！」

正面にいる十字隊の一人が瞬時に姿が消える。それはエリヤの背後に出現していた。

空間転移。オラクルだ。瞬間的にエリヤとの間合いを詰め得である槍で突こうとしている。

「なっ」

しかし、男が現れた時、そこにエリヤはいなかった。

（どこに！？）

そう思うと同時、