「そうかい」

戦いは止められない。この男はどうあっても戦うつもりらしい。それを神は理解した。

「なら、お前は俺が止める」

神とエノクが靜かににらみ合う。エノクは平和を守るために、神は恵瑠を守るために。

どちらも譲れないもののために戦う気だった。

そこへ二人の間にミルフィアがり込んだ。

「主、止めてください！　エノクも！　恵瑠は無事助け出せました。これ以上戦うことなんて！」

ミルフィアは二人の戦いを避けたがっていた。以前は恵瑠を助けるという目的があったが今ならまだ間に合う。

「ミルフィア、どいてろ。避けられねえよ」

「そんな……」

しかし神はミルフィアの肩に手を置くと橫にどかした。寂しげな目で見る彼を今だけは無視する。

「はじめようか、エノク。俺とお前の決著を」

「そうだな」

二人はにらみ合う。神は走り始めた。目の前の相手を倒すため。

二人は戦う。譲れないもののために。

今回の騒に終止符を打つ最後の一戦を。

神の拳がエノクをとらえる。大きく振りかぶった豪快な攻撃だ。さらには黃金の強化も加わり破壊力を押し上げる。

だがその攻撃がエノクに當たる前で止まった。エノクの周囲には彼を覆うようにドーム狀の壁ができていた。明な六角形が組み合わさり彼を守護している。

「ちぃ！」

固い。ガラスのようだがその強度は比べものにならない。

「イレギュラーの年、君の気持ちは分かるが私も退けないのだ」

「だからってこれがお前の選択か！？」

神がもう一撃毆ろうとした時エノクが急遽浮上した。円形の守りはぐるりとエノクを囲い隙がない。エノクは神を見下ろし険しい表を向ける。

「そうだとも。私はこの世界を守る。その思いだけでこの六十年を生きてきた。たとえどれほどの苦難が襲おうとも、私は諦めない！　この誓いを果たすため、阻むというのなら君にも倒れてもらおう、イレギュラー！」

神の頭上で発する紋様が現れる。そこから線が落雷のように放たれた。

「くそ！」

神を襲う紋様は次々と神の頭上に現れ追いかけてくる。衝撃に地面はひび割れ振する空気がに伝わってくる。その様子をエノクは高見から見している。

「舐めるな！」

それを許す神ではない。全から噴出する黃金のオーラをばしエノクを捕まえる。妨害の屬はエノクから自由を奪い神はロープを引っ張るようにしてエノクを引き寄せた。

向かってくるエノクに神は走り膝蹴りを直撃させた。

「てめえがどれほど世界を守りたいと思っていたってなあ、関係ねえんだよ！」

次に拳を振り下ろす。みるみると膨れ上がる黃金の輝き。神の想いと連するかのように力を上げていく。

「守りたいやつ守って、なにが悪いんだ！」

ついに、エノクの防壁に亀裂がった。そこを何度もたたきつける。

「大切な人と一緒にいたいと思うことの、なにが悪いんだよ！」

「ぐ」

明な壁が砕け散る。ガラスが割れたかのような音を立て空間に四散していった。エノクはたまらず上空に退避する。

「ふざけんな！　何度でも言ってやるよ、栗見恵瑠は俺が守る。あいつは人間の敵じゃない、平和を願ういいやつだ」

神は跳んだ。

「俺の友達なんだ！」

防壁がなくなったエノクの鳩尾へ、神の拳がめり込んだ。

「があああ！」

全を衝撃が駆けめぐる。強烈な一撃はエノクを建の一階に吹き飛ばし中にまでっていった。

神は著地しエノクが激突していった場所を見つめる。がらがらと崩れた壁が音を立てる。すると中からエノクが現れた。白い教皇服に傷はあるものの表は引き締まっている。エノクは前に出た。

「なるほど、ここまで生き延びてきただけのことはある。君単でもこれほどの力を持つとはな」

「強がりにしか聞こえないな」

「そうかもしれない」

エノクは片手を握ったり開いたりして調子を測る。その表からよくはなさそうだ。