《天下界の無信仰者(イレギュラー)》守り通した世界が、き出す。

そして、その日はやってきた。

守り通した世界が、き出す。

俺は神律學園の校門を通るなり盛大にあくびをしていた。

「ふぁ~あ」

眠い。マジ眠い。昨夜加豪と天和でトランプで遊んでたら盛り上がってあんまり寢てないんだよな。

ゆったりとした足取りの俺を後ろから他の生徒が追い越していく。

俺は青空の下立派に立つ神律學園の校舎を見上げる。

この道は以前の事件でずいぶんボロボロになったはずだがそんなのを思わせないほどきれいになった。むしろ作り直して前よりきれいになったまである。

もっとさぼれよ。ゆっくり作って。そうすればもっと休めたのによ。他の連中とは違って俺は大忙しだったんだぞ、休ませてくれよ~。

「ふぁ~あ」

もうあくびなんだかため息なんだか分からん。

「神くーん!」

「ん?」

すると聲をかけられた。の子の聲だが姿が見えない。

俺は辺りを見渡した。

「どこからか俺を呼ぶ聲がする!」

「下ですよ、もっと下!」

「どこだ!? どこにも見えないぞ!」

「ちょっと~! だから下ですよ! なんで上見てるんですか絶対わざとですよねこら~!」

さらに俺を呼ぶ聲がする! どこだどこだ、決して下は見ないぞ!

「えいや! えいや!」

「いたッ。おい、毆るなバカ」

「無視する神君が悪いんですよ!」

と、そこで腹を毆られた。さすがに無視できず下を向く。

そこにいたのは、栗見恵瑠だった。正直最初から分かってました。あえて無視はしてみたが毆ることないだろ。

「人の背を馬鹿にするようなことしちゃダメなんですよ? メ!」

「へーい」

朝から叱られた。まあいいけど。

それで俺は恵瑠と並んで歩いた。道の両側に並ぶ桜の木が緑のトンネルを作っている。木れ日に照らされた道を進んでいた。

「なんだか懐かしいですねー」

恵瑠が話し出したことで俺は振り向いた。

「學校がか?」

「うん。なんだかとても久しぶりに來た気がする」

「そうか? 久しぶりと言っても數日だろ」

「うん。でも」

恵瑠は前を向いている。その表は學校の風景を懐かしんでいるようだ。その顔が、しだけ寂しくなった。

「もう、來れないと思ってたから」

の聲の響きに、それもそうか、と思う。

恵瑠はすべてを捨てる覚悟であの戦いに挑んでいた。友達も、親しい人も、自分の心でさえもだ。それにはみんなで學校に通う毎日もある。

新しい時代のためにすべてを捨てる。恵瑠はこうして登校するのも諦めていたんだもんな。

「俺はそんな風に思ったこと一度もなかったぜ?」

「ふふふ。神君はそうだろうね」

恵瑠が笑っている。恵瑠はそう思っていたかもしれないが俺はこの毎日を守るために戦っていたんだ。

そう思っていると恵瑠が突然大聲を出した。

「でもさ! ボクが言えたことじゃないけど神君も無茶し過ぎだよ! 聞いたよ、誕生祭のパレードに襲撃したって」

「うをぉおおい!」

なに言ってんだこいつ! 俺は慌てて恵瑠の口を押さえた。

「バカ! 言うんじゃねえよせっかくになってんのにッ」

「う。ご、ごめんなさい」

あの出來事はなかったになった。超法規的処置? ってやつ? あのジジイ、むかつくことばかりだったが最後は粋なことをしやがる。まあ、それで助かってはいるんだがな。

俺の両手から解放され恵瑠が深く息を吸っている。

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