《召喚された賢者は異世界を往く ~最強なのは不要在庫のアイテムでした〜》第2話 初戦闘

三十くらいの魔が馬車を囲み、馬車を守るように三人が剣や杖を構えて魔を牽制している。

「いきなり戦闘!? その前に俺戦えるのかよ。たしかレベル1だったよな……、おい、アレを助けることできると思うか?」

馬に話しかけている俺もどうかと思うが、その言葉を理解しているのか、「ヒヒーン」と一鳴きしながらスピードを上げて魔の群れへと向かっていく。

――そしてさらにスピードは上がっていく。

「ちょっと待ってくれよっ!」

俺が言ったときにはすでに遅く、馬はそのまま魔を蹴散らしながら進んでいく。魔は人よりも小さく、二本足で歩き末な腰巻きだけをしている。片手に末な棒を持ち、強いて言うなら――ゴブリンというのが適切であろう。

トラックにでも撥ねられてようにゴブリンたちは十數メートル飛びそのままかなくなっていた。

俺を乗せたまま馬は走り回りゴブリンを蹴散らしていく。俺は首にしがみついているのがやっとだった。

Advertisement

數分だろうか、やっとスピードを落としてくれた。

俺はやっとのことで顔を上げると――。

――そこは無殘にも馬に撥ねられてかなくなったゴブリンたちが転がっていた。

馬に弾き飛ばされている者や、踏みつぶされた者、ゴブリンたちは緑をまき散らしながらすでに死んでいた。

胃の中からこみ上げるを我慢しながら俺は馬車を守っている人たちを見ると、こちらを見ながら茫然としていた。

馬はどうだ? と言わんばかりに「ブルルゥ」と鳴く。

俺は、そんな馬から降りて一度首をでた後、茫然としている三人に聲を掛けた。

一人は赤髪で皮鎧をきた剣士。もう一人も茶髪で皮鎧を著て、剣と盾を持っている。そしてもう一人はで、緑髪でローブをきて杖を持っていた。三人とも二十歳位に見える。

「すみません、馬こいつが言うことを聞かなくて……」

三人は、あまりの出來事にハッとしたように、俺に剣を向け警戒をする。

俺が両手を上げ武を持っていないことを知らすと、警戒を解きし安心したように剣を下した。

三人のうち赤髪の剣士が前にでてきた。

「剣を向けてすまなかった。おで助かった……それにしても黒曜馬バトルホースを乗りこなすなんて……」

前に出てきた剣士は俺を乗せていた馬を見上げそう言う。

「いえいえ、馬こいつがいきなり突っ込んだだけなんで……っておい! やめろって!」

して返事をわすと、馬が後ろから俺の頭を甘噛みする。

「ふふっ、かなり懐かれているようだな。それで……貴方は……って失禮した。こちらから挨拶するべきだったな。私はクラーダ、後ろにいる戦士がミルガ、そして杖を持っているのはニーナだ」

紹介に合わせて、二人が頭を軽く下げる。俺も自己紹介をした。

「俺は……トーヤだ。ちょっと迷子になっていて……街を探していたらあんたたちが襲われる所を見つけた……じだ」

「迷子!? こんなところで……? それに黒曜馬バトルホースがここまで人に懐くなんて……」

なんとも説明が難しいことに、俺は気が付いたら草原にいたこと。そして隣には黒曜馬バトルホースがいた事を説明した。しかも気を失っていたせいで記憶も曖昧だとつけ足しておく。

「そうなのか……街はここから街道を一日歩いたところに、フェンディーの街がある。馬車なら半日だな。俺たちもこの馬車の護衛としてそこに向かっているとこだ。よかったら一緒に行くか? まぁ依頼主に聞かないといけないが……」

一人で街へと向かうより、半日で街にれるなら一緒にいた方が得だと思い、その提案に頷いた。

「ハントさん、もう魔は片付きました。大丈夫ですよ」

茶髪のミルガが馬車の中にいる人に聲を掛けると、扉が開いてひょっこり顔を出した。

「いやぁ良かった。ゴブリンとはいえあれだけいたからねぇ、馬車の中で震えていたよっ! それで……彼は?」

馬車を引いている二頭の馬より明らかに大きさが違う黒曜馬バトルホースを連れている俺が気になるようだ。

クラーダがこれまでの事を説明していき、同行を申し出るとまったく問題ないと回答があった。しかもこの魔の群れを殲滅できるレベルなのだから追加報酬も出すと約束までした。

互いに自己紹介を終えると、クラーダがそのまま街へ向かおうとしている俺に質問してきた。

「トーヤ、討伐証明を取らなくていいのか?」

「討伐証明って……? 冒険者でないのでわからないのですが……」

未だに良くわかっていない俺にクラーダは説明をしてくれた。

「ゴブリンだったら、右耳だな。このクラスの魔じゃ魔石も取れん」

ナイフも持っていない俺に、クラーダはため息をつくと代わりに討伐証明を切り取ってくれることになった。

「まぁ、なんとかなったかもしれんが、この數だったら負傷したかもしれないからな。これくらいやらせてくれ」

ニーナはそのまま周りの警戒を行い、クラーダとミルガの二人が代わりにナイフでゴブリンの右耳を切り取って袋にまとめ俺に渡してきた。

「お前が倒した分だ。これを冒険者ギルドに持っていけば換金できる。夕方までに街にれないと門の外で一晩明かすことになるからそろそろ行くぞ」

「はいっ、ありがとうございます」

クラーダとニーナの二人が者席に戻り、ミルガは馬車の後ろの荷置き場に座り後ろを警戒している。

俺は……じっとこっちを見つめる黒曜馬バトルホースに乗せてくれと頼むと、言葉を理解しているかのように足を折って乗りやすい高さまでを下げる。

馬車のスピードに合わせてゆっくりと進む黒曜馬バトルホースに、聲を掛ける。

「呼びやすいように名前でも付けようかな……。真っ黒だし、『コクヨウ』だな。それでいいか?」

俺の言葉に黒曜馬バトルホース、コクヨウは嬉しそうに「ブルルゥ」と鳴く。

そして俺たちは街へと進んでいった。

日が暮れる前に街へとたどり著いた。街は四メートル程の高さの石垣で囲まれている街だった。

門で付をして街にるそうだ。

「冒険者登録は……してなかったな。市民証もないよな? 街にるのに一萬ギルかかるけど持っているか?」

俺は次元収納ストレージから金貨、銀貨、銅貨を一枚ずつポケットから出したようにして、手のひらに乗せてクラーダに見せて使えるか聞いた。

「おいっ! そんな簡単に金貨なんて見せるなっ! 街にるのには銀貨一枚で十分だ。金貨を見せびらかして歩いていたら……襲われる可能だってあるぞ?」

し脅かした様子で言うクラーダに俺は肩を竦めて返事をする。

次々と門で付が進んでいき、俺たちの番となった。

「次っ!」

三人とハントは各自の証明書を出し、俺は何もないことを告げた。

黒曜馬バトルホースを連れている俺に驚きながら門兵は説明してくれた。

「何も持ってないのか……。今回は銀貨一枚もらうぞ。冒険者ギルド登録しておけば街にるのに無料になるぞ。商業ギルドでも構わないが……そのなりは……冒険者だろ?

あと、黒曜馬バトルホースを連れているならギルドで従魔登録もしておけよ?」

「俺も冒険者ギルドに登録しようと思っている。それと従魔登録って……?」

「そんなことも知らんのか……。まぁギルドの登録の時に聞いてみろ。説明してくれるはずだから」

「わかった、ありがとう」

俺は銀貨を一枚門兵に払い、門を潛る。

クラーダ達はハントの商會へ一度寄ることになっており、先にギルドの場所を聞いていた。

「あとでギルドに行くからそこでなっ!」

三人とハントは俺に別れを告げ街の中を馬車で進んでいく。

馬車が見えなくなると、俺はコクヨウと共に街の中へと歩みを始めた。

    人が読んでいる<召喚された賢者は異世界を往く ~最強なのは不要在庫のアイテムでした〜>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください