「ふぅ～そろそろ戻るか……コクヨウも待っていることだし……」

倒した三メートルほどある豚顔の魔であるオークを次元収納ストレージに仕舞いながら一息つく。

二時間ほど森の中を彷徨いながら、出てきた魔をひたすら倒す事を繰り返していた。

木々にマークを付けてきた道を戻りながら森の出口へと向かっていくと、半刻もしないうちに森の出口が見えてきた。

薄暗い森の中から、解放された俺は背筋をばし、太のを浴びるとコクヨウへと視線を送った。

コクヨウは俺の事を見つけると、しうれしそうな顔をする。

しかしコクヨウの足元には――――かなりの數の魔の死骸が散していた。

「……コクヨウ……こんなに魔がきたのか……」

コクヨウは「どうだ？」と言わんばかりの自慢げな表をして、水をれていた空の桶を俺に向かって蹴り上げた。

俺は苦笑しながら、生活魔法を使い、桶に水を足すとコクヨウの近くに置く。

コクヨウは満足した表をしながら水を飲み始めた。

「よしよし、それにしてもり口まで魔が出てくるんだな」

水を飲むコクヨウの首をでながら辺りを見渡す。しかし魔の気配などはすでになかった。

「こいつらの処理もしちまうか……」

ダンプカーに弾かれたように潰れた魔たちから、証明部位を切り取っていく。ゴブリンが多く切り取った數は三十を超えていた。

処理を終えると、一か所にまとめて生活魔法で火をつけて燃やす。

燃えている魔の死骸を眺めながら次元収納ストレージからパンを一つ取り出し噛り付く。

すでに十分な魔を倒して帰るつもりだったので、ステータスを確認する。

『ステータス』

◇――――――――――――――――――――◇

【名前】トウヤ・キサラギ

【種族】人間族

【別】男

【年齢】16歳

【職業】回復師プリースト

【稱號】召喚されし者

【レベル】３５

【特殊スキル】神眼　全屬魔法使用可　全スキル取得可

【スキル】剣

◇――――――――――――――――――――◇

「おぉ！！！」

思わず想像以上のレベルの上がり方に驚きの聲を上げた。

レベルが３０臺ともなれば、冒険者ギルドではＢランクと同等である。廃人プレイしていた時のように思わず笑みを浮かべた。

「これなら頑張ればすぐに１００までいきそうだな……」

経験値倍増の指を眺めながら今後の生活について考えていく。

「とりあえず金は持っているし、コクヨウと一緒に泊まれる宿もあるし問題ないかな……。冒険者のランクをし上げておくくらいか。あとは、周辺國の報だな。地図を手にれて……」

頭の中で今後やることを整理していく。

満足したコクヨウが考えている俺の頭を甘噛みするので、街へと戻ることにした。

コクヨウの背中は鞍もついてない。普通の馬とは思えないスピードに必死に捕まりながら、鞍をつくってもらおうと思いながら街へと駆けていく。

街のり口でコクヨウから降りると、一緒に歩きながらギルドカードを掲示して中へとった。

市民証やギルドカードを持っていれば街にるのは基本無料だ。最初の時は何も持ってなかったなぁーって思いながらも冒険者ギルドへと向かう。

扉を開けてギルドにると、一瞬視線が集中するが、それもすぐになくなった。付には數人の付嬢がいたが、ミリアがいたのでその裂へと並んだ。

數分で順番が來て、ミリアの前に立つと顔を上げて俺に気づいて笑みを浮かべた。

「トーヤさん、お疲れ様です。依頼の注ですか？　それとも納品……？」

「納品を頼む。また……いっぱいあるんだが……」

俺はし苦笑いをしながら言うと、察したように個室へと案された。

ミリアと向かいあって座ると、ミリアが先に口を開いた。

「前回の事もありますし、目立ってしまいますからね。それで……今回はどれくらいの……？」

「ゴブリンの耳は……二〇〇位かな……あと、オークも一〇ほど。それと狼の――」

「ちょっと待ってください！！」

説明している途中でミリアに手で制された。

「昨日の今日でどんだけ倒しているんですか！？　無茶にも程がありますよっ！？　しかも……トーヤさん一人でですよね？？」

興して口走るミリアに俺はただ頷くだけを繰り返していく。

「――ですから、常識の範囲でお願いします。それにしても本當に回復師プリーストなんですか！？　狂戦士バーサーカーかと思いましたよ。まったく……」

「ミリア……、狂戦士バーサーカーって職業ジョブってあるのか？？」

自分の本アカウントだったキャラクターを思い出しながらミリアに聞く。

「伝説には言い伝えられていますね。戦士を極めてさらにその先があると……レベル１００が限界なのに、その先があるのですかね……？」

首を傾げるミリアに俺の口は思わず緩む。

（この指があれば出來るかも……。まずはレベル１００でジョブチェンジだな）

「わかった。ありがとう、參考になったよ。それで魔の素材はどこに置けば……？」

「あ、そうでしたね。解場所へ案しますね。それにしても、トーヤさん今日は手ぶらですよね？　外に置いてあるんですか？」

これから世話になるギルド嬢だし、こうして気を使ってくれるから俺は次元収納ストレージからゴブリンの耳がった袋を取り出す。

「？！……トーヤさん、次元収納ストレージ持ちでしたか。それなら納得です。でも……あんまり人前で見せないほうがいいですよ？　やはり珍しいスキルだし、冒険者としてはから手が出るほどにしいですから。パーティーにしいと思っている人は多くいます。知られたら……」

「それは困る！　しの間は一人でいたいし。それに調べたいこともあるから毎日狩りに出かけるわけでもないしな」

さすがに俺の廃人プレイを人目につけるわけにもいかない。しかも回復師プリーストとしての役目もできるとは思えない。

そんなことを考えながら、ミリアに案されるがままに解場所へとついていく。

案された場所は育館ほどの大きさで、數人が解作業をしているところだった。

ミリアが責任者と思える人に聲をかける。

「ダロックさん、素材の持ち込みなんですが、どこに置けばいいですか？」

ダロックは三十代後半の人族で、し太めでがっしりとしており、エプロンをに著けている。

「おう、ミリアか。素材置くならそっちのテーブルでいいぞ？　持ち込みはそこの坊主か？」

置く場所を支持された俺は、言われた通りに次元収納ストレージから魔の素材を次々と出していく。

オークが十、狼も三十を超えただろうか。その時點でストップがかかった。

「待ってくれ！　そんなに一気に処理できん！　また後日にしてくれ。次元収納ストレージ持ちなら素材が痛むこともないだろう」

止められた時にはすでに小山ができており、他で解作業をしていた職員たちも手を止めて見っていた。

「とりあえずこれくらいで……また時期を見て持ってくるようにするよ。當分狩りはするつもりないし」

「毎回こんなに持って來れられたら、他の仕事ができん。それにしても小僧、見た目と違って高ランクだったのか……」

関心するダロックに橫からミリアが「実はまだEランクなんです」と伝えると、その目は大きく見開かれた。

「いい新人が現れたな？」

にやりと笑うとダロックは俺の背中を勢いよく叩いた。

そして査定は明日になると伝えられた俺はミリアとともにまた応接室に戻った。

「トーヤさん、明日の午後にまた來てくださいね。その頃には査定も終わっていると思います。それと……多分ランクアップもすると思います。トーヤさんがEランクでいたらそれこそバランスがおかしくなりますから」

「うん、わかった……そこら辺は任せるよ。また明日顔を出すようにするね」

個室から出た俺は、コクヨウと共に宿へと向かう。途中で串焼きを購してつまみながら宿まで十分程度の距離を歩いた。

「ただいまぁ」

「あ、トーヤさんお帰りなさい……」

しかしその言葉の割に表は暗い。何かあったのかと尋ねたら予想外の答えが返ってきた。

「あのですね……実は……他のお客さんの馬がコクヨウに怯えてしまってクレームが來ているのです。それで……申し訳ないですが、宿泊は明日までにさせてもらえますか……」

狩りから疲れて帰ってきた俺に突きつけられたのは、明日から宿無しになることだった。