《召喚された賢者は異世界を往く ~最強なのは不要在庫のアイテムでした〜》第15話 食いしん坊な賢者

やはり収めた素材に関しては、今日では処理できず、後日扱いになった。

エブランドからは「明日も顔を出せ」と言われ、ギルドを後にした。

そして俺は、一軒の店の前に立っている。

「やっぱりここしかないんだよな……」

扉を開け、店へとると、カウンターには相変わらずの賢者ナタリーが座っていた。

ナタリーは俺だと気づくと笑みを浮かべる。

「お、トーヤか。今日はどうしたのじゃ? 神聖魔法はこの前上級まで買っていっただろう。ポーションでも必要なのか?」

「実はさ……魔法師マジシャンの魔法書がしいだが……」

「お主は、回復師プリーストであろう? そんなが必要なのか? もちろんあるぞ。初級から上級までな。ただし、わしも客を選ぶのだ。使えない者に売っても仕方ないであろう?

俺はどう説明していいか悩む。先程ギルドでこの世界のレベルについて教えてもらっていたから簡単には話せない。

しかし、このままでは売ってもらえないだろうし、意を決してナタリーに話すことにした。

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「――転職か……お主、その事を知ったか」

「?! もしかして知ってるのか……?」

「お主はわしを誰だと思っているのじゃ? 賢者ナタリーなのじゃ。それでお主は魔法師マジシャンに転職したという事であろう」

俺は素直に頷いた。その態度にナタリーは笑みを浮かべ、3冊の本をカウンターに並べる。

神聖魔法の魔法書は、白地のカバーがされていたが、屬魔法の魔法書は黒いカバーで覆われていた。

「これが魔法書じゃ。ただ……売るには條件がある」

「條件……? そんなもんが必要なのか……」

ナタリーは頷くと、俺の予想外の言葉を発した。

「お主、わしの弟子になれ」

「――それは斷る!」

即答した。いくら自稱賢者といえども見た目はただのだ。その弟子など免被る。

俺の予想外の言葉に、ナタリーは口を尖らせる。

「では、売らん。これでも昔、放浪の旅を続けていたときは、“黃昏の賢者”とまで言われていたのじゃ。各國の味いものを食べ、々と経験を積んでおるのでのぉ。若造にそう言われたら斷るしかないのじゃ」

各國の味いもの……。もしかしたら……。

「――もし、ナタリーが食べたこともないような味しいを食べさせたら売ってくれるか?」

俺の“食べたことのない味しい”に対してのナタリーの食いつきはすぐにわかった。

味いもの……。じゅるり……も、もしじゃ、わしを満足させるが作れたら売ってやる。いや、無料でやるのじゃ!」

「言ったな? 今日の夜にでも、家に食べにこい! もちろん魔法書を持ってな!」

「隨分自信満々じゃな? わしを見くびるでないぞ? 店を閉めたら行くから用意して待っているのじゃ!」

「待ってるからな!」

俺は捨て臺詞を吐いて店を後にした。

もちろん自信はある。楽しみにしておけよ。

俺は笑みを浮かべて屋敷へと向かった。

屋敷に戻ると、廄舎でしの間、コクヨウに話しかけたあとに屋敷へとる。

ホールにると、すぐにフェリスが現れた。

「ただいまフェリス」

『ぉ…かえ…り……トーヤ……』

今なんと!? 思わず俺は目を見開く。

「フェリス、今『トーヤ』って言ってくれたのか?」

俺がそう言うと、フェリスは顔を背け逃げるように消えていった。

「フェリスが名前を……」

思わず頬が緩む。ナタリーからは『家霊は、言葉を発することはない。表を変えることもない。ただ、その屋敷を維持しているだけだ』といわれていた。

それが、わずかだが表を変え、そして話すこともできる。それがとてもうれしかった。

「あ、いけね……。賢者ナタリーの飯の用意しないと……」

俺は急いでキッチンへ向かう。

「何がいいかな……日本の料理だったら食べたことないだろ、確実に……」

次元収納ストレージから出した食材を次々と並べていき、俺は腕を組み考える。

塩や砂糖、胡椒などは店に置いてあった。胡椒は他の食材の何倍もしたが、日本食になれた俺の舌には確実に必要なものだったので揃えた。

しかし、醤油などはなかった。

「待てよ……一回の食事だけで満足させることだったら……」

俺はにやりと笑い、賢者ナタリーが來るのを待った。

日も暮れ、のんびりと寛いでいると、フェリスが現れる。

「――き…た……」

「そっか。ありがとうフェリス」

俺は扉を開き、ナタリーを迎える。

「いらっしゃい。って言っても大家だったな」

「うむ。邪魔する。――わかっておるよな?」

「もちろんだとも。楽しみにしててくれ」

俺はダイニングに招待をして、ナタリーを座らせる。

「ワインでいいか?」

「うむ。構わんぞ。酒は好きだしのぉ」

どう見てもにしか見えないナタリーに酒を飲ませる店があるのかと思いながら、グラスを置き、次元収納ストレージから赤ワインを取り出す。

栓を抜き、グラスの半分くらいまでゆっくりと注いでいく。

「ちょっと待ってろ。今、料理を持ってくる」

一度席を外した俺は、料理を取り出す。もちろん、次元収納ストレージに仕舞われていたゲーム・・・の時に使用していた食料だ。

「どんな顔するか楽しみだな……」

俺は口元を緩めながら料理を乗せた皿を持ち、ダイニングへと向かった。

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