《召喚された賢者は異世界を往く ~最強なのは不要在庫のアイテムでした〜》第25話 バーサーカー?いえ、魔法使いです。
「……何か用ですか……?」
首を傾げ聞く俺を囲むように三人が広がっていく。
「魔法職如きに舐められたら俺らも廃業なんだよ。ここはスラムだしな……冒険者が一人行方不明になっても誰も気にしちゃいないぜ」
「クククク……」
「隨分いい裝備してるじゃねーか? 売ったらいい値段になるんじゃねーか? どうせ死になったら裝備なんて必要ないしな。俺たちが有用に使ってやるよ」
男たちの言葉に俺は大きくため息をする。
「それで……? 俺をどうにかすると……」
対人戦……、現実にはやったことない。でもMMOの時は毎日のように……。
そして対人をやるためにそのゲームをやっていた。
俺の気持ちは次第にその時を思い出すように高揚していく。
「お、やる気かい……見たところ武も持ってないし、俺たち相手に素手か……隨分余裕だな」
男たち剣を抜き俺に向けてくる。
それに対して俺は次元収納ストレージから――――長ほどある両手剣を取り出す。
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「「「なっ!?」」」
驚く男たちに俺は両手剣を片手で軽く振り回し、肩に乗せにやりと笑顔を向ける。
「――それで素手がなんだって……?」
「チッ……魔法職がそんなの持って……」
その瞬間に俺は一瞬で駆け出し、その男の首元に剣先を當てる。
「――――魔法職舐めるなよ?」
そのまま剣の腹で、男に向かってフルスイングする。
男はそのまま數メートル吹き飛ばされ、バラック小屋に突っ込んで意識を失った。
唖然としている二人にその勢いで駆け出し、一人、そして最後の一人に打ち込んでいく。
一瞬にして勝負がついた。
「やっぱり……剣だよな。狂戦士バーサーカーが俺にはあう」
1人で納得し頷きながら、両手剣を次元収納ストレージに仕舞い、どうしようか悩む。
……こいつら放置したら、また同じような事があるかも。
よし……。連れて行こう。
意識のない三人を縄で縛り片手で引きずりスラムを歩く。
見ていた誰もがその様子に目を見開き驚いてすぐに視線を逸らす。
そしてスラムを出て人通りがあるところを通りそのまま――冒険者ギルドへと向かった。
冒険者ギルドの扉を開け、そのまま中へとっていく。
もちろん縛った三人を引きずったまま歩く俺に視線が集まる。ホールにいた誰もが唾を飲み込んだ。
ギルドの付も、その慘狀に焦りすぐにカウンターから飛び出してきた。
「一何があったんですか!?」
ギルド嬢の質問に俺は説明をする。
「スラムで襲われましてね……。晝間にギルドでも注意もけていたので、こうして連れてきたんです。で、どうしましょうか、こいつら……」
ただでさえ意識もなくまみれの狀態なので、ここまで引きずったことにより裝備もボロボロになっていた。
勝負がついた時よりひどい狀態かもしれない。
「すぐに回復魔法を使える人を! あと留置所も用意して!」
前に立っている付嬢が、次々と指示をしていく。男職員も出てきて、縛られている男たちをそのまま裏へと運んで行った。
「それで、個室でもう一度説明してもらえますか?」
「はい……」
付嬢の後を追い個室へとる。そこはテーブルとイスが六腳あり、本當の打ち合わせスペースだった。
座るように促され、その前に付嬢が座る。
「ありがとうございます。それでは、最初から宜しいでしょうか?」
午前中にギルドで絡まれた事から始まり、スラムにある孤児院で食事をして、宿へ戻る帰りに襲われたこと。
三人とも剣を抜いて、殺してぐるみ剝ぐと言われたので対応したこと。
スラムで放置するわけにもいかず、ギルドへと連れてきたことを説明していく。
俺の説明にメモを取りながら頷いていく。
「――わかりました。事はわかりましたが、あの三人は柄が悪くても一応Dランクの冒険者です。見たところ魔法職ですよね? ギルド証を提示してもらえますか?」
付嬢にギルド証を取り出し手渡すと、その容を見て目を見開き驚愕の表をする。
そりゃレベルを見れば仕方ないよね……。
「――――こ、これは……本當に!? レベル57って……」
「えぇ……まぁ……そこに出てる通りです……」
「しかもこのレベルでランクがまだCなんて……」
「それは最近登録したばかりですから」
苦笑しながら説明する俺に、ギルド嬢は腕を組み唸る。
し悩んだ末にギルド場が口を開く。
「わかりました。あの人たちについては強盜未遂、殺人未遂ということでギルド除名の上、犯罪奴隷墮ちにします。今までは証拠がなくて逃げられていましたが、今回は証人もいますからね」
にやりと笑うギルド嬢に俺の背中は冷たい汗をじた。
あいつら今まで何をやってたんだ……。
もちろんそんな事を聞くつもりもない。
説明を終わり解放された後は、ギルドを後にし宿へと向かう。
先ほどの衝撃的な事にホールにいた冒険者たちからの視線が痛かった。
すでに外は暗くなっており、暗い道をトボトボと宿へと向かう。
宿の食堂は食事をする人たちで溢れていた。
俺に気づいたルミーナたちが手招きをする。
「おい。こんな時間までどこに行ってたんだ? もうみんな食事は済ませてるぞ」
ジョッキを掲げるルミーナの隣に座り、食事の注文をする。
ダイたち四人はすでに食事を済ませ、明日の準備のために早々と切り上げて部屋に戻っており、ルミーナがカウンターで1人で飲んでいた。
「ちょっと々ありましてね……。冒険者ギルドにも行ってました」
「ふーん。問題は起こすなよ? 護衛の任務中だ……。あと――とりあえず冷やせ」
俺の前に飲みかけのジョッキを置かれる。ため息をつきながら魔法で冷やし、そのまま返すと、け取ったジョッキを煽り、冷えたエールに満足そうな顔をする。
俺も頼んでいた食事をけ取り食べ始める。
メニューはが煮込まれたシチューとパンが二つだった。エールを一度冷やして一口含む。
次の日は朝からまたフェンディーの街へと出発だ。
早々に食事を切り上げた俺は部屋に戻り、ベッドへと倒れ込んだ。
6/15発売【書籍化】番外編2本完結「わたしと隣の和菓子さま」(舊「和菓子さま 剣士さま」)
「わたしと隣の和菓子さま」は、アルファポリスさま主催、第三回青春小説大賞の読者賞受賞作品「和菓子さま 剣士さま」を改題した作品です。 2022年6月15日(偶然にも6/16の「和菓子の日」の前日)に、KADOKAWA富士見L文庫さまより刊行されました。書籍版は、戀愛風味を足して大幅に加筆修正を行いました。 書籍発行記念で番外編を2本掲載します。 1本目「青い柿、青い心」(3話完結) 2本目「嵐を呼ぶ水無月」(全7話完結) ♢♢♢ 高三でようやく青春することができた慶子さんと和菓子屋の若旦那(?)との未知との遭遇な物語。 物語は三月から始まり、ひと月ごとの読み切りで進んで行きます。 和菓子に魅せられた女の子の目を通して、季節の和菓子(上生菓子)も出てきます。 また、剣道部での様子や、そこでの仲間とのあれこれも展開していきます。 番外編の主人公は、慶子とその周りの人たちです。 ※2021年4月 「前に進む、鈴木學君の三月」(鈴木學) ※2021年5月 「ハザクラ、ハザクラ、桜餅」(柏木伸二郎 慶子父) ※2021年5月 「餡子嫌いの若鮎」(田中那美 學の実母) ※2021年6月 「青い柿 青い心」(呉田充 學と因縁のある剣道部の先輩) ※2021年6月「嵐を呼ぶ水無月」(慶子の大學生編& 學のミニミニ京都レポート)
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