《ヘタレ魔法學生の俺に、四人もが寄ってくるなんてあり得ない!》転校生はだいたいチヤホヤされるよね

部屋から姉さんを追い出した俺は、制服に著替え、リビングへと下りる。

當の姉さんは、転の準備があるとかで先程家を出ていった。

「おはよう」

俺は既に集まっていた家族に挨拶をし、実の母の影が飾ってある仏壇に手を合わせる。

そして、朝食が始まった。

「暁!この玉子焼き私が作ったのよ!食べてみて!」

「トマト……食べる?」

何とも形容しがたい狀況だが、無理やり平たく言うと、

「(天國であって地獄だ……)」

右側は靜かに食べていてくれる華だから良いが、左側がとにかくうるさい。

頼むから靜かに食べさせてくれよ……。

朝の支度を済ませ、學校へと向かう俺達。

しかし(それも二人)を連れているせいか、周囲の視線が殺気立っているようにじないでもない。

殺気立った視線に曬されること三十分。俺達はなんとか教室へとたどり著いた。

教室はいつもよりざわついていた。転校生の噂がもう出回ってるのだろうか。

「なあ暁聞いたか?転校生が來るんだと」

「ああー。何か噂で聞いたな」

実は俺の姉なんだとは言えない。そんなことしたら確実に処される。

年老いた擔任教師がってきて、

「ええー今日は転校生が來ている。君、ってきなさい」

で、ってきたのは、

「九條……あ、違うな。雨宮和水です。多分名字で分かるだろうけど、雨宮暁くんの義理の姉です。えっと、よろしくお願いします!」

俺は出來る限り平靜を裝う。(ここで下手に反応したら酷い目に遭いかねない)ちなみに俺が平靜を裝っている間、周りは、

「ちょー可くね?つーかと暮らしてる暁ぜろ」

「マジスタイル良いなあ……。うらやましい。アタシもあんなくびれしいよ……」

等々、好き勝手言っていた。何とでも言え。俺の太平洋より広い心が許す限り罵詈雑言を吐くがいい。

「あー、先生。雨宮くんと紛らわしいんで、九條姓で呼んでもらって良いですか?」

「ああ良いとも。九條君。君の席はそこじゃ」

指を指したのは教卓から見て右斜め後ろ。俺の真後ろにあたる席だ。

姉さんは俺の後ろに座ると、

「暁、朝振りだね」

『朝振り』というのは例のベッドの話か。いや、抱き枕にされたのは大変気持ちよかったですけど。

「人のベッドに潛り込むのはやめてしいなあ」

「えへ。ごめんね?」

斯くして、姉さんに対する質問が始まった。

「前はどこの學校?」

「魔導學園北海道高校かな」

「北海道校かあ……。あ、じゃあさ!」

「ん?」

「雨宮とはどんな関係?」

あ、それ聞いちゃいます?聞いちゃいますか?

「んー…義理の弟かな……今は」

ん?今何か聞こえた気がする。気のせいか。

「確かに!雨宮より大人っぽいし、スタイルも良いもんね!」

悪かったな。子供で。

俺がキレ気味になっていると、

「九條さんて好きな人とかいるのか?」

「うーん……。一緒にいたい人なら」

一緒にいたい人!?と、教室がざわめく。

「うん。……的には暁とかかな?」

地雷を踏まないでくれ!頼むから!!

俺の願いも虛しく、教室の視線が全て俺に集まる。

「暁。処されるか、毆られるか。どっちがいいんだ?」

「……どっちもいやです。はい」

「……その、暁。ごめんね?」

姉さんが謝ってくれたものの、無慈悲にも俺への理不盡な処刑は執行された。

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