《ヘタレ魔法學生の俺に、四人もが寄ってくるなんてあり得ない!》雨宮くん、子になる

「……んん……?」

ここは…醫務室か。妙にデカい機械やら薬品棚があるが、ここは間違い無く醫務室だ。

ふと、俺は元に違和を覚えた。

「……何か重いな……」

そこに(自稱)立派な板の姿はなく、替わりにとても立派な雙丘が見えた。

「は!?え、ちょっ、何で!?」

そして聲もいつもより高い。(自稱)深みのあるテノールボイスは何処!?

堪らず俺は鏡を見る。すると、

の……子?」

黒髪黒眼。髪は背中の中程までありそうなが映っていた。

「あー……。どうするかな……」

斯くして子になった俺は、急遽対策(と言っても一人稱とか作法の問題だが)を練ることになった。まずは一人稱だが、

「『俺』?」

いや、文句無しのボツだ。『俺』はさすがにねーわ。

「『僕』?」

一部にウケそうだが一般論で卻下。

「『ウチ』?」

いーや、この容姿でそれは無いな。斷言出來る。

「『私』?」

うん。これだ。やっぱりの子はこの一人稱だな。

「作法は……とにかくの子らしくしてみるか」

大雑把な対策は決まった。

「あとは髪型……さすがにこれじゃあ邪魔くせえな」

男子でも(おそらく簡単に)出來るポニーテールにしておく。

「しっかし…ポニーテールにしてもまだ首より下になるのか……」

かなり長い髪だな。まあいいや。

「さて……。一応井藤と先生と……あの四人には言っとこう」

『井藤』と言うのは俺の親友の事だ。高校にってから出會ったが、意外にも家が近かったりする。

「さて井藤はーっと……お、いた」

選手席で……一人でカードゲームしてるな。ぼっちかよ。

俺は井藤に近づき、

「い、井藤君」

「どした……うおっ」

びっくりしてら。我ながら堂にった演技だと思うが、井藤を『君』付けで呼ぶのはどうも気にらない。

「ちょっと……話があるんだけど、良いかな?」

「お、おう。良いぞ」

「それで、話って何かな?」

人気の無い場所に井藤を呼び出した俺は、

「……今から言う事、信じられないだろうけど、出來るだけ信じてしいな……」

「お、オッケー。分かった(何だ?告白か?)」

「その……私……いや、『俺』が、雨宮暁なんだ」

はあ?という顔をする井藤。まあ、予想通りだ。

「え、ちょっと待て。君が、いやお前が雨宮暁なのか?」

「ああ……さっきの模擬魔法戦の後からこんなになってな」

「マジか……よく分からんが大変だな」

うん。マジで大変。特にが重くて敵わん。

「で、だ。これからしばらく、男に戻れるまで俺は『宮雨暁姫』みやさめみつきとして學園にいる予定だ。ちなみにこれはな」

「ああ。だいたい察した。親友の頼みなんだ。無下にも出來ねえしな。ま、これからよろしく頼むよ。宮雨さん」

「ああ。……これから先生とあの四人にも言わなきゃなんだ」

正直どんな反応するのかし怖い。

「先生」

「んん、どうしたのかね。君」

相変わらずヨボヨボな先生に話しかける。

「今から言う事は誰にも言わないでください」

「あい。分かった」

俺は深呼吸すると、

「実は私、雨宮暁なんです」

「……ほう。君がか。……にわかには信じられんが」

「それは承知の上です。その……模擬魔法戦の後からこんなで……」

「そうか……して、どうするのかね?」

俺はこれからの事、そして、『宮雨暁姫』として學園に通うことを話した。

「あい。分かった。臨時の生徒名簿と制服は學校に掛け合って注文する。宮雨君はそれまで自宅待機でいいかね?」

「分かりました」

あとはあの四人に言うだけだ。

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