《ヘタレ魔法學生の俺に、四人もが寄ってくるなんてあり得ない!》超弩級の不幸

七月二十四日。一年三組教室。

男に戻った俺がいきなり登校して來ても、特に騒がれる事は無かった。

むしろ『宮雨暁姫』がいきなりいなくなった事の方が一大事らしい。

「暁!お前宮雨さん知らねえか!?」

「宮雨さんがどうかしたのか?」

「今日になっていきなり來なくなったんだよ!」

「……確か親の転勤でアメリカに引っ越したっけな」

「マジかよ……」

もちろんウソだ。だって正は俺だからな。

そこにタイミング良く先生がってくる。

「ほれほれ、席に著きなさい。ホームルームを始めるぞ」

先生の聲を聞いた生徒の皆さんが著席する。

「明日から夏休みだ。それについて儂からしばかり注意がある」

俺を含む生徒のほとんどが歓聲をあげる。

「あー……。続けたいんじゃが……」

その一言で皆が黙った。お利口さんだな。

「して、夜間の無用な徘徊、無斷アルバイトは止じゃが……。このクラスはアルバイトをする者がおらんから大丈夫じゃろう」

「先生それだけ!?それだけですか!?」

「……ん。以上じゃが。君達から何かあるか?」

「「「ないです!」」」

驚異のシンクロ率!団結力の為せる技だな。

「それでは、さようなら」

「「「さよならー!」」」

「っしゃー!終わったあ!!」

「やっと自由になれるわね!」

ケイト。その気持ちすげえ分かる!

「あ、ごめん暁。私見たいドラマあるから。先帰ってるね」

「……じゃあ、私も」

「ああ。俺達はコンビニでアイスでも買ってくよ。暑くてが溶けそうだ……」

俺達は一旦別れ、コンビニに向かった。

っていうかすぐ近くにあるのでそう時間はかからない。

「……さあどれにしよう」

うずまきソフトとかチョコミントアイスとか、とにかく々あって決まんないな。

「暁!私これにする!」

「『焼きそばアイス』!?……どこで売ってんだよこんなゲテモノ……」

「良いじゃーん!ほら、さっさとレジ行こ!」

「姉さんと華のぶんは?」

「……こ、來ないヤツが悪いのよ」

クズの思考だな!?せめて分けてやろうな?……いや、『焼きそばアイス』なんてケイト以外が食ったら泣き出すだろうな……。

俺がそんな事を考えていると、

バァンッ!と音がした。何事かと思って周りを見渡すと、覆面の男が二人。そのうち片方は拳銃を裝備している。

「……強盜か」

「おい。そこの二人。……いや、だけで良いや。こっち來い」

男はケイトを手招きした。人質取るのかよ。厄介だな。……警察呼んどくか。

俺が警察を呼ぼうとすると、

「魔縄よ、彼の者戒めたまえ。『組み伏せし魔縄』バインディング・ロープ」

魔導師か!……となると魔導衛師に通報か。

一度ここを離し、

「暁……!」

「すいません……ッ!トイレ行ってきて良いですか!?」

なるべく切羽詰まった様に演技する。どこまで騙せるか分かんないけど。

「ああ?……チッ。さっさと行ってこい」

俺はそそくさとトイレに駆け込んだ。

「一、二、〇と」

數秒の呼び出し音の後、電話が繋がる。

『こちら魔導警備隊司令室です。いかがなされましたか?』

「強盜がったんです。……場所?えーと、魔導學園関東高校前のコンビニです」

『……了解しました。近くの衛師が急行しますので、お待ちください』

そう言うと通話は終了した。

……せっかくトイレに來たんだから、小便でもしてこう。

「おせーぞ」

「便気味なんですよ」

息吐くレベルでウソついた。桜川先生の癖がうつったか。

「(……數分くらいで著くのかな)」

胃が痛い。誰かジョークでもかましてくれよ。

その直後。

音が炸裂し、壁にバカデカいが空いた。

「魔導衛師だ!盜み働いたアホはどこだ!?」

深青のローブ、腰に差した裝飾用の杖。魔法を使った戦闘のエキスパート。魔導衛師だ。

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