《ヘタレ魔法學生の俺に、四人もが寄ってくるなんてあり得ない!》夏休みの翌日ほど憂鬱な日は無い
八月二十九日。
世の學生の大半はこの日が來ないことを祈っているだろうが、神は無慈悲にも今日を迎えれる。
「來ちゃったなあ。この日が」
「ねー……」
同意の意を示したのはケイト。彼も『學校行きたくない學生達』の一員らしい。
「もうこのまま夏休みの最後の一週間だけループしないかな」
「エンドレスサマーな話はやめろ。秋がかわいそうだろ」
俺も一週間だけループしないかなって思ったけども。
「來月何あったっけ?」
「一年生は……『進路別実地研修』だったかな」
二年生が魔法公務員講義で、三年生が就職・進學模試だった気が。
「『進路別実地研修』って何?」
「名前の通り、各々就きたい職業に分かれて、一日研修するんだ。……魔導衛師の選択肢あるかな……」
無かったらとりあえず魔導工學技者の方に回るか。
「私はとりあえず魔法系の資格取れれば良いし。『將來なりたいもの』って言うのもあんまり無いなあ」
自宅警備員志願者かな?
「……まだあと二年あるし、ゆっくり決めれば良いじゃん」
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そんな雑談に興じているうちに學校が見えてきた。
近づくにつれて足取りが重くなるんだけど、これなんて魔法?
「あ、暁、おはよ」
「雨宮君……おはよう……」
姉さんはともかく華がもういるなんて珍しいな。
「ああ。おはよう」
教室はわりと騒がしかった。
「何か騒がしいな。……おい井藤、何この騒ぎ」
「んあ?何かよ、転校生らしいぞ。外國の」
外國?夏休み明けにか。ずいぶん急だな。
魔導學園は世界中に存在するが、その中でも特に高度・専門的な魔法教育を行うのが、日本の魔導學園だ。人數はないが、外國の學生もけれている。
「どこの人?」
「さあ?どこだか知らねえけど、子だったら良いなあ……」
に忠実なようで何よりだ。多分男子が來て盛大に自するだろうけど。
先生がってくると、皆靜かになる。定年間際のじいちゃんなのに妙な貫祿があるんだよな。
「皆、久しぶりじゃの。夏休みの間は元気にしとったか?」
々あったけど楽しい夏休みだった。次は冬休みに期待!
「……皆元気そうで何よりじゃ。して、急な話じゃが、このクラスに転校生が來ておる」
がらっと扉を開けてって來たのは……イギリス人?いやアメリカ人かな?とにかく金髪に水の目という『THE・外國人』な子がってきた。
その子は黒板の前に立つと、恐ろしく雑な……もとい達筆な英文を書いた。どうやら名前らしい。エ、エマ……クリハラ?
「エマ・クリハラです。イギリスのバーミンガム魔法學院から來ました」
バーミンガムって……超名門校じゃん。うちなんかとはレベル違いすぎるくらいに。
「バーミンガムって、あのバーミンガム?」
「うん。多分そのバーミンガムで合ってる」
まさかのほとんどバーミンガムだけで會話立。いろんな意味ですごい。
「クリハラ君は親の仕事の都合で引っ越してきたそうな。皆、仲良くやるんじゃぞ」
じいちゃん先生がヨボヨボ聲で言うが、
「クリハラさんって向こうじゃどんな子だったの?」
「バーミンガムって名門でしょ?大変じゃなかった?」
「イギリスってやっぱり紅茶飲むの?あとさ、山高帽かぶるんでしょ?」
いきなり質問責め(主に子)を喰らって戸うクリハラさん。おい最後。それは多分違うぞ。
「ええと……。一つずつ答えようか」
すげえ。一瞬で靜まり返ったぞ。……これが本場イギリスの淑ですか。
「まず向こうの私は、あんまり目立つ子じゃ無かったかな。元々そういうの苦手だったし」
言えない……。外國の転校生ってだけで珍しいのに、魔法の本場イギリスの名門校出だからめっちゃ目立ってるとか……。
「それと、バーミンガムは確かに大変だったよ。寮生活が義務だし、罰則厳しいし、何より魔法の名門校ってブランド持ってるから、授業がすごくレベル高くて……」
寮生活とか出來る気しない……。しかもブランド持ちだから寮の外でも禮儀正しくしなきゃいけないんだろうな。
「あと、紅茶はたまに飲むよ。學院の晝休みの時とか、寮の朝食とかで。……山高帽は、無いかな」
やっぱり無いのか。
「あー、質問中に悪いが、授業を……」
完全に置いてけぼりにされた先生。同しますよ!
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