《ヘタレ魔法學生の俺に、四人もが寄ってくるなんてあり得ない!》番外編・天使達の福音

十月某日。

私____篠山華と、私の好きな人____雨宮暁くんは、都のカラオケにいました。

そもそも何でここにいるのかと言うと、

『……華って歌上手いの?』

『ふえ?い、いきなり……何?』

『いや、何か父さんからカラオケのタダ券貰ってさ。華と行こうかなーって』

カラオケと歌が上手いのに何の関係が……?

『ねえ……和水は國立魔導大學のオープンキャンパスでいないし、ケイトは遊びに行った。先輩も生徒會の引き継ぎとかでカラオケどころじゃないし』

必然的に私に回ってくるんですか……。

『俺もカラオケ久しぶりに行きたいし、二人以上で行くと割引きらしいからね。頼むよ』

『……頭數が、足りない?』

『うぐっ。ち、違うよ?』

雨宮くん……カラオケで安く歌う魂膽が丸見えですよ……。

『分かった。私も、行く』

『おお!ありがたいや!』

「華ー?大丈夫かー?」

「ふあっ!?あ、え、うん!」

ぼーっとしてた。……眠いです……。

「五番の部屋だって。行こう」

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「あ、うん」

どうしよう……。歌うだけなのに張してきました……。

「おお。何かカラオケってじ」

私達は部屋にると、まず飲みを注文した。私は……背びしてコーヒーを頼みました。

子供っぽく見られるのはキライです。

「華、コーヒー飲めるの?」

「の、飲める……」

雨宮くんは麥茶。定番ですね。

「……何から歌う?」

雨宮くんが聞いてきた。……正直、流行りの歌とかは良く分からないので、私の『持ち曲』である『天使達の福音』エンジェルス・ゴスペルを選択。高音域が辛いんですが、それを抜いても綺麗な曲です。

「『天使達の福音』エンジェルス・ゴスペル……聞いたことないな。誰の曲?」

「え……その、私も……分かんない……」

『天使達の福音』エンジェルス・ゴスペルは、歌ってる人も、曲を作った人も分かりません。でも、その人の作る曲は、心にぐっと來るものがあります。

「じゃあ、歌うね……」

_____優しげな副旋律オブリガードに彩られた、どこか儚さを漂わせるメロディが流れ出した。

『超絶上手い』

俺の脳は、その五文字に支配されていた。

「(さっきから全然外さないもん。それと、わりと大音量で曲流れてるのに、凄く聞こえる)」

『天使達の福音』エンジェルス・ゴスペル……。某検索エンジンいわく、『錯する男心と、それを取り巻く世界を表した曲』で、『天使達の福音』ってタイトルは、いずれ響くだろうウェディング・ベルの音を、天使達からの祝福の言葉に例えたもの……らしい。

「……ど、どうかな?」

「……凄く上手かった」

「それだけ……?」

涙目やめて!罪悪半端ないから!

「えっとな、上手すぎて言葉が見つかんないんだ。ごめんよ」

「雨宮くんもこれ歌う?」

「い、いや。さすがに高音過ぎて無理かな」

俺はやんわり斷りつつ、次の曲を選んだ。

アップテンポなメロディが流れ出し、俺は息を吸った。

「うーん……」

雨宮くん、音がズレたり掠れたりしてるところが結構ありました。音癡って訳でも無いですけど、上手いって訳でも無いです。

「下手っぽい?」

「……上手くもないけど……下手でもない」

「つまり普通って事かな?」

「……うん」

忘年會とかでウケないタイプかもしれない。

「……何分、殘ってるの?」

「もうそろそろ出ないとヤバいかも。どうする?」

「出る」

時間無いなら急がないといけませんね。超過料金取られたくないし。

「……次、どこ行く?」

「ドラッグストア」

「え?」

そんな顔されるとこっちが悪いみたいに……。

「……長……ばしたい……」

一四七センチは辛いです。子供っぽく見られるし、何かアンバランスだし、イスに座るときもクッションが無いと座高合わないし……。

「……何かごめん」

「ううん。雨宮くんは、悪くないよ……」

不摂生してた私の方が悪いんです……。

「うーん……」

長……長……」

「……いっそこのままで良くね?」

「え?」

こ、子供っぽく見られるのは……イヤです。

「ほら、ちっちゃい子が好きな人もいるじゃん。まだチャンスはある……かも」

ちっちゃいって言うのやめてください!

……私は雨宮くんに好かれたいんです。

「……私は、せめて一五四……いきたいから……」

平均長にならなくても、一五〇センチは超えてたいんです。

「……そうか。ちっちゃいとか言ってごめんな。配慮が足りなかった」

某所。ドラッグストア。

々あるな……。あ、パン買ってこ」

「……無い……」

「何が?」

「背がびる……サプリがあった。でも、もう無くなってる……」

あれが頼みの綱だったのに……。

「華」

「何?」

「こればっかりは言いたくなかったんだが……諦めろ……」

うう……。雨宮くんまで私の努力を……。

「やっぱり、朝起きたら背びするしか無いのかな……」

「ああ……。出來るなら俺の長を五センチ分けてやりたいよ……」

そしたら憧れの一五〇センチ臺に……!……無理か。

「……毎朝背びする……」

「そうしよう……」

多大な同に涙が出そうです……。

來年の初詣は長がびますようにってお願いしましょう……。

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