《ヘタレ魔法學生の俺に、四人もが寄ってくるなんてあり得ない!》いつだって試験は命がけ

十ニ月一日。

この日は、俺を含む魔導學園の一年生にとっては、運命の日でもある。

『実用魔法検定三級』の試験日だ。

先輩は「そんな難しくありませんわ」と言ってたが、まあ、それでも張はするもんで。

「井藤、勉強してきたか?」

「さすがの俺も、進級がかかってりゃあやるさ。すげえめんどくさかったけど」

「俺落ちるかもしんないから、その時は俺の分まで高校二年生を楽しんでくれ」

「バカ野郎ナチュラルにフラグ建てんなって。っつか、お前落ちたらあの四人とかめっちゃ悲しむだろ。……俺もお前みたいな後輩いらねえしな」

おい最後何だ。ちょっとイラッときた。

「俺だってお前なんかを先輩呼びしたくないよ。……何か無に腹立ってきた。落ちないように頑張るか」

「おうよ。なに、六十點以上で合格だ。そこらの検定よりはラインが低いからよ」

あ、マジ?六十點で合格出來んの?何それ知らないんですけど。

俺は若干驚きつつ、席についた。

「では、試験用紙を配布する。この試験では、私語、カンニング、試験中の立ち歩き等は一切止。疑わしい行為をした場合でも、前述の行為と同等と見なし、失格と見なすので、注意するように」

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妙に堅苦しい七三伊達メガネの先生が、試験用紙を配布する。……左手でメガネの位置直したりしてるし。

「では、始め」

で、配られた用紙の問一がこれ。

問一、魔法を行使する上で詠唱するものを魔法文と言い、それにより魔法を発する。魔法文において、魔力の過剰な流を抑制する文を書き抜け。但し、魔法文は「嵐よ、我がに集いて鎧をせ。『天嵐の鎧』ストーム・ドレス」とする。

……あ、これ分かるぞ。普通に分かる。

俺は解答用紙に答えを書き込み、次の問題へ進む。

問ニ、現在、魔導師の扱うものは『魔法』。では、今から約百年前まで世界的に者が多かったが、現在においてはほぼ使用されなくなったものは何か。

これは……俺達が使うのが『魔法』で、あと何だ?……魔……魔……魔か!

百年の間に魔が廃れたのも、々人道的じゃない面があるからだもんな。魔法の方が扱いやすいらしいし。

「(……勉強會行ったからかもしれないけど、結構解けるな。もしかしたらこれ合格出來んじゃね?)」

淡い希を抱きつつ次の問題に目を通すと、

問三、魔導省及び文部科學省の定める法律に従い、魔導學園を卒業。所定の手続きを踏んだ魔法の使用者を『魔導師』。魔法犯罪対処や警ら業務を行う魔法の使用者を『魔導衛師』と呼ぶが、魔導學園を卒業せずに魔導省から魔導師として認定された者の事を何と言うか。

ヤバい。これ分かんない。これも魔法基礎理論の授業でやったんだろうけど、多分俺寢てたな。

考えても全く分からなかったので、これは飛ばすことにした。

で、次の問題。ここからは魔法認識學の分野だ。

とりあえず付け焼き刃だけど勉強したもんね。

問四、次の文章の埋めをせよ。

【魔法認識學において、個人的願を『   (一)   』と言い、集団的願を『   (ニ)   』と言う。個人的願と集団的願が相互に及ぼす影響の法則を

『  (三)  』と言い、この法則によって起きた事象が世界に與えた影響の法則を『   (四)   』と言う】

ええと……一がミクロ願で、ニがマクロ願。そして三は魔法認識學第一法則、四が魔法第二法則か!

すらすら解けた。ありがとうございます先輩!

……で、次の問五が最後の問題。記述問題は、他の問題より配點が高い。多分十五點は取れるんじゃないかな。

問五、ミクロ願とマクロ願の関係を説いた『マルクス・フェルディナント理論』第二章第二十五項において、【二つの願は相容れないものであり、整合を持たせようとすると矛盾が生じる】とあるが、あなたはミクロ・マクロ願をどう考えるか。自由に書け。

……ダメだ。これちょっと難しいな。まあ、それらしいことでも書いとくか。

ミクロ・マクロ願とは、元々整合を持たせられない矛盾したものであり、個人並びに集団の思考を願という分かりやすい例えで定義したものである。

途中から自分でも何書いてるか訳分かんなくなってきた。でも何とか書けたから良いや。

十分後、終了の鐘が鳴り、試験用紙が回収された。今日はこれで終わりだ。……どうしよ。今から試験の結果が気になるんだけど。

こうして、俺の初めて命がけの試験は終了した。

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