《非リアの俺と學園アイドルが付き合った結果》私のえまーじぇんしーと俺の重い足取り
十三話
俺が通う高校、【戸高校】は私立高校のため、月一度だが土曜日にも學校があるのだ。登校時間は一時間ほど遅い9時過ぎなのだが、解せぬ。
まぁそんな些細なことは今更どうでもいい。
今俺の思考を占めるのは【學校だるい】ではなく【新天さんがまだ來ない】であるのだ。
時刻的には今から走って間に合うか否かを爭うほどである。
俺はさすがにlimeで一報れ、仕方なく久しぶりの獨り登校をすることにした。
私の攜帯が軽快な音を鳴らし、limeが屆いたことを通知します。
「お、……あいつからかよ。分かってるな。既読つけるなよ」
「はい…」
私は畫面をスワイプし、通知をなかったことにします。
「あの…學校は…」
「あ?行かねぇよ。今更何言ってんのさ」
私は今、人生初のサボりをしています。
自発的にサボることを決めたわけではなく、彼にそうしろと言われたからに他なりません。
「んー金は……まぁ行けるな」
彼は自分の財布をのぞき込み呟きます。
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行ける?
一どこに…?
それに、ごっことはいえ彼氏である勇人くんに何も言わずに男の人とふたりきりというのは良くないですよね………まぁ連絡するのは彼が許してくれないのですけどね。
「よし、初サボりだろ?」
「はい…」
何を企んでいるのでしょうか。
口元が不敵に歪んでいます。
「俺のおごりでイイトコ連れてってやるよ」
絡みつくような口調で言った彼は、私を舐め回すように視線をかしました。
私は彼に連れられ、土日ということもあり人通りの多い駅前を抜けていきました。
「カラ……オケ?」
彼の足が泊まったのはカラオケ店の前でした。
「あぁ。晝過ぎあたりまでここで時間潰してこうぜ」
「は、はぁ……」
時間を潰す?わざわざ晝過ぎまで?
私の直が、ここで終わりではないことを告げていました。えまーじぇんしーです!
それにカラオケは完全個室なのでそれもとても怖いです!
でも、彼は一向に何かをしてくるような気配はありませんでした。
でも安心してはいけません!一流の殺し屋は気配すら殺してしまうと言いますし、彼もその類の人かも知れません!
「どうした?固くなって」
はぇっ!?固くなる!?
そ、それは私に対する言葉ですか!!?
それとも――。
ハッ!まんまと彼の作戦に乗せられるところでした!きっと私を油斷させてそこを襲ってくるはずです!
あれ?これじゃあ私がまるで“襲ってほしい”って言ってるみたいじゃないですか?
ち、違います!私は彼じゃなくて勇人くんに――
「せっかくカラオケ來てるんだからそんなにかっちりせずにだらしなくしてもいいんだぜ?今は俺しかいないんだし」
この男…ッ!!
だらしなくって何をですか!
服ですか!服なんですか!!?
私の頭は余計混していきます。
脳のミニ円香がえまーじぇんしーこーるを連打しています!
「わ、私お花つんできます!」
私は立ち上がって勢いよく部屋を出ます。
あわよくば逃げられ―
「おう!逃げたら分かってるよな!」
無理ですか。
―ですが彼は一つ大きな間違いを犯しました。
そう。
私のポケットには攜帯がっているのです。
私は作戦を練りつつ、おトイレへと向かいました。
便座へ座り込み、攜帯を眺めつつ作戦を考えます。
まず前提として勇人くんへの連絡は出來ません。履歴が殘るってしまうし、それを消しても不自然にまっさらになるのは良くないからです。
電話も同じです。
「う〜ん…どうしましょう」
今の私にはこの攜帯で“勇人くん以外の人に”連絡するのが最も良い作戦なのですが、誰に連絡すれば私を彼から解放してくれるか。それが問題なのです。
たった今思いついた作戦は、名付けて【あの人…新天の弱みを握って束縛しまくったんだって。それはもう狂気のレベルで作戦】です。
主に行うことは、私の電話帳にある戸高校の生徒へ一斉メールを送る。
容は、彼のされたことを事細かに載せたもので、助けてしいと告げる。
そして、彼のしたことを知ったみんなが彼をつるし上げる。
というものです。
ですがこの作戦には大きな欠點があります。
彼を曬すしつるし上げるというものもしは良心が痛みますが、最も無視出來ない欠點というのがあります。
私は彼の名前を知らないのです。
私がおかしいのかも知れませんが、勇人くん以外の男子生徒の顔はみんな同じ顔に見えるのです。
彼の名前を知らないと、この作戦は立しないのです。つるし上げる人の名前がわからないのですから。
う〜ん。
どうしますか……。
勇人くんが助けてくれるのならあと140年は生きていけるのですが、今はそんな贅沢は言ってられません。
じゃあ……―あっ!!
思いつきました!完璧な作戦を!
これは抜け目ありません!!
その名も、【あのをもう一度!ありがとう勇人くん作戦】です!!
この作戦が上手く行けば私の壽命はびにびます!
私は早速電話帳を開き、ある名前を探します。
何回か下にスクロール下あたりで【お】の欄が出てきて、探していた人はすぐに見つかりました。
【お】で始まり、その中でも上の方にある名前。
そう――お母さんです。
私はお母さんへ電話をかけました。
俺の足取りは重く、今すぐ家に帰りたいと思うほどだった。
まだ學校までの距離を半分も歩いていない。
この時間だと確実に間に合わない。
俺の脳は「帰りたい」「新天さん心配」で満たされていた。
それに、新天さんへ送ったlimeの既読がついていない。もしかしたら朝に委員會の仕事があり、連絡するのを忘れていて、忙しいためlimeに気づかないということだろうか。
……いや、そもそも“ふたりでの登校”を約束した訳では無いため連絡が來ないだけかもしれない。
俺はこの二つのどちらかだということを信じ歩いていた。どちらかが浮かんでいなかったらとっくに來た道を引き返していたところだ。
まぁ、遅れてもいいから行った方がいいよな……。
俺はMMOを開き、ログインボーナスを貰う。
どうやらログボの他に、フレンドさんからメッセージが屆いているようだった。
そのメッセージは銀杏さんからだった。
『最近ごめん。明日レイドやろ』
と短いものだった。
俺は心、嫌われてしまったかと思っていたからそのメッセにし安堵する。
俺は『了解です』と返信し、MMOを落とし、ソシャゲを開こうとした。
その時だった――軽く高い音を奏で、limeが通知した。
新天さん……ッ!?
俺は震える指でlimeを起する。
トーク履歴の一番上にいた人。
それは―
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