《非リアの俺と學園アイドルが付き合った結果》私のパンツと俺のパンツ

二十九話

【新天円香】

………重いです。

空気がとんでもなく重いです。

結花さんは終始笑顔ですし、勇人くんはまだ帰ってきません。

結花さんの笑顔はなんだか怖いです。

「ねぇ新天円香」

「なんですか結花さん」

何を言われるんでしょうか。

「今日はなんで來たんですか?」

「えっ…いや……明日の打ち合わせで」

べ、別にそれ以外のことなんて何もする気ないですよ?

「兄貴に會いに來たんですね」

「・・・」

目が怖いよ…結花さん。

「兄貴に、會いに來たんですよね?」

「はい…」

そんな脅迫するように言うのはよくないです!

視線で殺されそうでしたよ!!

そんな結花さんは大きくため息を吐くと威圧的な瞳ではなく、真剣な瞳で言いました。

「私と仲良くなりましょう」

と。

【新転勇人】

既読付いてるけど返信ない。

何かあったのかなぁ〜。

俺は無事ゲームをゲットし、足早に家へと向かっていた。

俺の送ったlimeには既読がついているのに返信が無い。新天さんの格からして既読スルーをするとは考えられないんだよな。

なんだか嫌な予じた俺は歩みを速め、自宅への道を急いだ。

「なんやて円香…」

目の前の景を見て、つい関西探偵のような口調になってしまった。

いやね?多分どんな景が広がっていたか気になると思うけどその描寫に行く前に一言だけ言わせて。

「なんでこんなにものが散してるんですかねぇ!!」

さて、お待ちかね部屋の描寫に移る。

まずは一つ。

朝俺が家を出た時には綺麗に片付いていたはずのリビング。

そこには無慘なまで散したクッションと俺のパンツの山。

はい。遂に我が學園のアイドルであり、俺の彼(仮)だった彼はぶっ壊れてしまいました。

分かる分かる。パンツの山ごときでぶっ壊れ認定するなって言いたいんでしょ?

違うんですよこれが。

確かにパンツの山だけだったら「畳んでくれてるのかな?」って思えますよ、だいぶ苦しいですけど。

でもね?

俺の彼はね?

「にぃのパンツ返して!!」

「いやですぅー!仲良くなる印として頂きましたー!」

ほら、もう俺のパンツ抱きしめちゃってるもん。傍から見たら変な人の域だもん。

そして二つ目。

一つだけでもやばいとこいってるのにまだあるのです。

それは―

「にぃのパンツ返さないとアルバム見せてあげないよ!?」

「なっ―それはずるいです!…ぐぬぬ……どうすれば」

いやどうすればじゃねぇよ!

何パンツ持ちながら俺の期のアルバムを見るか否かを悩んでんの!?

まぁお気づきであろうが、この人たちは俺に気づいていない。

つまりは俺に気付かないほど“パンツ”と“アルバム”に興味を持っているのだ。

「さぁ!パンツかチビにぃの可い可い寫真たち。どっちを選ぶ!!」

「ぐぬぬ……どっちも捨て難いです…」

―そろそろ怒鳴りつけてもいいだろうか。

なんか馬鹿らしくなってきたんだが。

「どっちかしか上げませんからね!」

「あの、パンツを選んだら、お持ち帰り可能ですか?」

よし決めた。怒鳴ろう。

「―不可能だよ!!」

「はうっ―勇人くん!!?」

「あー、に―兄貴おかえり〜」

驚きに目を丸くする新天さんと、今までの話を聞かれていないと思ったのか「にぃ」ではなく「兄貴」と言った結花。

「ど、どうしてここに…」

「ここ俺の家!」

ダメだこの人。

パンツとアルバムが好きすぎる……。

「新天さん?そのパンツ俺のですよね?」

「い、いえっ!これは結花さんに貰ったのでもう私のです!」

「いややらねぇよ!?」

新天さんが大事そうに抱きしめているパンツを強引に取り戻す。

「あぁ…私の…」

「いや!俺の!」

名殘惜しそうに、しかしギラついた瞳でパンツを眺める新天さんへ、俺は一つ、ちょっとした意地悪を思いついた。

この騒ぎの仕返しだ。

「パンツがしいんですか?」

さすがに“しい”って斷言するのは出來ないだろう。

「いや、しいというかそのパンツは私ので…」

ブレねぇなぁおいぃ!

「新天さん?一回深呼吸しましょうか?落ち著いて?」

「はい。すぅ……はぁ〜…ハッ!」

途端顔を真っ赤にしておろおろと慌て始めた新天さん。

なに?ゾーンかなんかにってたの?パンツゾーンなの!?むしろパンツにって(ry

「ごめんなさい…」

「はい。じゃあ一緒に片付けましょうね」

「はい!」

俺はパンツを、新天さんは散らばったクッションを―

「円香さん!特別にアルバムを―」

「せっかく抜けたゾーンに引き込むなっ!」

「あうっ」

キラキラした目で新天さんへアルバムを進める結花に、俺は気が付けば軽いチョップを喰らわせてた。

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