桜の木も満開に咲き誇りしばらく時が過ぎた頃、俺はヤンデレとメンヘラの彼達を相手にしながら生活を送っていた。

 俺はこの靜まった図書室の付を任されている。

 「あの、この本を借りたいんだけど？」

 ある男がカウンターの上に本を置くと靜かな聲でそう言った。

 「はい、返卻日は二週間後となっております」

 チラリ……

 時をかけるジョジョか……これ面白いんだよな〜主人公がタイムスリップしてスタンドバトルして。

 おっといけない、いけない。

 俺は図書委員の責務を果たしている最中だ、主な仕事はこうなっている。

 カウンター席に座りながら裏表紙から貸し借りカードを抜き出すと日付を書きそれを渡す。

 軽く會釈すると辺りを見渡す。

 俺はそれから再び読んでいた本を手にすると、挾んでおいた栞を外し本を開く。

 【この素晴らしい世界に復讐を！】

 俺が特に気にっているのは、主人公の面白さと容のほとんどが會話になっていて漫畫のようにスラスラと読めるところ。

 俺も使いたいな〜スティール……じゃなくてエクスプロージョン。

 俺はニヤニヤしながら先を読んでいった。

 「雪くん、雪くん、何読んでるの？代にも見せて」

 代は俺の肩に寄りかかって顔を覗き込ませると本を見てきた。

 代も俺と同じく図書委員のため責務を全うしている。

 まぁ、代の場合は隣に座って俺に、話しかけまくるだけで特に仕事をしてくれるわけじゃない。

 おかげで俺が、本を借りに來る男子に睨まれてるんだからね！「おい、隣の可い子が付してくれるんじゃないのかよ」とか、あ！そこ！舌打ちするな！

 とまあ、それは置いといて……。

 「ん、これはラノベだぞ？」

 代は基本、小難しい本しか読まないタイプだ、でも、それは家の問題もある。正しくは家柄の問題か。

 「ほれ」

 俺は栞を挾むと、代に手渡した。

 「ふ〜ん、代も読んでみよっかな〜」

 俺としては、ありがたいことだが……やっぱり、面白いものは共有したくなるもんな〜。

 「確か一巻ならラノベコーナーの一番手前、左側にあるから」

 多分……俺も全ての場所を把握しているわけではない。

 「取って來るから、しの間よろしくね〜」

 「はいよ」

 と言うかずっと俺1人で仕事してるわけであって、別に代がいなくても変わらない気がするんだが……

 まぁそこは深く考えないでおこう。……うん、優しいな俺。

 再び俺は本を読み始めた。

 やっぱり面白いな〜それぞれキャラが生きてるよな〜。

 「あら？あなたの読んでいる本は……」

 ん？

 俺は本から目をそらし、聲のする方へと移すと……

 そこには金髪で緑の目をした金持ち特有のオーラを放つがこちらを見ていた。

 ギャルゲーとかで1人はいるよな金髪キャラ。

 「えっと……本の返卻か何かですか？」

 「いえ、実はあなたの読んでいるその本、私も読んだことがありまして……面白いですよね」

 そう言って彼はクスッと笑った。

 なんて可いくてしい人だ……一瞬だけ惚れちゃったよ。

 ……一瞬だけ。

 「あぁ、これですか、漫畫のようにスラスラと読めて面白いですよね」

 やべ、なんか張する……。これはもしかしてキャラ特有のコミュ癥って奴じゃ……。

 「そうなんですよね、特に主人公のクズさがまた面白みを引き出していて……あ、申し遅れました、私は羽方 ユンと申します」

 制服のスカートを軽く持ち上げると彼は軽く一禮してきた。

 綺麗に一禮する羽方からは、やはりお金持ち特有のオーラがあった。

 やっぱり気品だよな……あれ？どっかの誰かもお金持ちだったような？それに仕事サボってラノベ取りに行ったような？

 キーンコーンカーンコン

 すると予鈴が鳴り始めた。

 「それでは、失禮します。……よかったらまた今度お話ししましょう」

 そう言って羽方は去っていった。

 またお話ししましょうか……

 「可いかったな」

 「誰が？」

 俺が呟くとすぐ後ろから代の聲が聞こえてきた。

 ！？噓です！ごめんなさい！

 ……代の聲につい、謝ってしまった。

 俺、どんだけ普段から怯えてるんだよ……。

 後ろを振り向くと大量の本を両手で抱えながら代はそこにいた。

 「それ、全部借りるの？」

 「うん、代は雪くんと一緒にいる時以外ずっと暇だし……メール返ってこないし」

 最後の一言だけ聲が太かったような……。

 「そ、そっか、よかったら、俺が持つよ」

 「え？いいの？ありがとう〜やっぱり代の雪くんは優しいね〜」

 いや、話をそらしたくてとっさに思いついた言葉がこれだった……。

 今度からメールの未読無視はやめておこう。