《初めての出會いと戸い07

「……」「あの、奈緒さん? どうした? あ、僕がどっか毆ったか? どこだ、怪我してないか?」「――、あっちょっと! どこってんのよ! 別にみやびは悪くない! みやびは誰よりも優しい男の子だもん! 私の大切な馴染だもん!」

堰が切れた様に勢いよく姿勢を正し、周囲の野次馬に聲を張り上げる奈緒。なるほど、やっぱり僕の事で奈緒はご立腹である。

「何も知らないのに知ったようなこと言わないで! みやびになら私どんな事されても平気だもん!」

どよめく周囲と暴走モードの奈緒をどう止めようか考えあぐねる僕。

「え、っと…ん、どういうことだ?」「え? あ、違う今の無し!」

誰もそこまで聞いちゃいないってのに、奈緒は単なる馴染の周囲の中傷を真っ向から否定し、僕をそう評価してくれた。一どうしてこんな事を言ったのだろうか、今は我に戻って距離を置かれてしまったが、上目使いで「みやびになら――」ってくだりを言ったときは思わず前傾姿勢になってしまうところであった。

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「へ~奈緒って僕の事そんな風に思ってくれてるんだ。へへ、地味に嬉しい」「違う違う! 今のは口がっただけで、」

純粋に嬉しかった。あの奈緒が、あの皆から絶大な人気を博する奈緒が、年齢=彼いない歴になるダメンズをちゃんと見ていてくれた事を知れて顔が下品な笑みで埋め盡くされる。そんでついつい、意地悪したくなるんだ。

「ほうほう、本音が出ちゃった訳ですか? 初めてそんな事言ってもらえたな~男子に自慢できるぜええええ」「違う違うちが~う!」「へえ、……違うの? 僕は奈緒の事すげー大切な馴染だと思って今まで生きてきたのに、片思いか。……ヤジより傷ついたかも」――、心臓辺りを押さえてみる。「ち、違うし違くない! 私は、私はみやびのこと、」――、チワワの様な目をする奈緒。

うむ。そろそろ限界だな。これ以上、奈緒のこんな可い表、聲を他人に聞かせるのが嫌になってきた。それに、の子をこんな公衆の面前で取りさせ辱める事を、昔から親父との約束でじているんだ。だからね、

「く、噓だよ! ば~か! そんな顔すんなって、の子が眉間にシワ作るなよな。綺麗な顔が臺無しだぞ」「ば、ばかああああああああああああ!」「ぐほほっ、我が人生に一片の悔いなし――」

必死に何かを訴えようとする奈緒の寄りだしている眉目の中間を人差し指で小突いてやったよ満面の笑みでね。そしたら、案の定怒った奈緒はよりも音よりも早いパンチを繰り出し、正拳突きが鳩尾を強襲し、態勢を崩し落ちてきた顎にアッパーをお見舞いされた。

「あ、みやび! ゴメン大丈夫? ねー大丈夫?」「……ああ、」

やばい。久しぶりに食らう奈緒の得意技は唐辛子の化け――ハバネロを頬張るよりも脳に危険信號を點滅させ、不甲斐なくも僕は軽い脳震盪に襲われていた。

「ふぉふぉふぉ、これは見事に決まったもんじゃな」「え? 貴方はどなた様ですか?」「ふぉふぉふぉ? ワシか? なに、ワシはしがない仙人じゃよ」「せ、仙人さんですか? ホントに存在するんですね」

おいおい奈緒さん、なに馬鹿正直に信じている。確かに、壁にもたれ掛りタイル張りの床から視線を外せない僕からも、地面に付きそうな長くて白い髪のの様な、髭にも見えなくないが見えるが、この時代に、しかもこんな場所に仙人がいる訳がないだろ。

「ふぉふぉふぉふぉ、綺麗な瞳をする素直な子じゃな。ほれ、こんなの対した事ないから、そうじゃなこれを塗って後は誰かに、」「じゃあ、オレが連れてくよ。チョーど二人と同じクラスだし」「ふぉふぉふぉふぉ、さすが前途洋々な若者じゃ、行が速いの」「ま、まーね」

そんな會話が視界の外から聞こえてくると、が誰かの力で傾く。からして男の固い肩口が僕の脇にり込んできて、どうやらこの場に途中參加した僕らと同じクラスだと言う名も知らぬ年が肩を貸してくれている様だ。

「す、すみません、なんてお禮言ったらいいか」「あ、別に良いっすよ奈緒さん頭上げて。どうせこれから同じ教室で沢山思いで作るんだし、出來ればその、オレにも他人行儀な敬語も止めてくれるとうれしいな」「あ、そうだね、同級生なんだもんね」「ふぉふぉふぉふぉふぉ、青春じゃね~羨ましいぞワシもぜてほしいぞ」

視界がより一層激しく揺れ、肩を預ける年が歩き出したのをじそれに歩調を合わせる。口調からしてどうやら向こうは奈緒を知っている様であり、一種の甘酸っぱい會話を仙人をえてしている。 ただ生憎、仙人もこの初対面にも関わらず肩を貸してくれる年の顔も確認出來ないのが非常に悔やまれる。でも、謎の仙人はともかく、この彼とは向こう一年は同じ教室で青春を謳歌するからちょっと楽しみである。

「あ、やっと見つけましたよ! ま、待ってください」

背後から飛來する焦りを滲ませる年老いた聲に、また周囲が騒然とする。

「ふぉふぉ、しつこいの教頭も。ワシはあんな堅苦しい席には出ないと言っとるじゃろが」「な、何を言っているのですか! 本日は我が校の學式ですぞ! 貴方が出ないで誰か祝辭を読むのですか――」「そんなの眠くなるだけじゃ! 読むならエロティックな雑誌を読みたいもんじゃ! ワシは何時までも心を忘れんぞおおおお――」

そうして、一陣の疾風が僕の前髪をでると仙人の気配は消え、その代わりに教頭の怒鳴り聲と足音が脇を通り過ぎて行った。一瞬の出來事とはまさにこれを言うのだろう。

「あの人、もしかして――」「まさかあの人が――」

奈緒と名も知らぬ年だけは、仙人がどこの誰なのか察した様で、まだ意識がはっきりしない僕を目に笑い合うのであったとさ――。

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