《初めての》友達10
「えっと、あ~、今何時だっけ? あ、もうこんな時間じゃん!」
仕方がないここはごまかすことにしよう。
「あ、本當だ。門限間に合うかな」「なに? 門限?」「うん、一応八時には帰る様に言われてて、遅くなる場合は一時間前には連絡する決まりになってるの」「マジで! あと十分もないよ? 春香ん家どこだっけ?」「二丁目だよ、そこの」「まじで、學校に行ってたら間に合わないところじゃん? どうして言ってくれなかったの? 遠回りになるところだった」
地形的に駅前から學校に戻るとなると春香が住む桜ノ宮市桜ノ宮二丁目は通り過ぎることになる。門限もあるのになぜ春香はそれを言わなかったのか。疑問でならない。
「せっかく雅君とこうして話せるようになったのに、もったいなくて。もしかしたら夢かもしれないから」
何をおっしゃる春香。こんな至福の時が夢なわけがないだろう。いや、至福だから夢だと思うのかも知れないのか?
「だって、雅君が私の前にいるんだもん。こんなに嬉しいことが夢じゃないわけがない」「え、ちょっと、春香?」
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なんで泣いている。どうしてそんな表をするんだ。なぜ、また泣いているんだ?
「ごめん。ごめんね、こんなつもりはなくて」「大丈夫、なんかあるなら言ってよ。僕は絶対どこにもいかないから」「うん、雅君は噓つかないもんね」
理由は分からないが春香は泣いた。小さく肩を震わせ両手で覆わなければ零れてしまうほどの涙を流した。でも、すぐに泣き止んだのは、それが悲しいからではないからだと思った僕は、できるだけ優しい口調で親指を突き立て笑って見せた。
「じゃあ、これからも改めてよろしくお願いします雅くん」「うん、よろしくね春香」
僕の笑顔に偽りがないとじてくれたのか春香は涙をあの時のハンカチでふき取るといつもの微笑みを咲かせた。彼が大丈夫なら僕が心配することは何もないだろう。
僕らは改めて誓い合い、帰路に著いた。
その日の夜空は満天の星空であり、春香の家が見えるまで僕たちは星座の話をしながら別れるその時まで會話を切らすことはなかった。
「送ってくれてありがとうね」「ううん、お安い用。じゃあ、帰るね」「うんばいばい!」
春香の家は、西洋の住宅の様に観を意識したような巧なガラス細工が壁にあしらわれた三角屋が可い純白の家だった。築年數は推定十年ってところか。一等地に建っているだけでも相當な風格があるっていうのに、一戸建て庭付きとはなかなかの豪邸である。
赤レンガで構された外構に取り付けられた門扉を開け、春香は振り返って手を振る。名殘惜しいがここは春香の生活の基盤である自宅。家族しか知らない春香の一面がたくさん見れるオアシス。できれば上がってみたいが、ここで上がり込むと送り狼っていうやつになるのではないかとビビっている小心者が僕である。そういえば、まだ春香の家族構を聞いていなかった。きっと春香に似たお母さんが豪華な料理と優しい笑顔でこの中で待っているに違いない。うちとは大違いの朗らかなママがね。
「あ、でもばいばいだけど、今日からはいつでも聲聞けるね」
ああ、送り狼になりたい。スマホを取り出したと思えばとんでもないことを言うもんだ。このままオオカミとなって君を食べてしまいたい。
「春香……。なんでもない、またラインするね」
でも、そんな度もない僕は同じくスマホを取り出しそれを強調してその場を軽快にさることにした。たぶん、いままでにないくらいニヤニヤしていたと思う。奈緒ならキモイっていうかもしれない。まあ、仕方ない今回は甘んじて罵倒されよう。それほどにも今日は大きな一歩を踏み込んだのだ。赤飯を焚いて祝ってほしいものだ。
この時、忘れていたが僕は自転車を學校に置いてきていた。それに気が付いたのは、翌日であり學校にいざ行くぞ!と車にろうとした時であった。る車がガレージにないことに気が付いて、五分くらい辺りを探していると眠そうにあくびをしながら隣の家から出てきた奈緒に、
「もしかして、自転車乗ってこなかった系ですか昨日? バカじゃん。昨日あれだけ浮かれてれば何かあると思ったはあたし」
冷ややかな言葉を浴びせられてことの重大さに気が付いてその場に撃沈した。
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