《初めての錯する心04

「んじゃ、行くか」「ゴーゴ~!」

これまでにも奈緒を自転車の後ろに乗せて登校したことは何度もある。中學時代もそうだし高校に學しても。もちろん、バス通學もできるので、わざわざ汗だくになりながら登校することもないのであるが、アルバイトをしない貧乏學生としては自転車のが経済的にありがたい。そして、何よりお隣さんとの自転車通學が好きだからってのが一番の要因である。 まあ、決まって僕が舵取りをするのであるが、奈緒の重は軽くしかもちゃんと運転しやすいように重の移もしてくれるので長時間の二人乗りでも苦ではない。まあ、通規則的にはアウトなのでソロソロやめた方がいいとは思うのだが。

「みやび船長早く出港するのじゃ!」「へいへい、おてんば娘の船員さんしっかりと摑まっててくれよ」

奈緒が楽しそうなのでもうしばらくこのままでいいだろう。ホント、奈緒といると楽しくて自然と笑みがこぼれてしまう。こんな関係がいつまでも続くと良いなんて思うのは々爺さんぽいだろうか。

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「ゴウゴウ! 社會人に負けるな~!」「相手はピスト自転車だぞ無理言うなって」「何言ってんのよ! 諦めたらそこで試合終了なんだから!」

さっきまでの眠気と大きなあくびを玄関先に置いてきたのか、快調に走り出した自転車の荷臺に座る奈緒は楽しそうに流れる風景にいちいち聲を出していた。 こうして一緒に登校していると良く「お前って奈緒さんのなに?」って問われる。中學時代も然り、高校生になってからもそれは続いていた。特に、高校生になってから言われることが多くなったし、そこに含まれる発言者の想いにも重みと言うか意味合いが濃くなってきたと思う。目のも違うしさ、なんていうか必死さが伝わってくる。

「ほれほれ~みやび船長もっと早く! もっと速い風になるんだ~」「分かったからそんなにはしゃぐなって!」

奈緒がそれらをどうけ止めているか僕には分からないし、奈緒がそれらを気にすることもないと思っている。だって、男側が勝手に僕らの関係を気にしてはやきもきして寢れない夜を過ごしているに過ぎないから。告白して轟沈するならまだしは遠慮してもいいが、たいていそんな質問をしてくる男は奈緒に何か出來る気概を持ち合わせていない。拓哉くらいわかり易くしてくれたら僕も何か手伝ってもいいのだが。生憎、自分に敵意を向けてくる男の路を手伝うほど、僕もお人よしではない。 仮に子側に僕らの関係を良い風に思っていないの子がいた場合でも、僕は今の奈緒と何ら変わらない行を取るであろう。だって、楽しいのだ。奈緒と一緒に何かをすることも、同じ空間で生きることも。

それにさ、僕の場合は誰からも奈緒との関係を咎まれることもなければ、僕に好意を示すの子なんていないのだから気にしてもしょうがない。

それに元を辿れば僕たちは昔から続く馴染なのだから、こうして仲良く登校することは當然である。しかも、どちらにも人がいないのだ。それならなおさら誰に気を使えと言うのか。

「いつまでもこうしてられるといいね」「え、あああ、そうだな」

信號に捕まり一時停止すると、僕のお腹に腕を回す奈緒がそう呟いた。通學路だけあって周りの視線はいつも通り「あのコンビまた二人乗りで登校してる。仲良いな~」ってじである。

「でも、人できたら無理だね。きっと嫉妬されちゃう」「されちゃうって、僕に人なんてできないよ。それなら、僕がされるんだろ男に」「あれ、春香のことはどうするの?」

周りの視線なんてお構いなしで耳元で奈緒が春香の名を囁き心臓が高鳴る。

「そ、それは。……、春香なら許してくれる」「それって、春香と付き合ってもあたしのことも大切にするってことかな?」「當たり前だろ。奈緒は僕にとって大切な“馴染”なんだから、こうやって一緒に登校したってかまわないだろ。やましい気持ちなんてないんだから」「ふ~ん、馴染か。……、まっ良いか! 今はそれでもあたしは満足だし」

お互いの溫が伝わる距離。そんな狀態で僕らは互いの存在価値を確かめる。奈緒はなんだか上機嫌である。

「でもさ、春香って意外と獨占強いわよ?」「まじで?」

春香が獨占強い? あの朗らかで天使と評される春香にそんな一面があるとはにわかに信じがたいのだが、奈緒の聲は至って真面目である。

「歌を教えてくれた男の子のこととか。あと、あたしのこととか」「ああ、そういえばその男の事は全然話してくれないな~。自己紹介で言ったくらいなんだからしくらいは話してもいいのに。って、奈緒のことってのは?」「いや、なんていうか獨占とは違うのかも知れないけど、あたしのことすごく大切にしてくれるからさ」

なるほど。まったく分からん。二人はただならぬ関係ってことか?

「まあ、それはいいじゃん。この話はここでお終い」

自分で話を振っておきながらなんて雑な終わらせ方であろうか。僕はまだ聞きたいこともあるってのに。まったく勝手なおてんば娘である。そんなおてんば娘は僕らの関係をどう思っているのだろうか。

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