《初めての錯する心15

それはそれで、僕と奈緒はいくばくか距離を置くようになったものの、僕らは四人でアパレルショップが軒を連ねる駅地下に來ていた。もちろん、明日の服を買うためである。

「みやびってポロシャツ好きよね? 今どきじゃないわね」「そうなのか? 奈緒はどんなのが好き?」「そうだね~、みやびは白系が似合うと思うし、このボーダーカットソーと白のリネンシャツがいいんじゃない? 長あるしスラッと見えてかっこいいと思う」「なるほどなるほど、じゃあこれいいかも」

と、件の問題を忘れて早速馴染コンビで服選びを進める始末。挙句の果てに奈緒のお勧めをなんの迷いも無しに手に取ろうとするのであった。馴染至上主義もここまでくると末期である。

それを、奈緒が慌てて止めにったのは言うまでもない。

「ちょっと待ちなさいよ。これじゃ、あたし好みのコーディになるじゃないの? また、みんなから変な誤解されるわよ」「ああ、そうだった。あまりにも奈緒と一緒にいるのが當たり前になってたからつい。わかった、拓哉と考えてみるよ」

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言われてみればそうである。四人で來て気がついたら拓哉と春香をそっちのけで、服を見ていては、拓哉に申し訳が立たない。急いで拓哉の元へ戻らねば。

気がついたら、拓哉も春香も店にいなかった。買いに集中し過ぎて周りへの配慮が無くなっていたのだ。

「そうしなよ、ちなみに春香はオラオラ系苦手だから、みやびはみやびらしくていいからね」「おう、ありがとう。そっちも変に気を使うなよ」「の子は服裝に気を使う生きなの。明日楽しみにしてなさいよね」

お互いがお互いの友を探しに駅地下へ散る。我ながら変な関係になりつつあると思うけど、周囲の目を気にするとこうしなければイケないんだ。

「お、いたいた拓哉、どうだ見つかったか?」「ん~奈緒ちゃんってどんなのが好みなんだ? オレ、渋谷系が好きなんだけどどう思う?」

駅地下には何店舗もアパレルショップが點在しているため、多拓哉を探すのに手間取ったものの最初に僕と奈緒がいた店から二店舗離れた芳香剤クサく、いかにもな雰囲気の店を探すとその中に困り顔をした拓哉はいた。

「そうだな~、いまいち分からないけども、たぶんこういうゴッツいじのは嫌いな気がする」「だよね~、奈緒ちゃんはどっちかって言うと爽やかお兄系だと思うんだよな。分かったし考えておく。とりあえず、雅の服から買おうぜ?」「春香はオラオラ系苦手みたい。それに、僕もそっち系は似合わないと思うから、それ以外で頼む」

いわゆるサーフ系から渋谷系と言われる著こなしを推奨するアパレルショップを後にし、無難な著こなしを推奨するメンズ向けのアパレルショップをハシゴすることに。いまいち流行りの服への関心が薄い僕は、拓哉から今夏流行りそうな合いから柄、組み合わせをレクチャされつつ、自分のの丈にあった服裝を探す。

「明日、楽しみだな。今もどこかで、奈緒ちゃんと春香ちゃんが俺たちの事考えながら服選んでるんだぜ? 興しないか?」「まあ、確かに。僕らも二人の好み考えながら選んでるもんな」

フィッティングルームで早速厳選したコーディネートにを包む僕。カーテンの向こう側で自分の服を選んでいる拓哉が聲だけでも浮かれているのが分かる。

確かに僕自も、今こうして春香が好きそうな服裝を想像しながら、しでもカッコよく見えるように、しでもオシャレに見える様に流行りってのを取りれている。

でも、を使って「オレ、あなたの為にカッコよくなってきたぜ?」って言っているようなもので木っ端恥ずかしくて堪らない。「どう、オシャレでしょ?」ってで表現しているようで恥心を刺激されずにはいられない。

だから、僕はこの年になっても服を買うのが苦手であり、ファッションに疎いのだ。典型的なダメンズなのである。年齢=彼いない歴なのである。

「オシャレになりたいを前面に出すことは悪いことじゃないんだぞ雅? お前は奈緒ちゃんが最近化粧を始めたことに違和を覚えるって言っていたよな」「ああ、一年の時はしてなかったはずだから」

クラス替えの日に、速攻で奈緒が化粧をしていることに気が付いたのがその証拠である。別に、それを変だとは本人に言ったわけでもないし、逆にすごく可くなったと思っている。でも、奈緒が化粧する必要が分からないのだ。しなくても奈緒は十分可いのだから。

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