《初めての錯する心33

「あ、みて、子供のペンギンだよ!」

學園では見られない春香の一面を垣間見ることができ、春香の思い出話、將來の夢も聞けた。一羽の子供のペンギンがヨチヨチと自分の力だけで歩んでいる様に、僕もしずつでも今まで出來なかったを一歩一歩と自分の力で就へとを向かわている。

初めてのデートは、信じられないくらい順調である。拓哉、奈緒にはお禮しきれない程に謝の念を抱いている。

その時、僕のスマホが鳴った。時刻を知らせるアラームである。十分後にここと隣接するプールでイルカショーが行われる予定なのだ。手早くアラームを切り、春香の興味をペンギンに殘しつつ悟られぬ様に、場所を移する。

「こっちにはフェアリーペンギンがいるよ」「うわ~ちいさ~い、可いね」

水の流れにを任せ浮かんでいる皇帝ペンギンより一回りも小さいペンギンを指さし、春香は破顔する。本當に連れてきてよかったと心底思う。

僕らは僕らで人の流れに乗り歩きながら、岸部で休むペンギン、俊敏に及び回るペンギン、自由気ままに波の揺り籠で漂うペンギンを鑑賞し、満足した春香を次ならスポットに案した。

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アー君とエーちゃんのイルカ―ショー。それが本日、この水族館で一番の目玉となる出しである。

二十五メートルプールが二面るほどの巨大な楕円型の水槽は観客席から二メートルくらい高くなっており、もちろんその吐出した部分は明なガラス製であるからコバルトブルーの水中を泳ぐイルカを見ることが出來る仕様だ。

その水槽に沿って設置された観客席の空いている席を見つけて春香と腰を掛ける。

「はーいみなさん~本日は私たちの為にお越しくださりありがとうございます!」

丁度良く開幕の時間となり、特有のテンションで登壇したピンクのウエットスーツを著用したお姉さんと手に青いバケツを持ったこちらは赤いウエットスーツを著用したお兄さんが、満員禮の客席に手を振っている。

「じゃあ、早速アー君とエーちゃんに登場してもらおう! みんな、一斉に名前を呼んでね」

せーのっとお姉さんが言うと「アー君」「エーちゃん」と順に主に子供たちの歓聲が沸き上がる。その中に春香の聲が混じっていたのは言うまでもない。むろん、僕も隣の男の子に負けず劣らない大聲を出した。

「きゃ~見てみて雅君! 私たちが呼んだから出てきてくれたよ」

水面がひと際揺れたと思った瞬間に二頭のイルカが大ジャンプをしてそのくるしい姿を見せてくれた。春香の歓聲がきっとアー君とエーちゃんにも屆いたであろう。

二頭はお姉さんとお兄さんのいるステージに用にり上り餌をもらってご満悅に一鳴きするとプールに潛った。次なる演技に備えて水中でスタンバイと言ったところであろう隣の春香はワクワクしているのがその表だけでも分かるし、スマホをスタンバイさせてるところを見るとおかしくて堪らない。僕は笑ってしまっていた。

「どうしたの?」「いや、春香可いなって思って」「な、急に何言うの……」

僕の言葉に頬どころか顔全を赤く紅させる春香。

「あ、くるよそろそろ」

主が惚けてあらぬ方向を向いていたスマホを僕が春香の手ごとまさにイルカが飛び出そうとしている水面と向け、甲高い笛の音が響き渡ると同時に春香の白魚のような細い指と一緒にシャッターを切る。連続でイルカが放線を描くしい様を寫真へ抑えた。

「ずるいよ雅君」「え、どうして?」「私ばっかりドキドキさせないでよ」

そんなことはない。僕だって前日から張しっぱなしだ。春香がそんな膨れた表をする必要などどこにもないぞ。と言っても、春香は怒ったっていうよりは自分の不甲斐なさってのを恥じるようなじである。

「私だって雅君をドキドキさせるんだから」

なんの宣言であろうか。そう言いつつ一本の板で出來た椅子からをスライドさせて僕の著してきた。春香の二の腕付近が僕の肘に當たって言葉に言い表せないが伝わってくる。

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