《初めての告白の先に見えたあの日の約束39

「あの、もしかして春香さんと雅さんですか? ってもしかしないか。二人はうちの組では有名ですし」

ほら見ろ、大人しくしているのは僕らだけだ。席を立ち出歩く子がいると思ったらそのまま迷うことなく、僕と春香の前で立ち止まった。

小柄でどこか犬っぽい。人のことが好きで構わずにはいられない。そんな印象を彼から抱いたのは、彼が保育士志だと知っているからだと思う。

「そうだけど、どうかしました?」「よかった、寺嶋君と同じ班に男の子がいて。まさか彼が保育士になりたいとは思ってなかったので立候補した時はどうしようかと悩んでいたのです」

そっとでおろすところを見ると相當悩んでいたようだ。肩の荷が下りたのか深呼吸して頭を下げてきた。

「彼のことよろしくお願いします。無口でギターのことしか頭にない様な人ですけど、悪い人ではないです」「え、まあ、僕も男一人よりは二人の方がいいから任せてください。ね、春香?」「……、キウチさんがそう言うなら分かりました。私も保育士志のはしくれ、世話を焼かせて頂きます」

頭を下げられた以上はこちらもそれなりの誠意をもって返答するまでだ。どこか浮かない表をする春香も口ではそう言うモノのキウチさんと言う子に微笑みを返した。

世話を焼くって……、春香にはキウチさんのお願いがどう聞こえたのだろうか。保育士を志すだけあって母本能が強いと言う事なのだろうか?

「そう言ってもらえると助かります。では、また明日、お互い頑張りましょうね!」

將來の夢が葉う。一時的ではあるがここにいる子は全員そう思っているのだろう。全員が全員、瞳を爛々と輝かせ意気込んでいる。春香だって見た目は変わらないが聲にいつもはない力強さをじる。

、寺嶋朋希とはどんな男なのか。會長が言っていたギターの申子で間違いはないと思うし、きっと春香は彼の事を知っているに違いない。それも、何かを僕に隠すほどの関係。春香に男の影がちらつくことは珍しくないが、揺させるほどの影響力を持つ男は初めてであった。

これは明日から大変になりそうだ。奈緒はいないし拓哉だっていない。何か起きれば自分だけで対処しなければならない。その何かとは何なのか。多騒ぎが起きているのは、やっぱり僕が春香を好きであり、春香を揺させたのが男だからだろう。

右から菅野雅、小鳥遊春香、寺嶋朋希と記された我らがチームF。男男。まるで一人のの子を二人の男が取り合う。そんな図式が脳裏を過ったのは、あながちそれが間違いではなかったからであり、結果そうなったのは言うまでもないことだ。

そうなることをまだ知らない僕は呑気にあくびをして、春香はどこか不安げに一週間の予定を発表する教諭を見つめていたのであった。

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